
陸の豊かさも守ろう
陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する。2000年から2016年にかけて、グローバルな陸域、内陸淡水、山地の保護区でカバーされた主な生物多様性地区の割合はそれぞれ16.5パーセントから19.3パーセント、13.8パーセントから16.6パーセントへ、18.1パーセントから20.1パーセントへと増えた。こうした前進にもかかわらず、2015年には2万3000種の植物、菌類、動物が絶滅の危機が高いことが明らかになった。1999年以来、少なくとも7,000種の動物や植物が120カ国で非合法的取引として検知された。2016年SDG報告によると、全地球史を通じ、人間の活動によって種の絶滅が通常よりも1000倍の速さで進んでいる。
1990年から2015年にかけて、世界の森林地帯は世界の全陸塊の31.7パーセントから30.7パーセント減少した。それは森林が農業やインフラ開発のように他の目的のために利用されるようになったのが主な原因であった。他方、他の土地は植林、景観修復、もしくは自然の拡大によって森林となった。こうした進行中のプロセスや森林破壊を遅らせる努力のおかげで、グローバルな森林の純損失は1990年代の年730万ヘクタールから2010年から2015年の間の年330万ヘクタールにまで下がった。SDG 15は、森林と他の生態系に直接依存する者のために生活が守られ、生物多様性が維持され、これらの天然資源の恩恵を将来の世代も享受できるようにすることを目指している。
生物の多様性と汚染
生物の多様性―世界の植物や動物の種のまばゆいほどの多様性―は、人間の福祉に欠かせない強靭な生態系とサービスを維持するために不可欠である。これらの生物資源は気候変動と人間の活動によってとてつもない圧力を受けている。1992年の「国連生物の多様性に関する条約(United Nations Convention on Biological Diversity)(www.cbd.int)は、生物の多様性を保護かつ保存することを目的とする主要な国際文書である。195カ国と欧州連合が加入している。条約は、UNEPが管理し、生物の多様性を保存し、その持続可能な開発を確保し、遺伝資源の利用がもたらす恩恵を公正かつ公平に共有し、かつ条約の実施に対する貢献を述べた報告を提出することを締約国に義務付けている。2003年に発効した「バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書(Cartagena Protocol on Biosafety)」は、遺伝子改変による有機物の安全な輸送、標識化、取り扱いを確保することを目的とし、締約国は170カ国である。「取得と利益の配分に関する名古屋議定書(Nagoya Protocol on Access and Benefit Sharing)」は利益の公平な配分を保証することを目的とし、2014年に発効し、現在の締約国は79カ国である。「生物多様性の戦略計画2011‒2020(Strategic Plan for Biodiversity 2011‒2020)」は「愛知目標」として知られる期限を定めた目標を掲げ、生物多様性の損失と闘う国家、国際の努力を組織しかつ優先度を決める。
ユネスコの「人間と生物圏計画(Man and the Biosphere Progamme)」(www.unesco.org/new/en/natural-sciences/environment/ecological-sciences/man-and-biosphere-programme)は、生物学的多様性の持続可能な利用と保存を進め、人間と環境との関係改善に努める。また、自然科学と社会科学、経済と教育の一体化を図ることによって生活を改善し、自然の生態系を守る。同時に、社会的に、文化的に健全で、かつ環境的に持続可能である経済開発への革新的なアプローチを促進する。他の生物多様性に関連する条約は以下の通りである。
「2004年食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約(International Treaty on Plant Genetic Resources for Food and Agriculture: TTPGR)」(http://www.fao.org/plant-treaty/en/)は、食料と農業のための植物遺伝資源の保全と持続可能な利用およびその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を確実にすることを目的とする。条約は食料と農業のためのすべての植物遺伝資源をカバーし、「アクセスと利益配分の多国間システム(Multilateral System of Access and Benefit‒sharing)」は特別リストに載せられた64の作物と牧草類に限定する。農民の権利についても規定している。
「1979年長距離越境大気汚染条約(1979 Convention on Long‒range Transboundary Air Pollution)」とその議定書は、国連ヨーロッパ経済委員会のもとで交渉され、ヨーロッパ及び北米における大気汚染の防止と削減とを規定している。また、産業製造過程から生じる硫黄酸化物の排出による酸性雨はかなり削減された。条約には51カ国が参加。
「1979年移動性の野生動物種に関するボン条約(1979 Bonn Convention on the Conservation of Migratory Species of Wild Animals)」(www.cms.int)は、UNEPが管理し、一連の関連した地域協定や特定の種に関する協定とともに、とくに絶滅の危険にさらされている種を中心に、移動性の陸生動物、海洋動物、鳥類の種や生息地を保存することを目的とする。条約には124カ国が加入している。
「1973年絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(1973 Conventiono on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)」(www.cites.org)は、UJNEPが管理し、割当制や生存確保のための全面禁止を通して、野生の動植物の種や生産物の国際取引を規制する。条約は、3万種以上の動植物の種をそれぞれの程度に合わせて保護する。
「1972年 世界遺産条約(1972 World Heritage Convention)」(https://whc.unesco.org/en/convention/)は、ユネスコが管理し、世界の文化遺産や自然遺産を明らかにして保存する。そのため、全人類のために保存すべき優れた価値を持つ場所のリストを作成し、国家間の緊密な協力を通して保護する。
「1971年湿地に関するラムサール条約(1971 Ramsar Convention on Wetlands)」(www.ramsar.org)は、湿地とその資源の保全と適正な利用を進めるための国家行動と国際協力のための枠組みを提供する。条約は、湿地の保全と適正な利用のあらゆる側面をカバーし、また、一般に生物の多様性の保全と人間社会の福祉とって極めて重要である生態系として湿地をみなしている。
「1952年国際植物防疫条約(1952 International Plant Protection Convention)」(www.ippc.int)は、栽培植物、野生植物を問わず、世界の植物資源を保護することを目的とする。そのため、植物の病害虫の侵入、まん延を防止し、またその適切な対策措置を促進する。条約は「植物検疫措置に関する国際基準(ISPM)」を発展させ、ISPMや条約による他の義務を実施できるように加入国を支援するメカニズムを提供している。
「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム(Intergovernmental Science‒Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services: IPBES)」(www.ipbes.net)は政府間機関で、政策立案者からの要請に応えて、生物多様性や社会に提供する生態系サービスの現状を評価する。プラットフォームはUNEP、UNESCO、FAO、UNDPの国連4機関の後援のもとにあって、UNEPが管理する。その事務局はドイツのボンにある国連キャンパスの中に置かれいる。世界の1000人の科学者がボランタリーの形でIPBESの活動に貢献している。専門家同士による相互評価はIPBES活動の主要な一部を構成するもので、それによってさまざまな見解が反映され、その活動が最高の科学水準のものであるようにする。
持続可能な森林管理
林産物の国際貿易高は年間何千億ドルにも達するが、世界の16億人以上の人々が多かれ少なかれ生計を森林に頼っている。先住民の知識の基盤として、森林は大きな社会文化の恩恵をもたらす。そして生態系として、森林は気候の変動の影響を緩和し、生物の多様性を保護する。新たな植林や既存森林の自然拡張のおかげで森林の純消失率は下がってきているが、毎年およそ1,300万ヘクタールの森林が失われ、森林破壊が続いている。これは地球温暖化に貢献する世界の温室効果ガス排出量の20パーセントに相当する。世界の森林とその土壌は1兆トン以上の炭素を蓄えている。大気中の炭素の2倍である。
森林破壊のもっとも一般的な理由は持続不可能な形の木材のための伐採、森林の農地への転換、不健全な土地管理の慣行、そして人間の居住地の建設などである。国連は、森林原則に関する非拘束性の声明を採択した1992年の地球サミット以来、持続可能な森林管理の活動の最前線に立ってきた。
1995年から2000年にかけて、「森林に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Forests)」と「森林に関する政府間フォーラム(Intergovernmental Forum on Forests)」が、森林政策に関する主要な政府間フォーラムであった。2000年、経済社会理事会は国連森林フォーラム(United Nations Forum on Forests)(www.un.org/esa/forests)を設置した。ハイレベルの政府間機関で、すべての国が参加でき、持続可能な森林管理のための長期的政治コミットメントを強化することを目的とする。フォーラムの事務局は、持続可能な森林管理のための能力強化を目的とした技術支援を行い、また分析、情報サービスを行っている。
2007年、フォーラムは国際森林政策と協力に関する画期的な合意、「あらゆるタイプの森林に関する法的拘束力を伴わない文書(Non‒Legally Binding Instrument on All Types of Forests)」を採択した。これは同じ年、総会によっても採択された。文書には、森林の被覆の損失を軽減する目的の四つのグローバルな目的が含まれている。すなわち、森林劣化を防ぐこと、全森林依存人口の持続可能な生計を促進すること、持続可能なように管理された森林を増大させること、森林のために追加資金を動員すること、である。2015年、総会はその決議70/199で文書を「国連森林文書(United Nations forest instrument)」に変え、森林に関するグローバルな目的の予定表を「2030アジェンダ」の予定表に合わせて2030年まで延長した。
2017年1月、フォーラムの特別会期は「国連森林戦略計画2017‒2030(UN Strategic Plan on Forests 2017‒2030)」と2017年―‒2030年間の作業計画を採択した。
砂漠化防止
砂漠化とは乾燥、半乾燥、乾燥半湿潤地域―いわゆる乾燥帯―における、気候変動および人間の活動を含む種々の要因に起因する土地の劣化である。持続可能な開発の観点から云えば、過度の乾燥帯(砂漠)は除外される。乾燥地帯は地上の陸地の41パーセントを占め、少ない降水量と高い蒸発力が特徴である。そこは20億人もの人々の故郷である。その中には世界の貧しい人々の半数が含まれる。これらの人々のうちの18億人が開発途上国に住んでいる。
乾燥地帯における土地の劣化とは、乾燥地帯の生物学的もしくは経済的生産性の低下もしくは損失である。そのおもな原因は過剰耕作、家畜の過剰放牧、森林の破壊と貧弱な灌がい施設である。UNEPの推定によると、それは地球上の表面積の3分の1と110カ国以上の国々に住む10億人の人々に影響を及ぼす。サハラ砂漠以南のアフリカ諸国は、国土の3分の2が砂漠もしくは乾燥地帯で、とくにリスクが高い。
干ばつは自然に発生する現象で、降水量が普通より非常に低い時に発生し、深刻な砂漠化の原因となる。それは複雑かつゆっくりと忍び寄る自然災害で、重要かつ拡大する経済社会的影響や環境上の影響をもたらす。砂漠化や干ばつがもたらす結果は、食糧安全保障の欠如、飢餓、貧困である。
それに起因する社会的、経済的、政治的緊張は、対立を生み、一層の貧困化と土地の劣化を進める原因となる。世界の砂漠化の拡大によって、何百万という貧しい人々が新たに住宅と生計とを求めなければならなくなる。
「深刻な干ばつまたは砂漠化に直面している国(とくにアフリカの国)における砂漠化防止のための国際連合条約(United Nations Convention to Combat Desertification in those Countries Experiencing Serious Drought and/or Desertification, Particularly in Africa)」(www.unccd.int)は、この問題を解決しようとする条約である。土地の回復、土地の生産性の改善、土地と水資源の保存と管理に焦点を当てている。また、リスク軽減の原則に基づいて国家干ばつ政策の構築を進める国を支援する。世界の20億ヘクタールの劣化した土地は、土地や森林に再生される可能性を持っている。条約は、現地の人々が、「土地劣化ニュートラリティ」を中心に、陸上生態系に基づいて、自分たちで土地の劣化を転換できるような環境作りをする必要を強調している。また、被災国が国家行動計画を作成する際の基準を載せるとともに、行動計画の作成と実施にあたってはかつてなかった大きな役割をNGOに与えている。条約は、1994年に総会によって採択されて1996年に発効し、195カ国が締約国となっている。
IFAD、FAO、UNEP、世界銀行など、国連の多くの機関が砂漠化防止の活動を支援している。UNDPはナイロビにある「強靭な生態系及び砂漠化グローバル政策センター」への投資を通して砂漠化防止活動に財政的に支援している。
平和と公正をすべての人に
持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する。平和、公正、効果的で説明責任のある包摂的な制度は持続可能な開発の中核をなす。多くの国は依然として長引く対立と暴力に直面し、あまりにも多くの人々が闘いに明け暮れている。これは制度が脆弱であるばかりでなく、司法、情報、他の基本的自由へのアクセスがないためである。世界の意図的な殺人の犠牲者の数は2008年から2014年にかけては比較的安定していた。それでもその間の開発途上国における殺人率は開発先進国の2倍で、後発開発途上国ではその率はさらに上昇している。2011年、グローバルなレベルでの人身売買の犠牲者の34パーセントは子どもたちで、204年に比べ13パーセントの上昇であった。
法の支配と司法アクセスについての進歩は入り混じったものである。世界的に、判決手続きのないままに拘置される人々の割合は少し下がり、2003年―2005年の拘置されたすべての人の32パーセントから2012年―2014年の30パーセントへとなった。国の人権機関を有する国の割合は過去15年で2倍になり、2015年末では35.5パーセントを占めた。SDG 16は、すべての人が強力で効果的な制度によって支援され、かつ司法、情報、他の基本的自由にアクセスできるようにすることを求めている。
国連は、広範にわたる国際的に受け入れられた権利についての定義を行い、これらの権利を促進、擁護するメカニズムを設立した。それには女性、子ども、障害者、移住者、先住民のような弱い立場の人々の権利も含まれる。また、女性や女児に対する暴力、人身売買のような特定の問題に取り組む特別報告者も任命されている。
パートナーシップで目標を達成しよう
持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する。「2030アジェンダ」の実施に当たってパートナーシップを強化すべき目標領域は資金、貿易、技術そして能力構築である。政府開発援助は2015年に1,316億ドルに達し、2014年に比べ実質的に6.9パーセントの増加となり、これまでの最高レベルを記録した。債務返済額の対輸出比率は2000-2012年に著しく下がり、2000年の11.7から2012年の2.7にまで下がった。2015年、固定ブロードバンドインターネットの普及率は先進国では29パーセントに達したが、開発途上国では7.1パーセントで、後発開発途上国ではわずか0.5パーセントにすぎなかった。すべての国の90パーセント、開発途上国の88パーセントが2006‒2015年間に人口・住宅調査を実施した。重要なデータの主な出所である。SDG 17は、政府、市民社会、民間部門、国連システム、その他の主体からあらゆる利用可能な資源を動員してパートナーシップの再活性化を図ることを目的とする。
情報通信技術(ICTs)のための国連専門機関として、国際電気通信連合(International Telecommunication Union: ITU)(www.itu.int)は、2030年までにSDGを達成するためにICTsが必要な役割を果たせるようにする主導的な役割を担う。そのため、ITUの作業の多くはそれぞれの分野の専門家で構成される研究グループの中で行われる。これらの専門家の多くは競合する商業利益を代表するが、それでもITUという枠の中で、協力してシステムを開発し、最善の慣行を共有し、産業や消費者全体の利益にかなう原則やガイドラインを作成する。研究グループの主な成果は、「勧告」として知られる技術水準やガイドラインを確立することである。これらの勧告は、産業や政府が実際の事業を進める際には自由に利用することができる。中立的なプラットフォームを提供することによって、ITUは、経済社会開発とエンパワーメントの主要な推進力である生態系の保全を可能にする。
持続可能な開発の資金調達
1992年の地球サミットにおいて「アジェンダ21」の実施に必要な資金のほとんどはそれぞれの国の公的部門や民間部門から調達することで合意がみられた。しかし、持続可能な開発を進め、かつグローバルな環境を保全しようとする開発途上国の努力を支援するためには、さらなる外部資金が必要だと考えられた。持続可能な開発の資金調達に対する全体的アプローチは、2002年の「モントレー・コンセンサス(2030 Monterrey Consensus)」、開発資金に関する2008年「ドーハ宣言(2008 Doha Declaration)」、そして開発資金に関する2015年「アディスアベバ行動目標(2015 Addis Ababa Action Agenda)」に具体化された開発資金プロセスに根差している。
第3回国際開発資金会議(アディスアベバ、215年7月13-16日)は、「アディスアベバ行動目標」の採択をもたらした。2030アジェンダの実施を支援する強力な基礎となるもので、経済、社会、環境の優先度とともにすべての資金の流れと政策を整合し、持続可能な開発の資金を調達するための新しいグローバルな枠組みを載せている。加盟国とその他のステークホルダーはまた、一連の政策措置にも合意した。100件以上の具体的措置で、SDG達成を支援するために資金、科学技術、イノベーション、貿易、債務、データ等、すべての資源を利用する。2030アジェンダの実施手段のすべてがアディスアベバ行動目標に含まれている。
7月27日、総会は年1回開催のECOSOC開発資金フォーラムを設置することに決めた。アディスアベバ行動目標へのフォローアップのプロセスとしてすべての国に開放され、政府間機関も参加する。フォーラムは最高5日間にわたって開かれ、ブレトン・ウッヅ機関、WTO、UNCTADとの特別ハイレベル会合も開かれる。
1991年に設置された地球環境ファシリティ(Global Environment Facility: GEF)(www.thegef.org/gef)は、グローバルな環境を保護し、地域社会において持続可能な生活を進める開発途上国のプロジェクトを支援する。2016年の設立25周年までに、およそ145億ドルをグラントで提供し、受益国政府や国際開発機関、民間産業、NGOから754億ドルの協調融資を受け、165カ国の開発途上国や経済移行国の4,000件のプロジェクトを支援した。最初は世界銀行、UNDP、UNEPの3機関で始まったが、今ではFAO,IFAD,UNIDOを含め、18の実施・執行機関のネットワークになるまでに成長した。
政府開発援助
政府開発援助(ODA)は2015年に1316億ドルであった。これは、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)の28加盟国の国民総所得の0.3パーセントに過ぎない。総会が設定した0.7パーセント目標の半分以下の数字である。国連開発システムはOECD/DAC加盟国から直接多国間資金を得る最大のチャンネルとなっている。
もっとも貧しい、もっとも脆弱な立場にある人々へ援助を向けるという点では、ODAや国連の開発のための活動資金は重要な影響を持っている。これらの資金の流れはMDGsやSDGsのように特定の開発目標に的を絞って提供されるからである。このことが特に言えるのは後発開発途上国(LDCs)の場合である。後発開発途上国は48カ国で、その極度の貧困と債務のために、グローバルな経済成長と開発の恩恵から取り残されてしまった。これらの国は、そのうちの34カ国がアフリカにあるが、国連開発システムによって優先的に取り上げられている。国連の開発のための活動の年間国レベルの支出のおよそ50パーセントがLDCsのために使われている。小島しょ開発途上国(SIDS)、内陸開発途上国、経済移行国は重大な問題に直面しており、援助計画とODAでは特別の優先度が与えられている。
国連の開発援助とは、国連開発システムの機関が開発途上国の発展と福祉の促進を第一に実施する活動である。2014年、援助国は国連の開発援助活動に284億ドルの拠出を行った。これはこれまでの最高の額で、同年の総ODA額の20パーセント多い額であった。
国連の開発援助は二つの資金源から供与される。一つは国連システムの諸機関、各種基金、計画からの無償資金援助で、もう一つは世界銀行や国際農業開発基金(IFAD)のような、国連システム内の融資機関による支援である。世界銀行グループは開発途上国の経済成長を促進し、貧困を克服するために2016年会計年度に642億ドルに及ぶ貸し出し、無償資金、直接投資、保証を行った。1978年に活動を開始して以来、IFADは900件を超すプロジェクトや事業計画に対して148億ドルの投資を行った。これによって農村地帯のおよそ4億人がその恩恵を受けた。被援助国の政府や金融機関が122億ドルの拠出を行い、さらに多国間、二国間、その他の援助機関が協調融資としておよそ96億ドルを提供した。
南南協力
南南協力は、国際協力の独特の要素で、北南協力を補完するものして認識されている。アディスアベバ行動目標は、貧困の撲滅と持続可能な開発に対する南南協力の一層の貢献を歓迎した。南南協力に関するハイレベル国連会議の成果文書に載せられている規定に沿って、開発途上国は南南協力を強化する努力を始めるよう奨励された。多くの点で共通の課題を抱える開発途上国の中で開発戦略、優先度、資源、解決を分かち合うことは、能力向上と持続可能な開発の実現の重要な触媒となる。
部分的であるがデータが示していることは、2014年に、南南協力は2013年に達成された200億ドルを超えた。政府の収入を超えた南南協力のための資金源はますます多様化されている。アフリカの銀行も含め、国の開発銀行は地域または小地域のインフラ整備の資金供与についても一層重要な役割を果たした。推定によると、「新開発銀行」は2024年まで年間34億ドルの融資能力に達する可能性を持ち、2034年までには90億ドルになると推定される。「アジアインフラ投資銀行」は、2016年に事業を開始したが、今後15年間に年間100億ドルから150億ドルの融資を行えると予想されている。ケニアのナイロビで開かれた「効果的な開発協力に関するグローバル・パートナーシップに関する第2回ハイレベル会合(2016年11月28日―12月1日)」の参加者は、SDGsを達成する手段として効果的な開発協力へのコミットメントを再確認した。
貿易と開発
すべての国をグローバルな貿易に参加させることが国連貿易開発会議(United Nations Conference on Trade and Development: UNCTAD)(www.unctad.org)の任務である。UNCTADは貿易、金融、技術、投資、持続可能な開発の分野で開発関連の問題を取り上げる国連の中心機関として、開発途上国の貿易、投資、開発の機会が最大になるように努める。また、これらの国が経済のグローバル化から生じる問題に対処できるように支援し、かつ世界経済に公平に参加できるようにする。グローバル化によって何百万もの人々が貧困から抜け出すことができたものの、多大な課題が依然として残っている。UNCTADは調査や政策分析、コンセンサス形成、技術援助を行い、これによって、開発途上国が包摂的、持続可能な開発の手段として貿易、投資、融資、技術を利用できるようにする。国、地域、グローバルのレベルで作業し、UNCTADは参加国が以下のことをできるように支援する。
一次産品に過度に依存しないよう経済の多様化を図る
金融の変動制と債務の組み入れを制限する
投資を招き、それによって、環境にやさしい開発をする
デジタル技術へのアクセスを増加させる
起業家精神と技術革新を促進する
現地企業が価値連鎖を上昇できるようにする
国境を越える商品の流れを加速させる
消費者を乱用から保護する
競合を抑える規制を阻止する
気候変動に適合させ、天然資源をより効果的に利用する
UNCTADは、開発途上国や経済移行国が海外直接投資(FDI)を促進し、かつ投資環境を改善できるように支援する。UNCTADは、これらの国の政府が海外直接投資政策の影響を理解し、そのための政策を策定し、実施できるように支援する。グローバルな海外直接投資の動向については毎年「世界投資報告書」、「投資政策レビュー」、「世界投資デレクトリー」やその他の研究論文で発表される。
UNCTADは、通常の政府間討議や技術協力を通して、とくに中小企業を中心に、企業開発を促進する。UNCTADの技術協力活動のいくつかは以下の通りである。
税関データの自動化システム(Automated System for Customs Data)(www.asycuda.org)最新の科学技術を利用して、政府が関税手続きと管理を近代化できるようにする。また、経済ガバナンスを改善する道具でもある。
エンプレテック計画(EMPRETEC Programme)(https://empretec.unctad.org/)は、中小企業の開発を促進する。
UNCTADは、2030アジェンダに載せられているようにSDGsによって進歩を測定する。また、四つの他の機関ステークホルダー、すなわち国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界貿易機関(WTO)、国連開発計画(UNDP)とともに、開発資金に関するアディスアベバ開発目標の実施を支援する。UNCTADはSDGsの達成にあったては主に政府とともに作業を進めるが、民間部門や市民社会とのパートナーシップや緊密な協力は不可欠だと考えている。
国際貿易センター(International Trade Centre: ITC)(www.intracen.org)は、国連と世界貿易機関(WTO)との共同機関である。包摂的成長、雇用創出、イノベーションの原動力として、中小企業(SMEs)の国際化に専心する唯一の開発機関である。
ITCの使命は、開発途上国と経済移行国において持続可能な経済開発を進め、それによってSDGsの達成に貢献することである。政策立案者、民間部門、貿易・投資支援機関とともに、地域およびグローバルな市場においてビジネスがより競争力の高いものとなるようにし、同時にグローバルな貿易システムとの結びつきをより強力なものにする。ITCの目的はグローバルな経済へのSMEsの統合を強化し、SMEsに対する貿易・投資支援を改善し、SMEsの国際的な競争力を改善することである。
ITCの活動は六つの焦点領域のもとに構成されている。すなわち、貿易・市場情報の提供、より良い結果をもたらすようなビジネス環境の構築、貿易・投資支援機関の強化、国際的価値連鎖への接続、包摂的かつ“グリーン”取引の促進と主流化、地域経済統合と南南リンクの支援、である。
ITCはLDCs、LLDCs、SIDS、サハラ以南のアフリカ、紛争後の国々、小さく外部の影響の受けやすい国々を優先的に支援している。女性の経済的エンパワーメント、若い起業家、貧しいコミュニティの支援、それに持続可能な“グリーン”取引が優先事項である。
世界貿易機関(World Trade Organization: WTO)は、すべての人々のために貿易を始めさせることを主要な目的とした国際機関である。WTOは国際貿易の障壁を軽減し、すべての人々のために公平な競争の場を確保する目的の協定を交渉するプラットフォームを提供し、それによって経済成長と開発に貢献する。また、これらの協定の実施と監視を行い、また協定の解釈および適用から生じる紛争を解決するための法的、制度的枠組みを提供する。WTOを含む現在の貿易協定機構は16の異なる多国間協定(全164 WTO加盟国が加入)と二つの異なる多国間協定(いくつかのWTO加盟国だけが加入)から構成される。1995年の設立以来、WTOとその前身機関GATTは強力かつ繁栄する国際貿易システムを創設するのを支援し、そうすることによって未曽有のグローバルな経済成長を実現することに貢献した。
グローバルな統計
政府、公共機関、民間セクターにとって、国および国際レベルの正確かつ比較可能な統計は必要不可欠である。国連はその創設以来、統計に関する中心機関となってきた。国連統計委員会(Statistical Commission)は、24カ国で構成される政府間機関で、国際統計活動の最高の政策決定機関である。また、事務局経済社会局の国連統計部(UN Statistics Division)(https://unstats.un.org/home/)の作業を監督する。統計部はグローバルな統計情報を編集、普及させ、統計活動の基準や規範を発展させ、国内統計システムを強化する国の努力を支援する。
統計部はまた、国際統計活動を調整し、委員会の任務を支援する。さらに、統計の編纂者と利用者に幅広いサービスを提供する。たとえば、「国連データ・ポータル(http://data.un.org)」、「統計年鑑(Statistical Yearbook)」や「統計月報(Monthly Bulletin of Statistics)」、「世界統計便覧(World Statistics Pocketbook)」、公式の「国連ミレニアム開発目標指数のデータベース」、「人口統計年鑑(Demographic Yearbook)」、「国連コムトレード(UN Comtrade)」などである。また、人口・社会・住宅統計、国民所得、経済社会分類、エネルギー、国際貿易、環境、地理空間情報に関する刊行物も発行している。
統計部は、技術諮問サービス、研修計画、各種項目に関するワークショップの開催などを行い、開発途上国の国家能力の強化に努めている。
地理空間データと地名
政府、民間部門、市民は、場所と位置が効果的な政策決定にとって重要な要素であり、かつ権威ある地理空間情報は決定的重要な意味を持つことをますます認識するようになった。2011年、経済社会理事会はすべての加盟国のにとって最高の政府間メカニズムとして「国連グローバル地理空間情報管理委員会(UN Committee on Global Geospatial Information Management: UN‒GGIM)」(http://ggim.un.org/)を設置した。2016年、理事会は、とくに2030アジェンダを実施する際の役割を認めて、UN‒GGIMの任務を強化し、グローバルな地理空間情報管理の調整と一貫性を強化することが引き続き必要であると強調した。UN‒GGIMは国際協力、知識共有、能力強化と規範設定、グローバル地理空間情報管理能力の一層の強化、を進める。
「地理的名称に関する専門家グループ(Group of Experts on Geographical Names: UNGEGN)」は、記録、標準化、現地言語と伝統を反映させた現地使用の地名の使用を促進する。加盟国は、「地理的名称の標準化に関する国連会議(UN Conference on the Standardization of Geographical Names)」において標準化に関する方法について協議し、情報を広める。第11回会議は2017年8月に開かれた。
行政
「2030アジェンダ」を実現するにあたってもっとも重要な要素が、効果的、説明責任のある、包摂的な公的機関である。SDGsを達成するには、政府による将来を見据えた、全体的な、一般参加型の政策決定が必要である。すべてのSDGsに進歩が同時にみられるようにするには、これまでなかったほどのレベルの政策統合と機関間の調整が求められる。同時にそれらの間の相互関係と相乗効果の上に築かなければならない。こうした複雑な問題に取り組むことができるように公的部門を管理することは、国の政策決定者、政策立案者、行政にとって厳しい課題である。
国連は、DESAが実施する行政計画(Programme on Public Administration)(https://publicadministration.un.org/en/)を通して、政府がこれらの課題に取り組むのを支援し、あらゆるレベルで行政や諸機関がSDGsを達成するように奨励する。2030アジェンダを実施するように公的機関を動員し、公共の公正性と透明性を支援し、参加と包摂性、参加型の政策決定を容易にし、SDGsのために革新とICTを動員し、公共のサービスを行うためパートナーシップの活性化を図る。DESAは分析を実施する国を支援し、政府間の経験の交換を支援し、他の機関との緊密なパートナーシップも含め、諮問サービスや能力の強化をはかり、「国連行政ネットワーク(UN Public Administration Network : UNPAN)」のような知識共有のプラットフォームを支援する。
国連パートナーシップ事務所(UNOP)
「国連パートナーシップ事務所(United Nations Office for Partnerships: UNOP)」(www.un.org/partnerships)は、SDGsをさらに進めるために、民間部門、財団、その他の非国家的主体と国連システムとの間のパートナーシップを構築するための入り口として機能する。世界の各地で国連システムの諸機関が実施する影響力の大きいプロジェクトを支援して国連財団(www.unfoundation.org)と国連システム間の操作インターフェースとして、また、国連民主主義基金(UN Democracy Fund)(https://www.un.org/democracyfund/)の行政上のハブとしての役割を果たす。UNOPは、SDGsを支援して国連と非国家的主体との間で行われるパートナーシップに関する行事やイニシアチブを指導し、可能にする。2015年12月31日現在、国連パートナーが実施する「国連パートナー基金(UNFIP)」のプロジェクトに対して国連財団が承認した累積割当額はおよそ14億ドルに達した。その発足以来、592件のプロジェクトが124カ国で43の国連機関によって実施され、または実施中である。2016年、国連財団は、主にポリオ撲滅、マラリア、HIV/エイズとはしかの予防、人道的救済、疾病監視、リプロダクティブ・ヘルス(生と生殖に関する健康)のケア、女児のエンパワーメント、持続可能なエネルギー開発と環境保全、その他への資金提供として3,710万ドルを支出した。
出典: 国際連合広報センター