
日本では子どもが生まれると出生登録することが当たり前に行われています。では、世界には「法的に存在しない」子どもたちが存在します。この記事では「法的に存在しない」子どもたちの現状とその理由について解説します。
5歳未満の子どもたちの4分の1が法的に存在しない
2019年12月に発表された更新されたユニセフの世界の出生登録に関する新たな報告書によると、世界(調査対象は174カ国)では5歳未満の子どもの4人に1人に当たる1億6,600万人が出生登録されていません。出生登録されていない子どもたち(未登録児)の多くはアジアおよびアフリカにおり、未登録児の87%が南アジアおよびサハラ砂漠以南のアフリカに住んでいます。最も出生登録率が低いのはアフリカのエチオピア連邦民主共和国で、実に3%しかありません。また、エチオピアほどではないものの、ザンビア共和国やチャド共和国も出生登録率が低く、それぞれ11%および12%です。
ユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアは出生登録について次のように述べています。
出生登録されていない子どもは見えない存在です。政府の政策や法律においては存在しないことになるのです。身元の証明ができないと、その子どもは教育、保健、その他の不可欠なサービスから除外されることが多く、搾取や虐待を受けやすくなります
なお、出生登録されても法的な身分証明書である出生証明書を持たない子どももいます。5歳未満の子どものうち、出生証明書を所持していない子どもは世界で2億3,700万人、つまり約3人に1人が出生登録を証明する公式な書類を持っていないのです。
なぜ出生登録されないのか?
1989年の国連総会において採択された「児童の権利に関する条約」(出典6)では、第7条に「児童は、出生の後直ちに登録される。児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有する」とあります。
しかし実際には、先に記したとおり、出生登録されていない子どもが数多く存在します。それはなぜでしょうか。
出生登録されない理由には主に次のようなものがあります。
- 出生登録されない理由
- 子どもの出生登録方法に関する知識の不足
- 出生登録または出生証明書の申請料金の高さ
- 登録が遅れた場合の追加料金
- 最寄りの登録施設までの遠さ
- 一部のコミュニティでの伝統的な慣習(子どもを産んだばかりの母親は屋内にいるべきなど)
また、「出生登録に関するICN(国際看護師協会)とICM(国際助産師連盟)の見解」では、「出生登録の障壁」として次のものが挙げられています。
出生登録の障壁
- 政府、公務員、ヘルスケア従事者といった関連の専門職、親や一般の人々における 出生登録の価値
- 認識の欠如
- 親の無学
- 特に地方や一定のグループあるいは種族間での不適切な登録のネットワークや仕組み
- 移民や難民への不適切な登録制度
- 社会・文化的な態度と違法と思える政策。異なった民族や国籍間の結婚。名付けにおける文化的な特定のルール
- 性差別や家長的な国の法律
- 行政の欠如は規制の不在やその力を弱めることになる。省庁間の協働・協力の欠如、貧しい執行体制、不適切な資金配分、不適切また不十分な人員とその仕組み
- 特定の民族集団や特定の宗教グループを排除する政策方針の検討
- 出生登録法の有効性の喪失、複雑、柔軟性がない、登録に際しての物理的な障壁
- 国籍や市民権の問題
- 子どもの登録を妨げる費用
すべての子どもが出生登録され、法的な身分証明書を手にするためには、上記の「理由」や「障壁」を解消すべく行動していくことが必要です。
法的に存在しない子ども、1億6,600万人
2019年12月11日の73回目の創設記念日にあたり、ユニセフ(国連児童基金)は、世界の出生登録に関する新たな報告書を発表しました。その中で、出生登録されている子どもの数は世界で大幅に増えているものの、1億6,600万人の5歳未満の子ども(4人に1人に相当)がいまだ未登録であることを明らかにしています。
174カ国のデータを分析した報告書『2030年までにすべての子どもに出生登録を:その進捗は?』(原題:Birth Registration for Every Child by 2030:Are we on track?)は、世界で出生登録されている5歳未満児の割合が10年前に比べ約20%増加(63%から75%)したことを示しています。
「長い道のりを歩んできましたが、数えきれないほど多くの子どもたちがいまだ隙間をすり抜けて、数えられることなく、行方も分からないのです」とユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアは述べました。「出生登録されていない子どもは見えない存在です。政府の政策や法律においては存在しないことになるのです。身元の証明ができないと、その子どもは教育、保健、その他の不可欠なサービスから除外されることが多く、搾取や虐待を受けやすくなります」
世界では、主に南アジア、特にバングラデシュ、インド、ネパールで大きく改善がみられます。例えばインドでは、出生登録されている子どもの割合は2005-2006年の41%から2015-2016年には80%に上昇しました。近年、ユニセフは国全体の出生登録に優先して取り組めるよう、インド政府と協力し、出生登録所を増やしアクセスを改善し、職員やコミュニティワーカーを訓練し、最も弱い立場に置かれたコミュニティで啓発プログラムを実施しています。
一方、サハラ以南のアフリカの国々の大部分は世界の他国に遅れをとっており、なかでもエチオピア(3%)、ザンビア(11% 注)、チャド(12%)は世界で最低水準の出生登録率となっています。
3カ国に1カ国、早急な状況改善が必要
報告書では、持続可能な開発目標(SDGs)にある「2030年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する」(目標16.9)を達成するためには、3カ国に1カ国(世界の5歳未満児人口の約3分の1を占める)が早急に状況を改善する必要があると指摘しています。
出生登録がされない理由としては、子どもの出生登録方法に関する知識の不足、出生登録または出生証明書の申請料金の高さ、登録が遅れた場合の追加料金、最寄りの登録施設までの遠さなどが挙げられます。加えて、子どもを産んだばかりの母親は屋内にいるべきなど、一部のコミュニティでの伝統的な慣習も、時間内に出生登録を行うことを妨げる原因になりえます。
なお、子どもが登録されている場合でも、出生証明書を所持することはあまり一般的ではなく、世界で2億3,700万人の5歳未満児、つまり約3人に1人が登録を証明する公式書類を持っていません。
本報告書において、ユニセフはすべての子どもを守るために以下の5つの行動を求めています。
- すべての子どもに、出生の証明書を提供する。
- すべての親に対し、出生時、性別を問わず子どもを登録するよう後押しする。
- 出生登録を他のシステムと連動させ、保健、社会保障、教育などのサービスに対する子どもの権利を促進する。
- 安全で革新的な技術に投資し、出生登録を促進する。
- すべての子どもの出生登録を実施できるようコミュニティに働きかける。
「すべての子どもには名前、国籍、法的身分に対する権利があり、出生登録数が増えたことは歓迎すべきことです」とフォアは述べました。「しかし、今年30周年を迎えた子どもの権利条約で定められているように、すべての子どもが登録されるまで行動を止めてはなりません」
出典:ユニセフ、gooddo マガジン