2030アジェンダの履行に関する自発的国家レビュー2021 8つの優先課題と主な取組

8つの優先課題と主な取組

優先課題1 あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現

「誰一人取り残さない」とのキーワードは、2030アジェンダの根底に流れる基本的理念を示しており、2030アジェンダは、女性、子供、若者、障害者、HIV/エイズと共に生きる人々、高齢者、先住民、難民、国内避難民、移民などへの取組を求めている。

国際社会における普遍的価値としての人権の尊重と、ジェンダー平等の実現及びジェンダーの視点の主流化は、分野横断的な価値としてSDGsの全ての目標の実現に不可欠なものであり、あらゆる取組において常にそれらの視点を確保し施策に反映することが必要であり、この旨、SDGs実施指針にも明記している。

日本は、国内実施、国際協力のあらゆる課題への取組において、脆弱な立場におかれた人々にこそ最初に手が届くように焦点を当ててきた。特に、国際協力においては、人間の安全保障の理念に基づき、持続可能な開発と平和の持続が表裏一体であることを踏まえ、一人ひとりの保護と能力強化を貫徹するために切れ目のない支援を行う「人道と開発と平和の連携」の考え方を重視してきた。

脆弱な立場に置かれた人々が新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を大きく受けており、一層の対応が求められる。

国内の課題と取組

(ジェンダー主流化・女性の活躍推進)

男女共同参画・女性活躍の推進については、1999年に制定された「男女共同参画社会基本法」に基づき、5年ごとに施策の基本的な方向や具体的な取組などを定めた「男女共同参画基本計画」を策定し、施策を総合的かつ計画的に推進している。また、女性の活躍を加速するために、2015年以降、毎年6月を目途に「女性活躍加速のための重点方針」を決定し、各府省の概算要求に反映させている。

2020年12月に閣議決定した「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~」では、

  1. あらゆる分野における女性の参画拡大
  2. 女性に対する暴力の根絶
  3. 男女共同参画の裾野を広げる地域における取組
  4. 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に関する視点

などについて盛り込むとともに、2030年代には、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指すこと、そのための通過点として、2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう目指して取組を進めることを掲げている。

この第5次計画の推進に当たっては、男女共同参画会議において、特に重要な項目について毎年度、進捗状況を点検し、2023年には、全89項目の成果目標の達成状況について点検・評価を行うこととしている。これらの成果目標は、SDGsにおけるゴール5の目標達成に向けた各種の取組とも関連するものである。また、必要に応じて、内閣総理大臣及び関係大臣に意見を述べ、更なる取組を促すこととしている。

また、内閣総理大臣からの指示を受け、基本計画に盛り込んだ女性の登用・採用目標の達成に向けて、2021年度・2022年度に取り組むべき具体案を盛り込むんだ「女性活躍・男女共同参画の重点方針2021」を2021年6月に策定した。

法制面では、2018年5月には、政治分野における男女共同参画を効果的かつ積極的に推進し、もって男女が共同して参画する民主政治の発展に寄与することを目的とした「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が成立した。この法律は、衆議院、参議院及び地方議会の選挙において、男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指すことなどを基本原則とし、国・地方公共団体の責務や、政党等が所属する男女のそれぞれの公職の候補者の数について目標を定める等、自主的に取り組むよう努めることなどを定めている。第5次男女共同参画基本計画では、我が国における取組の進展がいまだ十分でない要因としては、政治分野において立候補や議員活動と家庭生活との両立が困難なこと、人材育成の機会の不足、候補者や政治家に対するハラスメントが存在すること等、そして、社会全体において固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)が存在していること等が考えられるとされている。政党等における実効性のある積極的改善措置(ポジティブ・アクション)の取組の要請を始め、政党や国会、地方議会等と連携を強化し、男女共同参画に関する議論を進めていく必要がある。

また、2015年8月に、働く場面で活躍したいという希望を持つ全ての女性が、その個性と能力を十分に発揮できる社会の実現を目的とした「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」が成立した。これにより、国や地方公共団体、常用労働者数301人以上の企業に対し、女性の採用割合や管理職割合等の数値目標を盛り込んだ行動計画の策定・公表や、女性の活躍に関する情報の公表が義務付けられた。2019年には行動計画の策定義務の対象拡大や情報公表の強化等が盛り込まれた一部改正法が成立し、2022年度から常用労働者数101人以上の企業へ拡大される。

企業の取組も促すべく、経済産業省では、2012年度から東京証券取引所と連携して「女性活躍推進」に優れた上場企業を、「中長期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄(「なでしこ銘柄」)として、年度ごとに約50社選定している。更に、女性を始め多様な人材の能力を活かして、イノベーションの創出、生産性向上等の成果を上げている企業を「新・ダイバーシティ経営企業100選」、「100選プライム」等で表彰・選定しており、ダイバーシティ経営の普及啓発を実施している。

更に、コーポレートガバナンス改革により、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を促す観点からは、2018 年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂及び投資家と企業の対話ガイドラインにおいて、取締役会におけるジェンダーや国際性等の多様性確保を明記した。また、2021 年6月のコーポレートガバナンス・コード及び投資家と企業の対話ガイドラインの改訂においては、管理職における多様性の確保(女性・外国人・中途採用者の登用等)についての考え方と測定可能な自主目標の設定を求めている。また、働く女性の妊娠・出産等ライフイベントに起因する望まない離職等を防ぎ、個人のウェルビーイングと企業の人材の多様性を高めるため、2021年度から、フェムテック企業、女性を雇用する企業、医療機関、自治体等が連携してフェムテック等の製品・サービスを活用したサポートサービスを提供する事業を補助していく。

新型コロナウイルス感染症の拡大の影響が女性の生活や雇用に深刻な影響を与えていることを踏まえ、政府の新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針において、「各種対策を実施する場合において、女性に与える影響を十分配慮して実施する」旨を明記し、対策を実施している。

(ダイバーシティ・バリアフリーの推進)

日本は、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会の実現に向け、障害者基本計画を策定し、障害者の自立と社会参加の支援等のための施策等の推進を図っている。

移動等円滑化の観点から、旅客施設・車両等のバリアフリー化、市町村によるマスタープラン又はバリアフリー基本構想の作成を通じた駅周辺等の面的なバリアフリー化、国民の理解と協力を求める心のバリアフリーを総合的に推進している。更に、障害者雇用の推進のため、法定雇用率を達成していない事業主に対しての達成に向けた指導等、障害者の希望や特性に応じた職業紹介、定着支援、合理的配慮の周知啓発等に取り組んでいる。

また、人種、障害の有無などの違いを理解し、認め合うことの重要性を認識してもらうため、啓発冊子の配布や啓発動画の配信を行ったり、学校等で人権教室を実施したりするほか、様々な民間団体等と連携・協力して、車椅子体験・障害者スポーツ体験などの体験型の人権教室も広く実施している。障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に教育を受けられるように環境整備を行うことも重要であり、学校設置者による学校施設のバリアフリー化に対する支援、障害の状態に応じた学びが保障出来るよう、医療的ケア児等も含めた子供への支援に必要な人材の確保、適切な就学先決定に向け必要な情報提供や医療・福祉等との連携の促進にも取り組んでいるところ。

さらに、在留外国人との共生社会を実現するため、2018年12月に「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を策定(2019年12月及び2020年7月に改訂)し、行政・生活情報の多言語・やさしい日本語化、相談体制の整備等の暮らしやすい地域社会づくり、医療機関における外国人患者受入環境整備、日本語教育の充実、外国人の子供に係る対策等、全ての人が互いの人権を大切にし、支え合う共生社会の実現のため、各種人権啓発活動を実施するなどして、受入れ環境整備を推進している。

(高齢者・障害者等の消費者被害防止のための見守りネットワークの構築)

認知症高齢者や障害者等の配慮を要する消費者を見守るためのネットワークとして、2014 年の消費者安全法の改正により規定された、「消費者安全確保地域協議会」(見守りネットワーク)の設置促進に取り組んでおり、2021 年 3 月までに 327 の地方公共団体で設置された。消費者安全確保地域協議会は、既存の福祉のネットワーク等に地域の消費生活センターや消費者団体等の関係者を追加することで、消費者被害の未然防止、拡大防止、早期発見、早期解決に資する見守りサービスの提供を可能にする取組である。

(働き方改革)

日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要である。そのため、個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指し、以下のような「働き方改革」のための取組を推進している。また、新型コロナウイルス感染症の拡大後、テレワークが広がっており、働き方改革や女性活躍に資するテレワークの普及展開や、中小企業向けセミナーや相談会、専門家によるテレワーク導入支援、先進事例の表彰等を行っている。

  • 同一労働同一賃金など非正規雇用労働者の待遇改善
  • 長時間労働の是正や柔軟な働き方がしやすい環境整備(時間外労働の上限規制、産業医・産業保健機能の強化等)
  • 生産性向上、賃金引上げのための支援
  • 女性・若者の活躍の推進(子育て等で離職した正社員女性等の復職支援や男性の育休取得の促進、若者に対する一貫した新たな能力開発等)
  • 人材投資の強化、人材確保対策の推進
  • 治療と仕事の両立、障害者・高齢者等の就労支援

(貧困・格差解消に資する社会保障制度措置)

生活に困窮される方については、生活困窮者自立支援制度による包括的な支援を行っており、困窮のため最低限度の生活を維持できない方については、生活保護法に基づき、健康で文化的な最低限度の生活に必要な保障を行っている。

また、年金を受給しながら生活をしている高齢者や障害者等の中で、年金を含めても所得が低い方々を支援するため、月額約5千円を基準とし、年金に上乗せして支給する年金生活者支援給付金について、引き続き着実に支給していくこととしている。

生活保護受給者の推移を見ると、2018年における被保護人員数の総数は前年から横ばいとなる中で、65歳以上の生活保護受給者は104万人で、前年(103万人)より増加している。また、65歳以上人口に占める生活保護受給者の割合は2.93%で、前年と同じ水準であった。新型コロナウイルス感染症の拡大が人々に及ぼす影響について、引き続き注視していく必要がある。

(子供の貧困対策の推進)

子供の貧困問題への対応については、2013年6月に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が成立し、これを受け、政府において、子供の貧困対策に関する基本的な方針を始め、子供の貧困に関する指標、指標の改善に向けた当面の重点施策、子供の貧困に関する調査研究等及び施策の推進体制等を定めた「子供の貧困対策に関する大綱」を策定し、子供の貧困対策を総合的に推進してきた。

これらを踏まえ、2019年6月、議員立法による「子どもの貧困対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」が成立した。同法による改正後の法律では、目的として、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、子供の「将来」だけでなく「現在」の生活等に向けても子供の貧困対策を総合的に推進すること、子供の最善の利益が優先考慮されること、貧困の背景に様々な社会的要因があること等が明記された。政府は、法改正の趣旨や幅広く関係者から意見聴取を行った子供の貧困対策に関する有識者会議における提言等を踏まえ、同年11月に新たな「子供の貧困対策に関する大綱」を閣議決定した。

政府は同大綱に基づき、貧困の連鎖を断ち切るため、子供の現在及び将来を見据えた対策を実施するとともに、全ての子供が夢や希望を持てる社会の実現を目指し、子供のことを第一に考えた支援を包括的かつ早期に講じていくこととしている。子供の貧困対策を進めるに当たっては、親の妊娠・出産期から子供の社会的自立までの切れ目のない支援体制を構築し、支援が届いていない又は届きにくい子供・家庭を早期に発見し、早期に対策を講じるとともに、地域の実情を踏まえた地方公共団体による取組の充実を図ることとしている。また、子供の貧困に対する社会の理解を促進するため、「子供の未来応援国民運動」の展開等、どんな環境であっても前向きに伸びようとする子供たちを支援する環境を社会全体で構築する官公民の連携・協働を積極的に進めている。

(次世代の教育振興・あらゆる人々の教育機会の確保)

幼児期の教育は生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであること等に鑑み、全ての子供に質の高い幼児教育を受ける機会を保障するため、幼児教育・保育の無償化(段階的無償化を経て2019年10月より完全無償化)、高等教育の修学支援新制度(授業料等減免制度の創設及び給付型奨学金の拡充)等による経済的支援の充実などに取り組んでいるほか、その質の向上にも取り組んでいる。

また、障害のある児童生徒の教育の一層の充実を図るための学校における特別支援教育の推進、学校卒業後の障害者の生涯学習の推進等や、男女共同参画を推進する教育・学習に取り組んでいる。また、前述のとおり、「持続可能な社会の創り手」となることが新学習指導要領で掲げられており、同指導要領の着実な実施を通じて、若い世代やその親の世代でSDGsの認知度が高まることや、SDGsを学校で学んだ世代が2030年やその先の未来で活躍することが期待される。SDGsが目指す持続可能な社会の構築を目的とする環境教育等促進法に基づき、環境教育・ESD(持続可能な開発のための教育)も推進しており、教育者研修、体験学習の推進、情報発信、表彰制度による取組奨励等を行っている。持続可能な社会の実現に向け、ESDに関わる多様な主体が分野横断的に協働・連携してESDを推進することが重要であり、例えば、環境省と文部科学省は、共同でESD推進ネットワークを整備運用している。

また、新型コロナウイルス感染症の拡大により、オンライン教育が教育現場に取り入れられつつあり、義務教育段階の児童生徒「1人1台端末」や学校における高速大容量の通信ネットワークの整備等、学校におけるICT 環境の実現に向けて、ハード・ソフト・人材を一体とした整備を行っている。

(「ビジネスと人権」に関する行動計画の策定・実施)

国際的に企業に対する人権尊重を求める声が高まる中、国連人権理事会では「ビジネスと人権に関する指導原則」が支持され、また、SDGs達成に当たっては、人権の保護・促進が重要な要素と位置付けられている。こうした背景の下、2020年10月、関係府省庁が協力し、企業活動における人権尊重の促進を図るため、「ビジネスと人権」に関する行動計画を策定した。

同行動計画においては、「ビジネスと人権」に関して、今後政府が取り組む各種施策が記載されているほか、企業に対し、企業活動における人権への影響の特定、予防・軽減、対処、情報共有を行うこと、人権デュー・ディリジェンスの導入促進への期待が表明されている。

同行動計画の実施や周知を通じて、「ビジネスと人権」に関する関係府省庁の政策の一貫性を確保するとともに、責任ある企業行動の促進を図り、企業活動により人権への悪影響を受ける人々の人権保護・促進、ひいては、国際社会を含む社会全体の人権の保護・促進に貢献すること、日本企業の企業価値と国際競争力の向上、及びSDGs達成への貢献に繋がることが期待されている。

新型コロナウイルス感染症の拡大により、労働条件に関するサプライ・チェーン及び会社運営における脆弱性が浮き彫りになったことが指摘されている。このような国際社会の動きも踏まえ、政府として、人間の安全保障の理念に基づき、SDGs実現に向けた取組をより一層推進すべく、責任ある企業活動の確保に向け、同行動計画を着実に実施していく。

国際協力

(女性の活躍推進)

日本は、女性が持つ力を最大限発揮できるようにすることは、社会全体に活力をもたらし、成長を支える上で不可欠との考えのもと、ジェンダー平等の実現・女性のエンパワーメントの促進に向け、国際社会との協力や途上国支援を進めている。2016 年5月には、「開発協力大綱」に基づく新たな分野別開発政策の一つとして「女性の活躍推進のための開発戦略」を発表するとともに、2016 年から 2018 年までの3年間で、約5千人の女性行政官等の人材育成と約5万人の女児の学習改善の改善を実施する旨を表明した。その結果、11,345 人の女性行政官等を育成し、61,173 人の女児の学習改善を実施した。また、2019 年3月に開催された5回目となる国際女性会議 WAW!において、途上国における女性の活躍推進のために、2020 年までの3年間で最低 400 万人の途上国の女性たちに対して質の高い教育や人材育成の機会を提供する旨表明した。

(国際平和協力におけるジェンダー平等の推進)

政府は、安保理決議第 1325 号(女性と平和・安全保障の問題を明確に関連づけた初の安保理決議)等の履行に関する行動計画を策定し、2015 年9月、ニューヨークで開催された国連総会一般討論演説において、安倍内閣総理大臣(当時)から策定につき発表した。2016 年から3年間の実施を経て、2019 年3月、政府関係省庁、NGO・有識者との意見交換、パブリックコメントを経て行動計画を改訂し、第二次行動計画を策定した。

平和維持活動(PKO)の取組において、女性要員の重要性は一層増加している。日本は、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に対し、現在4名の司令部要員を派遣しているが、2018 年以降、継続して 25~50%の割合で女性要員を派遣しており、引き続き女性要員の派遣を含め、ジェンダーへの取組を推進していく。なお、PKO 法の下で派遣される日本の要員は、ジェンダーに関する派遣前研修を受講しており、派遣先では、ジェンダーに配慮した活動を行うことが期待されている。

(教育)

日本は従前から、国づくりと成長の礎である人材育成を重視して、開発途上国の基礎教育や高等教育、職業訓練の充実などの幅広い分野において教育支援を行っており、2015 年9月に発表した「平和と成長のための学びの戦略」では、

  1. 包摂的かつ公正な質の高い学びに向けた教育協力
  2. 産業・科学技術人材育成と持続可能な社会経済開発の基礎づくりのための教育協力
  3. 国際的・地域的な教育協力ネットワークの構築と拡大

を基本原則とし、途上国の SDGs 達成を支援していくことを定めた。

例えば、産業人材育成と日本企業のアフリカビジネスをサポートする「水先案内人」の育成を目的とする「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ」(ABE イニシアティブ)を通じ、アフリカの若者を日本に招き、日本の大学での修士号取得と日本企業などでのインターンシップの機会を提供し、2014 年度から 2019 年度までに 1,285 名(うち女性 329 名)の研修員を受け入れ、既に計 1,028 名がプログラムを修了している。更に、日本と ASEAN の頭脳を集結し、科学技術イノベーションの分野で両者の更なる発展を支援すべく、2003 年から工学系分野を対象に日本の 14 の大学と ASEAN の 26 の工学系トップ大学をネットワークで繋ぐ「AUN/SEED-Net」を構築している。また、JICA は、政府が推進する「明治 150 年」関連施策の一つとして 2018 年に JICA 開発大学院連携構想を発足させ、途上国からの優れた人材の受入れを通じた国内の地域活性化や大学教育の活性化、日本でのグローバル人材育成等を進めている。

(障害者・紛争被害者支援)

国際協力事業では、障害者の参加を促進し、途上国における障害者の自立生活促進を支援している。また、障害者・紛争被害者の自立生活支援に取り組む日本の NGO も多く、第4回ジャパン SDGs アワードでは、ラオスと日本の障害事業所が協力し、お土産品を製造、地元企業に納品することで、国を超えて障害者が支え合う仕組みを確立した「特定非営利活動法人 Support for Woman’s Happiness」と、元子供兵の社会復帰支援や、性的暴力を含む紛争被害者の生計向上支援を実施する「特定非営利活動法人テラ・ルネッサンス」に SDGs 推進本部副本部長賞が授与された。

(スポーツの価値の拡大)

東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け、日本は「スポーツ・フォー・トゥモロー」プログラムを推進しており、スポーツを通じて、インクルーシブな社会の構築支援や、紛争、災害後のケアなどの国際協力に取り組んでいる(2020 年9月末までに 204 か国・地域の約 1,200 万人が裨益)。また、今後、東京オリンピック・パラリンピック競技大会やワールドマスターズゲームズ 2021 関西等、大規模国際競技大会の連続開催の機会を活用し、SDGs の認知度を高め、スポーツが多様な社会課題の解決に貢献しうることについて啓発活動を行う予定である。

優先課題2 健康・長寿の達成

新型コロナウイルス感染症の拡大により、保健・医療システムの重要性が再確認された。感染症は一国だけの問題ではなく、国際社会が一丸となって取り組む必要がある。日本は従前から、人間の安全保障の理念の下、保健・医療分野での取組を重視してきたが、次なる危機にも備えるため、国際保健課題で中核的役割を担うWHOの検証・改革や機能強化、途上国の保健・医療システムの強化が不可欠である。

日本国内では、50年以上にわたる国民皆保険制度等を通じて、世界一の健康長寿社会を実現した実績を有している。日本の健康寿命は男性72.14歳、女性74.79歳(2016年)と世界的に見て高い水準にあるが、健康寿命と平均寿命に乖離が大きいことが課題として指摘されている。介護する負担の軽減と、高齢者本人の健康な暮らしのため、健康寿命の延伸は重要である。

国内の課題と取組

日本における医療及び介護の提供体制は、世界に冠たる国民皆保険を実現した医療保険制度及び創設から21年目を迎え社会に定着した介護保険制度の下で、着実に整備されてきた。しかし、高齢化の進展に伴う高齢者の慢性疾患の罹患率の増加により疾病構造が変化し、医療ニーズについては、病気と共存しながら、生活の質(QOL)の維持・向上を図っていく必要性が高まってきている。一方で、介護ニーズについても、医療ニーズを併せ持つ重度の要介護者や認知症高齢者が増加するなど、医療及び介護の連携の必要性はこれまで以上に高まってきている。特に、認知症への対応については、地域ごとに、認知症の状態に応じた適切なサービス提供の流れを確立するとともに、早期からの適切な診断や対応等を行うことが求められている。また、人口構造が変化していく中で、医療保険制度及び介護保険制度については、給付と負担のバランスを図りつつ、両制度の持続可能性を確保していくことが重要である。

こうした中で、医療及び介護の提供体制については、サービスを利用する市民の視点に立って、ニーズに見合ったサービスが切れ目なく、かつ、効率的に提供されているかどうかという観点から再点検していく必要がある。また、高齢化が急速に進む都市部や人口が減少する過疎地等といったそれぞれの地域の高齢化の実情に応じて、安心して暮らせる住まいの確保や自立を支える生活支援、疾病予防・介護予防等との統合も必要である。

政府としては、このように、利用者の視点に立って切れ目のない医療及び介護の提供体制を構築し、国民一人ひとりの自立と尊厳を支えるケアを将来にわたって持続的に実現していくことを目指して取組を進めている。企業等が従業員の健康保持・増進に戦略的に取り組む「健康経営」を推進することも重要であり、健康経営に取り組む企業等がより評価される環境の整備等を行うため、経済産業省では健康経営に関する顕彰制度(健康経営銘柄、健康経営優良法人)を実施している。

また、栄養バランスに配慮した食生活の実践等により生涯を通じた心身の健康を支えることが重要であり、政府は2021年3月に、持続可能な食を支える食育の推進を重点事項とする「第4次食育推進基本計画」を作成した。これに基づき、国民の健全な食生活の実現と、環境や食文化を意識した持続可能な社会の実現のために、SDGsの考え方を踏まえながら、多様な関係者が相互の意見を深め、連携・協働し、国民運動として食育を推進することとしている。

国際協力

日本は従前から、人間の安全保障に直結する保健医療分野での取組を重視している。2015年2月の「開発協力大綱」の閣議決定を受け、同年9月、政府は、保健分野の課題別政策として「平和と健康のための基本方針」を定めた。この方針は、日本の知見、技術、医療機器、サービスなどを活用しつつ、①すべての人への生涯を通じたUHCを目指していくこと、②エボラ出血熱などの公衆衛生危機に対応する体制を構築することを示しており、これらの取組は、SDGsに掲げられた保健分野の課題解決を追求し、被援助国が自ら保健課題を検討・解決していく上でも重要なものである。

また、2014年7月に閣議決定された「健康・医療戦略」において、健康・医療に関する国際展開の促進が柱の一つとして掲げられ、2016年7月に「アジア健康構想に向けた基本方針」、2019年6月には「アフリカ健康構想に向けた基本方針」が決定された。

政府は、G7、アフリカ開発会議(TICAD)、国連総会などの国際的な議論の場においても、「日本ブランド」としてのUHCの達成に向けた取組を積極的に主導してきており、2017年12月には「UHC FORUM 2017」を、WHOや世界銀行、国連児童基金(UNICEF)、UHC2030と共催し、2030年までにUHCを達成すべく取組を加速させるためのコミットメントとして「UHC東京宣言」を採択した。

日本が議長国として開催した2019年6月のG20大阪サミットでは、UHCの達成、健康で活力ある高齢化、薬剤耐性(AMR)を含む健康危機について、課題解決に向けた具体的な施策を議論した。また、大阪サミット開催に合わせて、G20で初めてとなるG20財務大臣・保健大臣合同セッションを開催し、経済発展の早い段階でUHCに取り組むことが重要であり、そのためには財務当局と保健当局が連携して保健財政制度を設計する取組が重要であること等について議論した。同年10月には「G20岡山保健大臣会合」を開催し、UHCの達成に必要な政策の方向性を盛り込んだ大臣宣言を採択した。

2019年8月の第7回アフリカ開発会議(TICAD7)では、TICAD VIやG20大阪サミットの成果も踏まえ、「横浜宣言2019」を採択し、「横浜行動計画2019」をその付属文書として発表した。その中で、アフリカにおいてUHCの達成にむけた取組を更に推進することが確認された。また、同会議においては、保健・財政当局の連携強化を通じた持続可能な保健財政等の保健システム強化、能力開発の強化、感染症・非感染性疾患対策、母子保健、栄養改善および水・衛生、民間セクターとの連携促進などについて議論され、アフリカにおけるUHCの達成にむけた取組を一層推進することが確認された。

また、日本は、ヘルスケア産業の国際展開を通じた新興国の医療向上への貢献も行っている。具体的には、持続可能な形で、新興国等における医療・介護・健康課題の解決に貢献するため、政府は日本の病院や企業等が、海外において医療・介護・健康サービス等の事業を行うための事業化を支援している。2010~2020年までに、約165件の新興国・途上国への海外展開実証事業の支援を実施した。

新型コロナウイルス感染拡大に関し、日本は、国民皆保険制度等、これまで築き上げてきた保健システムにより、新型コロナウイルス感染症による死亡率を世界でも低水準に抑えてきている。この経験を活かし、人間の安全保障への脅威である新型コロナウイルス感染症との世界的な闘いにおいて、「誰の健康も取り残さない」という理念のもと、UHCの達成に向けて国際社会と協力を進めている。

この考え方に基づき、日本は、新型コロナウイルス感染症の危機に際し、1,700億円(約15.4億ドル)を超える支援を、2020年2月からの数か月間にかつてないスピードで実施した。日本は、

  1. 現下の感染症危機を克服し、
  2. 将来の健康危機への備えにも資する保健システムを強化し、
  3. より幅広い分野での健康安全保障

を確実にするための国際的な環境を引き続き整備する。 また、JICAでは、新型コロナウイルス感染拡大が女性や、開発協力を実施する際のアクションにかかるガイダンスノート「ジェンダー視点に立ったCOVID-19対策の推進(2020年6月)」を作成し、新型コロナウイルス感染症の拡大において女性や少女を取り残さない事業を進めている。

(母子健康手帳の普及)

母子健康手帳とは、妊娠中及び出産時の母子の状態、子供の成⾧・健康状況を、継続的に記録するための冊子で、日本では、1948 年にそれまで妊産婦自身の健康管理に使われていた妊産婦手帳の対象を乳幼児まで拡大した母子健康手帳の活用が始まり、今では母子の死亡が最も少ない国の一つになっている。母子健康手帳は、母親や子供が必要なケアを継続的に受けられるようにするための重要なツールの一つであると共に、家庭で参照できる育児書としての特徴もある。自らの経験を踏まえ、日本は、世界の母子の命と健康を守るため、開発途上国における母子健康手帳の導入・普及を支援しており、毎年、世界で生まれる新生児とその母親のうち7組に1組が母子健康手帳を使うようになっている(2019 年ユニセフ世界こども白書における年間世界出生数及び母子健康手帳の年間発行数より推計)。

優先課題3 成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション

新型コロナウイルス感染症の拡大前から各国がデジタル分野等で激しい国際競争を展開していたが、今般のグローバルな規模での感染症拡大は、パラダイムシフトとも言うべき大きな変化を世界に引き起こしている。

日本は、従前からデジタル化を原動力とした Society 5.0 実現の取組を推進してきていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、行政分野を中心に社会実装が大きく遅れ活用が進んでおらず、先行諸国の後塵を拝していることが明白となった。デジタル化、そして Society 5.0 の実現は、経済社会の構造改革そのものであり、制度・政策の在り方や行政を含む組織の在り方なども併せて変革していく、社会全体の変容が不可欠である。特に、この分野の人材の獲得競争は世界的に激化しており、性別を問わず人材育成が急務である。STEM 分野やデジタル・テクノロジー分野でのジェンダー・ギャップを縮小させ、経済発展の原動力たるイノベーション領域で女性が公平に評価され、活躍できるような環境整備が求められる。また、デジタル化社会到来の中で、デジタル・デバイドを防ぐことが肝要であり、教育や地域社会での取組が求められる。さらに、AI の情報リソースとなる蓄積された過去のデータやアルゴリズムに含まれるジェンダー・バイアスを認識する必要がある。今般の感染症拡大の局面で現れた国民意識・行動の変化などの新たな動きを後戻りさせず社会変革の契機と捉え、少子高齢化や付加価値生産性の低さ、東京一極集中などの積年の課題を解決するとともに、通常であれば 10 年かかる変革を、将来を先取りする形で一気に進め、「新たな日常」を実現することが重要である。

国内の課題と取組(スマートシティの推進)

AI、IoT 等の新技術やビッグデータといった先進的技術の活用が進められている中、日本は Society5.0 の実現を目指し、先進的技術や新たなモビリティサービスである MaaS (Mobility as a Service)、官民データ等をまちづくりに取り入れ、市民生活・都市活動や都市インフラの管理・活用の高度化・効率化や施設立地の最適化、データ連携基盤の構築など都市のマネジメントを最適化し都市・地域課題の解決を図る「スマートシティ」の取組を推進している。これにより、住民満足度の向上、産業の活性化、グリーン化・資源利用の最適化・自然との共生の実現など社会的価値、経済的価値、環境的価値等を高める多様で持続可能な都市や地域の形成を進めている。

2017 年度から、総務省は都市 OS の整備に対する補助事業を通じて、データ利活用型スマートシティの構築を進めている。2019 年度から、国土交通省は先駆的な取組を行っているスマートシティモデル事業の選定・支援を実施しており、モデル事業において得られた知見や経験等の横展開にも取り組んでいる。また、同年度から、MaaS の実証実験のほか、AI オンデマンド交通の導入やキャッシュレス決済の導入、交通事業者におけるデータ化といった基盤整備へ支援を実施している。各地のスマートシティの実現の実証・実装に向けた取組を支援する予算として、科学技術関係経費の総額の減少に関わらず、必要額を確保するとともに、関係府省が連携・協調して支援を実施している。加えて、内閣府ではスマートシティの標準的な設計の考え方であるリファレンス・アーキテクチャを構築し、各地のスマートシティ開発に活用することで、相互接続性・拡張性のあるスマートシティの展開を進めている。これらの取組から得られた知見をもとに内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省共同で 2021 年4月に「スマートシティ・ガイドブック」を作成し、全国におけるスマートシティの構築に役立てている。

また、2020 年に策定された「インフラシステム海外展開戦略 2025」においても、「質高インフラと現地との共創の推進」は重要施策の1つとして取り上げられおり、スマートシティ、MaaS 等関連事業の海外への情報発信・展開に取り組んでいる。特に ASEAN においては、2020 年 12 月 16 日に開催した第2回日 ASEAN スマートシティネットワークハイレベル会合において、日本が ASEAN 各国に対する支援パッケージ「Smart JAMP(Smart City supported by Japan ASEAN Mutual Partnership:日 ASEAN 相互協力による海外スマートシティ支援策)」を提案し、ASEAN 10 カ国 26 都市から歓迎された。

(地方創生 SDGs の推進)

SDGs を原動力とした地方創生を推進するため、前述のとおり、地方創生に係る地方公共団体における優れた SDGs の取組を「SDGs 未来都市」として選定し、内閣府及び有識者・自治体 SDGs 関係省庁タスクフォースによる助言等を行いながら、各都市の計画策定や進捗管理への総合的な支援をしている。SDGs 未来都市に選定された地方自治体の中で、特に優れた先導的な取組である「自治体 SDGs モデル事業」に対しては資金的な支援も行いながら、地方創生に向けた SDGs モデル事例を形成し、その成功事例の普及展開・国内外への情報発信を継続している。また、地域課題の解決に向けて、民間企業等の参画を促進し、官民連携を推進するため、「地方創生 SDGs 官民連携プラットフォーム」を立ち上げ、マッチング事業や分科会の活動等を実施している。更に、「地方創生 SDGs 金融」を通じた自律的好循環を形成するため、地方公共団体が地域課題の解決等に取り組む地域事業者等の取組を可視化する登録・認証等制度展開のため「地方創生 SDGs 登録・認証等ガイドライン」を 2020 年 10 月にとりまとめ、公表した。

新型コロナウイルス感染症の拡大により地域経済・生活に甚大な影響が生じていることを踏まえ、引き続き、地方創生 SDGs の理念に沿って「新たな日常」に対応した経済活動の立て直しや危機に強い経済構造の構築等、持続可能なまちづくりに向けた地方公共団体の取組を支援していく。

(持続可能な観光)

「住んでよし、訪れてよし」の観光地域づくりを実現するためには持続可能な観光が重要であり、国際機関等と連携してシンポジウムを開催し、新型コロナウイルス感染症による影響からの回復等も含めた持続可能な観光地マネジメントの取組について情報共有を行い、持続可能な観光の推進を促している。また、観光庁長官をトップとして発足した「持続可能な観光推進本部」において 2019 年に報告書「持続可能な観光先進国に向けて」を公表。その後、効果的な観光地マネジメントに資する国際基準に準拠した「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」の普及、また当ガイドラインの効果的運用を目指したモデル地区の選定並びに支援、モデル事業等も活用した混雑・マナー違反対策等の促進により、持続可能な観光の実現に向けた取組を強化している。また、国立公園の保護と利用の好循環による地域活性化を目指した「国立公園満喫プロジェクト」を展開し、自然環境の保全を図りつつ、自然の魅力そのものを活かした誘客、受入環境整備、公園利用者による保全協力金などが地域の自然環境の保全に活かされる仕組みの構築、脱炭素、プラスチックゴミ削減等を含めた持続可能な観光地づくり等を推進している。

さらに、感染症を含む観光危機への対応を強化するため、自治体・観光事業者等が観光危機管理を導入するための手引書等を作成している。

宿泊施設及び観光スポットには、全ての訪日外国人旅行者がストレスフリーで快適に旅行できる環境を整備するため、宿泊施設が実施する客室や共用部のバリアフリー化改修等の取組を支援するとともに、観光地を代表する観光スポットにおけるバリアフリー化を推進している。また、誰もが安心して旅行を楽しむことができる環境を整備するため、地方自治体、NPO 等の幅広い関係者の協力の下、地域の受入体制を強化するほか、ユニバーサルツーリズムの普及・促進を図っている。

(原子力災害からの創造的復興とイノベーションの創出)

原子力災害によって甚大な被害を受けた福島において、「創造的復興の中核拠点」として、国内外の叡智を結集して、新産業の創出等、福島の創造的復興に不可欠な研究開発及び人材育成を行い、発災国の国際的責務としてその経験・成果等を世界に発信・共有するとともに、そこから得られる知見を基に、日本の産業競争力の強化や、日本・世界に共通する課題解決に資するイノベーションの創出を目指す国際教育研究拠点を新設する予定。

具体的には、基礎研究も対象としつつ、これまでの既存施設による分野縦割りの研究では解決が困難であった課題に対して、新たに、技術・手法等を学際的に融合させて取り組み、産学官一体の取組を通じて研究成果の社会実装・産業化を実現することにより、産業構造・社会システムの転換につなげる。また、大学院生等に対する人材育成や、小中高校生等や地元企業の人材育成を推進するとともに、他の研究機関が有する世界最先端の人材を活用し、研究開発・実証を担う人材を集積・育成する。2021年度中に新拠点に関する基本構想を策定する予定である。

国際協力

(科学技術イノベーションの国際展開)

科学技術イノベーションは、経済・社会の発展を支え、安全・安心の確保においても重要な役割を果たす、平和と繁栄の基盤的要素である。そのため、2021 年3月に策定した「第6期科学技術・イノベーション基本計画」においては、地球規模課題の解決に対し、日本のポテンシャルを活かして国際連携・協力に積極的に関与することが重要であるとして、①地球規模の気候変動への対応及び②生物多様性への対応を重要政策課題として設定し、研究開発の重点化を行うことを定めた。日本はその優れた科学技術を活かし、「科学技術外交」の推進を通じて、日本と世界の科学技術の発展、各国との関係増進、国際社会の平和と安定及び地球規模課題の解決に貢献している。

(途上国における栄養不良の改善等に資する国際共同研究)

アフリカ等の開発途上地域において、栄養不良の改善や所得の向上が課題となっている。そのため、国際農業研究協議グループ(CGIAR)と共同研究を実施し、マメ類及びイモ類の高栄養化・高付加価値化や、市場ニーズに適合した良食味・高栄養なイネ系統の開発を実施しており、このような主要作物の育種基盤の整備と栄養強化新品種等の開発を通じて、開発途上地域の食料・農林水産業に貢献することとしている。

【事例】持続可能な開発目標達成のための科学技術イノベーション2019 年6月の G20 大阪サミットでは、科学技術イノベーション(STI)の重要性、並びに STI の潜在力を活用する上で、政府、学術界、研究機関、市民社会、民間セクター及び国際機関を含む様々な利害関係者の効果的な関与が不可欠であることが確認され、同サミットの成果文書である「大阪首脳宣言」の附属文書として、G20 開発作業部会で作成された「持続可能な開発目標達成のための(STI for SDGs)ロードマップ策定の基本的考え方」が承認された。内閣府では、途上国のニーズと日本の科学技術シーズとのマッチングを図る「STI for SDGs プラットフォーム」の調査・分析を実施している。この実証試験として、2020 年度はケニアを対象国として、農業分野及び医療分野における、両国のステークホルダーによる会合を実施した。また、JICA では 2019 年度にケニア、ナイジェリア、ウガンダ及びルワンダ、2020 年度にセネガル、ガーナ、ザンビア、タンザニア、モザンビーク、ベナンを対象に、STI を用いて社会開発課題を解決するオープンイノベーションに取り組んでおり、新型コロナウイルス感染症の拡大における渡航制限下においても、スマートグラスなど遠隔コミュニケーション技術を活用した、効果的な技術指導の実証実験等を推進している

【事例】地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)日本の科学技術とODAとの連携により、開発途上国のニーズに基づき、環境・エネルギー分野、防災分野、生物資源分野、感染症分野における地球規模課題の解決と将来的な社会実装につながる国際共同研究を推進するとともに、SDGs 達成に向け研究成果の社会実装を加速させるべく、相手国政府の協力を得て国内外のステークホルダーとの連携・協働に繋げる橋渡しを実施している。令和3年4月までに52か国で156課題を実施し、SDGs達成に向け研究成果の社会実装の加速に貢献している。

優先課題4 持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備

日本は、過去の幾多の災害の経験を踏まえ、国内では、「強さ」と「しなやかさ」を持った安全・安心な国土・地域・経済社会の構築に向けた「国土強靱化」(ナショナル・レジリエンス)を推進している。また、国際協力においても、質の高いインフラの整備は、そこに暮らす人々の生活の改善につながるとともに、国内・域内の経済活動を刺激するものであり、各国の高い成長を支える重要な取組の一つであるとの認識の下、それぞれの国・地域の経済・開発戦略に沿った形で、官民一体となって質の高い成長につながるような質の高いインフラの整備を積極的に支援している。

国内の課題と取組

(持続可能で強靭なまちづくり)

日本は、その国土の地理的・地形的・気象的な特性ゆえに、数多くの災害に繰り返しさいなまれてきた。そして、規模の大きな災害であればあるほど、まさに「忘れた頃」に訪れ、その都度、多くの尊い人命を失い、莫大な経済的・社会的・文化的損失を被り続けてきた。しかし、災害は、それを迎え撃つ社会の在り方によって被害の状況が大きく異なる。大地震等の発生の度に甚大な被害を受け、その都度、長期間をかけて復旧復興を図る、といった「事後対策」の繰り返しを避け、今一度、大規模自然災害等の様々な危機を直視して、平時から大規模自然災害等に対する備えを行うことが重要である。

「仙台防災枠組2015-2030」では、大規模災害の発生は、とりわけ、女性や子供、脆弱な状況にある人々がより多くの影響を受けることが指摘されており、女性と男性が災害から受ける影響の違いなどに十分に配慮された災害対応が行われることが必要である。非常時には、固定的な性別役割分担意識を反映して、増大する家事・育児・介護等の女性への集中や、配偶者等からの暴力や性被害・性暴力が生じるといったのジェンダー課題が拡大・強化されることから、平常時からあらゆる施策の中に、ジェンダー平等の視点を含めることが肝要である。

東日本大震災を始めとする過去の大規模自然災害から得られた教訓を踏まえ、2014年に定められた「国土強靱化基本計画」では、

  1. 人命の保護が最大限図られること、
  2. 国家及び社会の重要な機能が致命的な障害を受けず維持されること、
  3. 国民の財産及び公共施設に係る被害の最小化、
  4. 迅速な復旧復興

を基本目標と定め、「強さ」と「しなやかさ」を持った安全・安心な国土・地域・経済社会の構築に向けた「国土強靱化」(ナショナル・レジリエンス)を推進することとした。

気候変動の影響による災害の頻発化・激甚化に対応するため、抜本的な治水対策として、集水域と河川区域のみならず、氾濫域も含めて一つの流域として捉え、地域の特性に応じ、ハード・ソフトの両面からあらゆる関係者が流域全体で行う持続可能な「流域治水」を推進している。

災害脆弱性とインフラ老朽化を克服した安全・安心な社会、人・モノ・情報が行き交う活力ある社会を実現するため、人・地域をつなぎ、地域・まちを創る道路ネットワークを構築する「安全(Safe)、スマート(Smart)、持続可能(Sustainable)な道路交通システムの構築」に関する施策を推進している。

また、社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある地域づくり等を推進することが重要であり、2020年3月に設立した「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」を通じ、多様な主体の知見や技術を活用して、グリーンインフラの社会的な普及、技術に関する調査・研究、資金調達手法の検討等を進めるとともに、地方公共団体や民間事業者等への支援を充実させることでグリーンインフラの社会実装を加速している。

各種測量や位置情報サービスの正確性・効率性の確保や持続可能で強靭な国土形成のためには、地球上のどこでも正確な位置情報を与える共通の基盤である、地球の正確な形とその変化を表した地球規模の測地基準座標系(GGRF)の維持・普及が有益である。そのため、日本は国連総会で採択された GGRF に関する決議の共同提案国として、以下の取組を推進している。

  • GGRF の構築や維持管理に関する途上国への技術移転
  • 地球規模の地理空間情報に関する国連専門家委員会(UN-GGIM)の測地準委員会への参画
  • GGRF 構築・維持に必要な国際的に連携した全球統合測地観測等による GGRF の普及支援

【事例】熊本県熊本市の取組2016年に発生した熊本地震の経験と教訓から、包摂的な避難所運営組織の設置など地域を単位とした防災力(ソフト面)の向上、持続可能で利便性の高い公共交通網の形成と地下水や再生可能エネルギーなどが有効活用できる都市基盤(ハード面)の強靭化を目指すとともに、地域経済の活性化に取り組み、復興を加速化させている。これまでに、電気自動車の電力供給に係る官民連携協定の締結や、地域エネルギーの地産地消による経済の域内循環を行っている。

国際協力

(質の高いインフラ)

開発途上国が自立的発展に向けた経済成長を実現するには、単なる量的な経済成長ではなく、成長の果実が社会全体に行き渡り、誰一人取り残さない「包摂的」なものであり、社会や環境と調和しながら継続していくことができる「持続可能」なものであり、経済危機や自然災害などの様々なショックに対して「強靱性」を兼ね備えた「質の高い成長」である必要がある。これらは、日本が戦後の歩みの中で実現に努めてきた課題でもあり、日本は、自らの経験や知見、教訓及び技術を活かし、途上国が「質の高い成長」を実現できるよう支援を行っている。

「質の高い成長」のためには、開発途上国の発展の基盤となるインフラ(経済社会基盤)の整備が重要である。また、インフラ投資を行う上では、インフラ自体が使いやすく、安全で、災害にも強い、「質」の高いものであるだけでなく、インフラ計画が相手国のニーズを踏まえたものであることが重要である。日本は、開発途上国の経済・開発戦略に沿った形で、その国や地域の質の高い成長につながるような質の高いインフラを整備し、これを管理、運営するための人材を育成している。技術移転や雇用創出を含め、開発途上国の「質の高い成長」に真に役立つインフラ整備を進めることは、日本の強みでもある。例えば、ASEANにおいて持続可能な開発を実現するためには、ASEAN地域内の膨大なインフラ需要に応えつつ、経済格差を是正し、地域内の安定的な発展を実現することが重要である。そこで日本は、2019 年11 月のASEAN 関連首脳会議に際して、「対ASEAN海外投融資イニシアティブ」を発表し、質の高いインフラ、金融アクセス・女性支援、グリーン投資の分野について、3年間(2020 年~2022 年)で官民合わせて30 億ドル規模の資金の動員を目指すべく、12 億ドルの出融資を提供する用意がある旨を表明した。

こうした「質の高い成長」に役立つインフラ整備への投資、すなわち「質の高いインフラ投資」の基本的な要素について認識を共有する第一歩となったのが、2016年のG7伊勢志摩サミットで合意された「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」である。2019年6月に開催されたG20大阪サミットでは、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」が、今後の質の高いインフラ投資に関する共通の戦略的方向性と志を示すものとして、新興ドナーを含むG20首脳間で承認された。政府は今後も、世界の成長や貧困、格差、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントなどの開発課題の解決のため、環境社会配慮の統合等を含む「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を国際社会全体に普及させ、アジアを含む世界の国々や経済協力開発機構(OECD)・世界銀行等の国際機関と連携し、「質の高いインフラ投資」の国際スタンダード化の推進や、実施に向けた取組を進めていく考えである。

(道路交通安全)

近年世界で深刻化する交通事故状況を踏まえ、開発途上国において道路交通安全に関する支援を展開している。ハード面では、資金協力を通じた道路交通安全を考慮した道路施設(歩道や標識、ガードレール等の設置)や交通管制システムの整備、ソフト面では技術協力プロジェクトや課題別研修等を通じて、交通安全教育や交通規制や取締り等に関する能力強化等を実施してきた。また、近年では民間企業の提案による道路交通安全に貢献する事業・調査も展開している。

(都市公共交通)

開発途上国において、信頼性・安全性・環境にやさしい公共交通(都市鉄道及びバス)の推進を図るため、都市鉄道の建設に加え、計画立案や公共交通政策改善、鉄道・バスの運行・維持管理人材育成、安全マネジメント、ICカード導入等の支援を行ってきた。

【事例】インドでの協力事例インドのデリーでは、経済成長により都市化が進み、道路の渋滞と、排気ガスによる大気汚染が深刻であることから、1995 年の計画段階から「デリーメトロ」(地下鉄)の整備に協力し、デリーメトロは 2002 年に運行を開始した。現在は市民の足として定着(毎日 200万人が利用)し、渋滞・大気汚染軽減に貢献している。また、優れた省エネ・安全対策技術、明るい車内や女性専用車両の導入、車椅子でも乗車可能な駅構内の設計など、日本のノウハウが採用されている。この取組は、ジェンダー平等等にも貢献している。デリーメトロ公社は女性が働きやすい職場環境にも力を入れている。女性職員向けの寮を始め、職員用保育所や男女別休憩所の設置、産休育休制度の整備を推進している。また、全職員を対象にしたジェンダー研修の受講義務化やセクシュアルハラスメント対策委員会の設置も進めた。女性の駅員、運転手などが69活躍する姿は職業ジェンダーへの固定観念を打破し、人々の認識を変革する契機にもなっている。結果として、インドで女性の社会進出に貢献している。

【事例】ASEAN との連携日本とASEANは「インド太平洋に関するASEAN・アウトルック(AOIP)」の主要分野の1つであるSDGsに関して具体的な協力案件を進めることを確認している。日本は、「ASEAN 連結性マスタープラン(MPAC)2025」及び「ACMECS マスタープラン」に基づき、ASEAN 域内の格差を是正し、ASEAN 共同体の統合深化を後押しするため、ASEAN による連結性強化の取組を一貫して支援している。2020 年11月の日ASEAN 首脳会議に際して、現在実施中の計約2兆円の質の高いインフラプロジェクトを中心とする「日ASEAN 連結性イニシアティブ」を立ち上げた。インフラ整備を通じて陸海空の回廊による連結性を強化し、今後3年間で連結性強化に資する1000 人の人材育成を行うことを表明した。

また、JAIF(日ASEAN統合基金)の支援のもと、SDGsと都市のアクションの整合性をとることで、ASEANの都市が「ASEANビジョン2020」に沿った、包摂的で持続可能な、回復力のある、ダイナミックな発展を達成できるよう支援することを目的とし、「ASEAN SDGsフロントランナーシティ都市プログラム」を実施した。2020年12月までに、シンガポールとブルネイを除くASEAN8カ国において、12のフロントランナー候補都市と12のモデル都市、合計24の参加都市を支援した。

(水インフラ)

海外水インフラの整備拡充のため、事業実施可能性調査(F/S)、官民ミッション、相手国との政策対話、要人招へい事業等を継続的に実施し、日本の質の高い水インフラの関連設備の導入や日本企業からの事業投資拡大を支援している。

また、2019年6月から、海外水ビジネスに関与する企業や業界団体、自治体等で構成する官民プラットフォームを支援し、ミッション団の派遣や、二国間のビジネスセミナー、マッチング等を実施し、アジア各国の水事情の改善に寄与している。

更に、2021年3月に水インフラの海外展開に関する新たな方向性等をとりまとめた「水ビジネス海外展開施策の10年の振り返りと今後の展開の方向性に関する調査報告書」を公表した。

(防災)

毎年世界で2億人が被災し(犠牲者の9割が開発途上国の市民)、自然災害による経済的損失は、国連防災機関の試算によれば、年平均約1,400億ドルに及ぶ。防災の取組は、貧困撲滅と持続可能な開発の実現にとって不可欠である。

日本は、幾多の災害の経験により蓄積された防災・減災に関する知見を活かし、防災の様々な分野で国際協力を積極的に推進している。2015年3月に第3回国連防災世界会議を仙台で開催し、同年から15年間の国際社会の防災分野の取組を規定する「仙台防災枠組」の採択を主導した。また、日本独自の貢献として「仙台防災協力イニシアティブ」を発表し、2015年から2018年までの4年間で計40億ドルの協力の実施や計4万人の人材育成を行うという目標を発表した。これが達成されたことを踏まえ、2019年6月に「仙台防災協力イニシアティブ・フェーズ2」を発表し、2019年から2022年の間に洪水対策等を通じ少なくとも500万人に対する支援を実施する予定である。

更に、日本が提案し2015年12月に第70回国連総会において全会一致で制定された「世界津波の日(11月5日)」に合わせ、日本では2016年以降、世界各国の高校生を招へいし、日本の津波の歴史や、震災復興、南海トラフ地震への備え等の実習を通じ、今後の課題や自国での展開等の提案を行う「世界津波の日 高校生サミット」を毎年実施している。

2019年8月には、官民一体となって日本の防災技術の海外展開を促進し、世界各国の防災能力向上を主導するため、「防災技術の海外展開に向けた官民連絡会(Japan International Public-Private Association for Disaster Risk Reduction:JIPAD)」を設立した。JIPADは、2019年10月から2020年2月にかけて、海外各国に対し、計14回の「官民防災セミナー」を開催し、日本の防災政策、技術やノウハウを一体的に紹介するとともに、官民ネットワークの構築や防災協力関係の強化を図っている。2020年11月末現在において、JIPADの会員企業・団体数は196にのぼっており、防災技術の海外展開に関心のある様々な分野の企業・団体が会員となっている。

2016年12月の国連決議(A/RES/71/222)、「国際行動の10年『持続可能な開発のための水』、2018-2028」では、SDGsの水関連の目標の実現の中でも防災の重要性が強調されており、日本は国連及びその他の国際機関とも連携した取組に継続的かつ積極的に参画し、開発政策に防災の観点を取り入れる「防災の主流化」を主導している。また気候変動の影響は水関連災害の形で現れることが多いことから、気候変動への適応として防災の取組を強調している。例えば、2019年6月に国連本部で開催された「第4回 国連 水と災害に関する特別会合」では、防災への事前投資の重要性や日本が過去の災害から得た教訓を説明し、水と災害に関する世界的な問題の解決に貢献する日本の取組を発信した。2020年7月のHLPFサイドイベントでは、流域のあらゆる関係者が協働し治水を進める「流域治水」等を通じ、SDGs達成に貢献していくことを発信した他、2021年1月のオランダ気候適応サミットでも気候変動による降雨量の増加などを考慮した抜本的な水関連災害対策として「流域治水」の推進、その前提として防災・減災があらゆる開発政策の主流となり、流域計画において気候変動の影響を考慮して安全・安心な社会を構築していくことの重要性を発信した。更に2021年3月の国連総会議長主催の「SDGs水関連目標実施に関する国連ハイレベル会議」では、水・衛生関連の目標であるSDG6のみならず、災害による被害の削減を目指すSDG ターゲット11.5のフォローアップの重要性を強調し、必要な進捗管理に貢献していくことを発信するなど、これらの取組を継続・深化し、防災分野における日本の取組や知見を国際社会で共有する取組を推進している。

その他、アジア防災センターと連携しながら、同センター加盟国(31か国)に対する災害情報の共有、人材育成及び「アジア防災会議」開催等の活動を促進しており、今後も災害で得た経験と教訓を世界と共有し、各国の政策に防災の観点を導入する「防災の主流化」を引き続き推進する。

優先課題5 省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会

日本は、持続可能な社会の実現に向けて、2050 年までに温室効果ガス排出を実質ゼロとする「2050 年カーボンニュートラル」を宣言し、実現に向けた様々な取組を促進している。また、日本は、世界の脱炭素化にも貢献するため、途上国における省・再生可能エネルギーに係る取組を積極的に支援しているほか、防災等、気候変動への適応策に係る支援にも取り組んでいる。循環型社会の構築にについては、循環型社会形成推進基本計画に基づき日本国内における3R(廃棄物の発生抑制(リデュース Reduce)、再使用(リユース Reuse)、再生利用(リサイクル Recycle))の取組を推進している。また、国際協力として、質の高いインフラの整備支援に加えて、開発途上国に対する3R及び廃棄物管理の知見共有等を通じて各国での循環型社会の構築を支援している。

国内の課題と取組

(2050 年カーボンニュートラルの実現)

2020年10月、日本は「2050 年カーボンニュートラル」を宣言した。温暖化への対応を、経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも、成長の機会と捉える時代に突入した。従来の発想を転換し、積極的に対策を行うことが、産業構造や社会経済の変革をもたらし、次なる大きな成長につながっていく。こうした「経済と環境の好循環」を作っていく産業政策が必要である。産業界には、これまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えていく必要がある企業が数多く存在し、実際に企業の研究開発方針や経営方針の転換といった動きも始まっている。この変革は、新しい時代をリードしていくチャンスでもある。政府としては、大胆な投資を行い、イノベーションを起こすといった民間企業の前向きな挑戦を支援するため、高い目標を掲げて、可能な限り具体的な見通しを提示するとともに、企業の取組への支援策を推進するべく、2020年12月に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定し、2021年6月には更なる具体化を行った。

さらに、2021年4月に行われた地球温暖化推進本部、気候サミットにおいて、菅総理は、「2050年カーボンニュートラルと整合的で、野心的な目標として、我が国は、2030年度において、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指します。さらに、50%の高みに向け、挑戦を続けてまいります。」と表明した。

(改正地球温暖化対策推進法)

2021年5月、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(改正温対法)が成立した。改正のポイントは、

  1. 地球温暖化対策を推進する上での基本理念を新設し、我が国における2050年までの脱炭素社会の実現を明記するとともに、関係者を規定する条文の先頭に「国民」を位置づける前例のない基本理念とすること。
  2. 地域の再エネを活用し、地域の脱炭素化や地域の課題の解決に貢献する事業を市町村が認定する制度を創設し、併せて、関係する行政手続のワンストップ化などの特例を導入することにより、地域における円滑な合意形成を図り、地域に貢献する再エネの導入を促進すること。
  3. 企業等の温室効果ガス排出量の算定報告公表制度について、電子システムによる報告を原則化し、開示請求の手続なしで公表される仕組みとすること

で、本制度のデジタル化・オープンデータ化を推進し、企業の脱炭素経営の取組を促進すること。の3点である。

(サステナブルファイナンス)

政府は、2050年のカーボンニュートラルの実現を念頭に、日本におけるサステナブルファイナンスの課題や対応策について議論を行うべく、2020年12月に産業界・金融界・学者等から構成されるサステナブルファイナンス有識者会議を設置した。また、企業や投資家のための気候変動関連のリスクと機会の開示を促進するため、TCFDの提言に基づく開示の取組を推進しており、TCFD開示推進の議論を活性化させるべく、2019年には「TCFDサミット」を、2020年10月にはその第2回会合を開催した。更に、2021年6月のコーポレートガバナンス・コード再改訂では、東京証券取引所プライム市場の上場企業に対しTCFD又はそれと同等の国際的枠組みに基づく開示の質と量の充実を求めている。

(地域における脱炭素化)

2050 年カーボンニュートラルの実現に向け、「2050年までのCO2排出量実質ゼロ」を表明した自治体である「ゼロカーボンシティ」は、2019年9月には4都市だったが、2021年6月には400都市に達し、既に人口規模で一億人を超えている。政府としては、ゼロカーボンシティを始めとした地方自治体の取組を支援し、エネルギーの地産地消やレジリエントな地域の構築を進めながら、地域における温室効果ガスの大幅削減を図っている。

また、2020年12月から開催している「国・地方脱炭素実現会議」では、国と地方自治体が連携して、地域の取組と国民のライフスタイルに密接に関わる主要分野において議論を進め、2021年6月に地域脱炭素ロードマップを決定した。今後5年程度を集中期間として、適用可能な最新技術を地域に実装し、脱炭素のモデルケースを各地に創り出しながら、次々と先行地域を広げていく「脱炭素ドミノ」を実現していくこととしている。今後、2030年度までに少なくとも100か所の脱炭素先行地域を創出する目標を掲げ、国による支援を集中的に進めていく。具体的には、地域脱炭素の取組に対し、①人材派遣・研修、②情報・ノウハウ、③資金の観点から、国が積極的、継続的かつ包括的に支援するスキームを構築する。

(消費者志向経営の推進)

持続可能な社会の実現に向けては、消費者、事業者、行政が連携・協働することが求められ、社会的課題に目を向けた事業者が、市場経済の中で、消費者に適切に理解、評価され後押しされることで、企業価値が高まるという仕組みが重要である。

政府は、消費者団体・事業者団体と連携して、事業者が消費者の声を聴きながら、消費者と連携・協働して社会課題に取り組むことを促進している。消費者志向経営の理念に基づく事業者の取組を社会に周知するため、「消費者志向自主宣言・フォローアップ活動」を推進しているほか、2018年度から、消費者志向経営に関して優れた取組を行っている事業者を表彰しており、2021年3月には3回目の表彰式を開催した。

(エシカル消費の普及啓発)

持続可能な社会を実現するためには、消費者が自らの社会に与える影響力を自覚し、地域の活性化や雇用等も含む、人や社会・環境に配慮した消費行動、すなわち「エシカル消費」を実践していくことが欠かせない。エシカル消費の普及・啓発に向け、地方公共団体との共催による啓発イベント「エシカル・ラボ」や体験型ワークショップの実施などに取り組んできた。更に、パンフレット、ポスターや動画、学校でも活用できる教材の作成・普及のほか、特設サイトを通じた先進的な事例の紹介などを通し、一人ひとりの消費行動が「世界の未来を変える」大きな可能性の発信に取り組んでいる。

(食品ロス削減の推進)

日本の食品ロスの量は、年間600万トン(2018年度)と推計されており、その内訳としては、家庭系・事業系の双方から、ほぼ同量が発生している。食品ロスの削減に向けて、政府、地方公共団体、事業者、消費者等の多様な主体がそれぞれの立場において主体的にこの課題に取り組み、社会全体として対応していくことが重要である。

2019年10月に、「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行され、2020年3月に「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」が閣議決定された。これらを踏まえ、関係省庁が連携しつつ様々な施策を推進している。

同方針では、食品ロスの問題を「他人事」ではなく「我が事」として捉え、行動に移すことが重要としている。消費者の役割としては、「日々の生活の中で食品ロスを削減するために自らができることを一人ひとりが考え、行動に移す」ことが挙げられており、政府は、日々の生活の中で取り組める内容を掲載したパンフレット・冊子の配布や、食品ロス削減月間(毎年10月)中の集中的な啓発、WEBサイトでの情報発信等により、消費者への啓発を実施している。

(みどりの食料システム戦略)

近年の農林水産業を取り巻く環境は、地球温暖化や新型コロナウイルス感染症の拡大の影響等、多くの課題がある。こうした中、様々な産業や国際的な議論においてもSDGsや環境への対応が重視されるようになり、今後、日本の食料・農林水産業においても的確に対応する必要がある。また、国際的な議論の中で、日本としてもアジアモンスーン地域の立場から新しい食料システムを検討していく必要があることから、農林水産業や地域の将来も見据えた持続可能な食料システムの構築が急務となっている。このため、農林水産省では、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させるための新たな方策として、「みどりの食料システム戦略」を2021年5月に策定した。

2050年までに目指す姿として、農林水産業のCO2ゼロエミッション化、化学農薬の使用量をリスク換算で50%低減、化学肥料の使用量の30%低減、有機農業の取組面積の割合を25%(100万ha)に拡大、2030年までに持続可能性に配慮した輸入原材料調達の実現等を掲げており、これらの実現に向け、中長期的な観点から調達、生産、加工・流通、消費の各段階の取組と、カーボンニュートラル等の環境負荷軽減のイノベーションを推進していくこととしている。

2021年9月には、持続的な食料システムの実現に向けての議論を行う国連食料システムサミットが開催される。同サミットにおいて、気候風土の実態に即した持続可能な食料・農林水産業を促進する「みどりの食料システム戦略」について発信すること等により、国際ルールメーキングに積極的に参画する予定である。

(水産資源の持続可能な漁業の推進)

2020年12月に「漁業法等の一部を改正する等の法律」が施行されたことに伴い、新たな資源管理の推進に向けたロードマップに沿って、科学的な資源評価の結果に基づき、最大持続生産量(MSY)の達成を目標としている。また、数量管理を基本とする新たな資源管理システムの導入を進め、2030年度には漁獲量を2010年度の水準(444万トン)まで回復させることを目指している。養殖業においても、人工種苗生産技術及び魚粉代替原料の開発・普及を通して漁場環境や天然資源への負荷軽減に貢献していく。

2017年5月に違法漁業防止寄港国措置協定を締結して以降、日本は未締結国に対して締結に向けた働きかけを実施している。また、2019年7月には中央北極海無規制公海漁業防止協定も締結する等、漁業分野における法の支配及び持続可能な資源管理の促進に係る一貫した貢献を継続している。加えて、外国漁船の違法漁業の撲滅に向け、2020年12月に、違法に採捕された水産動植物を流通から排除する水産流通適正化法を制定した他、違法・無報告・無規制(IUU)漁業対策に関心が高いEU、米国等の国々との国際場裏における連携も進めている。更に、従来のマグロ類や底魚の資源管理への取組に加え、サンマやウナギに関する国際的な資源管理の取組を主導し、生物多様性の確保に一層貢献している。

【事例】岡山県真庭市の取組地域内外の多様なステークホルダーとの連携により、木質バイオマス発電の推進によるエネルギー自給率の向上や、木材需要拡大へ向けたCLT等の活用促進を行っている。更に、蓄積したノウハウを生かし、バイオ液肥や牡蠣殻を活用した里山里海資源循環農業を展開・推進し、市民を巻き込み地域資源を活用した新たな地域経済構造の定着を目指している。

国際協力

(気候変動対策)

日本は、2015年にCOP21首脳会合において発表された「美しい星への行動(ACE2.0)」も踏まえ、アジア、大洋州、アフリカ、中南米地域をはじめとする途上国に対し、様々な支援を行ってきている。そのような支援の例として、気候変動対策に関する専門家を派遣し、災害に脆弱な太平洋島嶼国などの人材育成に努めているほか、各地域での再生可能エネルギーの導入促進にも貢献している。

また、世界最大の多国間気候基金である「緑の気候基金(GCF)」に対して最大30億ドルの拠出を表明するなど、同基金の第2位のドナー国として、気候変動の影響に脆弱な国々への支援に貢献している。GCFでは、2020年12月までに159件の案件がGCFの支援事業として承認・実施されており、全体で12億トンの温室効果ガス削減と、適応策支援による4.1億人の裨益が見込まれている。

さらに、途上国と協力して温室効果ガスの削減に取り組み、削減の成果を両国で分け合う二国間クレジット制度(JCM)を通じ、17か国で約190件の脱炭素・低炭素プロジェクトを実施している。JCMを通じ、2030年度までの累積で5,000万~1億トンの温室効果ガスを排出削減・吸収することを見込んでおり、現在、約180件のプロジェクトにより、2030年度までに1,700万トン以上の削減を見込んでいる。JCMを通じたSDGsへの貢献に関し、JCM設備補助事業におけるプロジェクトを通じた SDGsの各目標への具体的な貢献例をまとめたレポートを策定した。また、JCM設備補助事業のプロジェクト関係者、とりわけ実施主体である代表事業者、共同事業者に対し、ジェンダー平等に向けた行動を促すことを目的として、「JCM設備補助事業ジェンダー・ガイドライン」も策定した。

そのほか、環境協力の覚書や姉妹都市協定等による国内都市と海外都市の連携を活用し、国内都市が有する脱炭素・低炭素社会形成に関わる経験やノウハウ等を共有する「脱炭素社会実現のための都市間連携事業」も行っており、途上国における脱炭素化を推進している。

同事業では、民間事業者は国内都市と海外都市を含むコンソーシアムを組織し、海外都市における脱炭素化プロジェクト形成や制度基盤構築支援、また優良事例の横展開を目指している。日本の質の高い脱炭素・低炭素技術をベースに、日本と途上国の協働を通じて、双方に裨益あるイノベーション(コ・イノベーション)を創出し、国内の技術開発への還元や途上国への日本の低炭素・脱炭素技術の波及等を促進することを目指している。

これまで、2018年に14件、2019年に17件、2020年に20件を採択しており、現在、日本の15の自治体及び世界の13か国・地域の39都市が参画している。2019年に8件、2020年に5件のコ・イノベーション創出を目指す研究開発・実証事業を支援した。

また、環境省は、2020年9月に、新型コロナウイルス感染症からの復興と気候変動・環境対策に関する「オンライン・プラットフォーム」閣僚級会合を、UNFCCC(国連気候変動枠組条約事務局)と共に主催した。小泉環境大臣が議長を務め、各国46人の大臣・副大臣から発言があったほか、最終的に計96か国が参加し、気候変動関連のオンライン国際会議としては、これまでの世界最大規模の会議となった。会議では、「脱炭素社会への移行」・「循環経済への移行」・「分散型社会への移行」という3つの移行に向け社会をリデザイン(再設計)していくことの重要性を確認した。さらに、脱炭素化に向けた都市の取組を世界的に加速させることを目的として、2021年3月、環境省はUNFCCCの協力の下オンラインで脱炭素都市国際フォーラムを開催した。フォーラムでは、コミュニティに直結する都市の脱炭素政策と中央政府・国際機関による後押しの重要性を確認し、今後、都市の先進的な取組を世界に広げて、世界で「脱炭素ドミノ」の輪を広げていくことを確認した。

(G7サミットにおける日本の貢献)

2021年6月に開催されたG7サミットには我が国から菅総理が出席し、国内電力システムを2030年代に最大限脱炭素化すること、国際的な炭素密度の高い化石燃料エネルギーに対する政府による新規の直接支援を、限られた例外を除き、可能な限り早期にフェーズアウトすること、国内的に、NDC及びネット・ゼロのコミットメントと整合的な形で、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電からの移行を更に加速させる技術や政策を急速に拡大すること、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援の年内の終了にコミットすることについて、G7各国で一致した。

菅総理からは、総理就任以来、気候変動対策を最優先事項に掲げてきたことを強調し、2050年にカーボンニュートラルを目指す決意や日本の技術力を生かしたイノベーションと地域での取組を推進していくことを表明した。また、先進国が高い目標を掲げるだけでなく、他の国、特に大きな排出国に更なる取組を求めていく重要性を指摘した上で、途上国に対しては、その固有の事情を踏まえ、多様なエネルギー源・技術を活用しつつ、脱炭素社会に向けた現実的な移行を包括的に支援していくことを述べた。さらに、菅総理は、真に支援を必要とする途上国に対しては支援を惜しむべきではないとして、日本は2021年か79ら2025年までの5年間において、6.5兆円相当の支援を実施することと、適応分野の支援を強化していく考えを表明し、G7としても、2025年までの国際的な公的気候資金全体の増加及び改善にコミットした。

(循環型社会への移行促進)

2021年6月に成立したプラスチック資源循環促進法などを通じて、プラスチック製品の設計・製造から使用後の処理までのライフサイクル全体での資源循環の取組を促進し、循環経済への移行を実現していく。また、経団連と政府の官民連携によるパートナーシップを通じて、我が国の循環経済への移行を着実に推進する。さらに、G7気候・環境大臣会合の成果に基づき、グローバル企業や金融界が規範とする「循環経済及び資源効率性の原則(CEREP“Circular Economy and Resource Efficiency Principles”)」をG7各国と連携して作り上げ、世界全体のグリーン成長を加速させていく。

優先課題6 生物多様性、森林、海洋等の環境の保全

現代の私たちの経済、社会は安定的で豊かな環境の基盤の上に成立している。しかしながら人間活動の増大は、地球環境に大きな負荷をかけており、環境問題として顕在化し、私たちの生活にも様々な影響が生じている。持続可能な開発を実現するため、海洋、海洋資源、及び陸上資源の持続可能な形での利用を推進することが重要である。社会・経済の基盤である生物多様性の保全を推進するとともに、森・里・川・海といった自然環境が提供する生態系サービスの維持・向上を図ることが急務である。

国内の課題と取組

(海洋保全、海洋プラスチックごみ対策)

プラスチックを含む海洋ごみは、生態系を含めた海洋環境の悪化や海岸機能の低下、景観への悪影響、船舶航行の障害、漁業や観光への影響など、様々な問題を引き起こしている。日本は2019年5月に「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」「プラスチック資源循環戦略」を策定した。また、海岸漂着物処理推進法に基づく基本方針を変更し、循環型社会の形成を通じたごみの発生抑制や漂流ごみ・海底ごみの回収を図ることとした。船舶起源の海洋プラスチックごみの削減に向けて、実態の把握や指導・啓発活動に取り組むとともに、海洋環境の保全のため、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」に基づき、船舶起因の油・有害液体物質・廃棄物・排ガス等による汚染や水生生物の越境移動による生態系破壊の防止を推進しているほか、国際海事機関(IMO)等における新たな環境規制の審議に積極的に参画している。

また、2019年度、総合海洋政策本部参与会議において、SDG14についての研究会が実施された。“国際機運の高まりを受けた、SDG14を含むSDGsの「日本モデル」の構築を通じた推進”としてまとめられた同研究会の成果は、2020年6月に参与会議から同本部長である内閣総理大臣へ提出された意見書に含められる形で、SDGsの推進が政府に提言された。上記研究会の報告書は、海洋に関係する国際会議等(APEC海洋漁業作業部会等)の機会に、海外のステークホルダーへも共有され、日本の取組として発信された。

(持続可能な森林経営)

国内の森林資源が本格的な利用期を迎えており、適切な間伐の実施に加え、「伐って、使って、植える」という森林資源の循環を確立することが、森林の多面的機能の持続的な発揮を確保し、森林の経済的、社会的、環境的な便益を強化する。このため、資源の循環利用に向けた林業の成長産業化、林業経営に適さない森林における公的管理等の推進、更には、森林資源に関するモニタリングの適切な実施等を推進している。

【事例】岡山県西粟倉村の取組

林業を主軸に地域再生を目指し、森林信託事業による森林の集約化や森林経営にそぐわない民有林について経済価値を判定した上での公有林化等を通し、地域全体の森林価値の最大化と最適化を目指している。資金調達にあたっては森林ファンドを組成するとともに、投資家を関係人口として位置づけ巻き込んでいく等、金融機関も含めた官民連携を進めている

国際協力

(海洋保全、海洋プラスチックごみ対策)

2019年6月のG20大阪サミットでは、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を各国と共有するとともに、同ビジョンを実現するための「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」に合意した。また、日本は開発途上国の廃棄物管理に関する能力構築及びインフラ整備などを支援していく「マリーン・イニシアティブ」を同時に表明した。2025年までに世界の廃棄物管理の人材を1万人育成することとしたほか、国連環境計画(UNEP)等の国際機関と協力し、海洋プラスチックごみの流出防止策に必要な科学的知見の蓄積支援及びモデル構築支援等、アジア地域における環境上適正なプラスチック廃棄物管理・処理技術支援を行っている。

また、国際的に海洋資源の適切な管理が求められている中で、大洋州やカリブ、インド洋の小島嶼国においては、数少ない開発オプションである水産資源の持続的な利用を促進している。例えば日本は、“里海”の概念を導入して、水産資源の持続可能な利用により、六次産業化や観光産業への貢献などを通じたフードバリューチェーンの構築を図ることで地域経済の活性化など経済便益を高める取組を、国連食糧農業機関(FAO)や地域国際機関であるメラネシアン先鋒グループ(MSG)や南太平洋大学(USP)、太平洋諸国共同体(SPC)、カリブ地域漁業機構(CRFM)などと連携しつつ大洋州、カリブ地域、インド洋島嶼国において展開している。

その他、令和2年7月25日(土)にモーリシャス共和国沿岸で座礁した、ばら積み貨物船「WAKASHIO」による油流出事故に対して、我が国は、同国政府からの要請を受けて3回にわたり国際緊急援助隊・専門家チームを派遣した。同国政府や関係国・機関と協力し、モーリシャス沿岸での油の流出状況の調査、油防除作業等に関する支援、海洋汚染の状況調査やマングローブ・サンゴ群集・鳥類の調査、長期的に必要となるモニタリングのための計画の策定の支援など、様々な活動を実施した。更に、同国の復旧と復興に向け、海難防止、環境、漁業、経済の回復・後押しのため、迅速かつ中長期的な視点から、これまでにない規模での協力を進めている。

(持続可能な森林経営)

JICAとJAXAとの間で2016年に作成した連携協定に基づき、JAXAの陸域観測技術衛星(だいち2号)のデータを活用した熱帯林早期警戒システム(JJ-FAST)を開発し、77か国のデータを公開した。同システムを用いて森林保全を行う人材を育成し、本システムを活用した技術協力/研修をこれまで計15か国で実施している。また、国際熱帯木材機関(ITTO)への拠出を通じ、熱帯地域における森林火災の予防・応答体制の構築や持続可能な森林経営体制の構築を支援した。これらを通じ、熱帯林の保全と、それを通じた気候変動対策や生物多様性保全に貢献している。

また、国際的に持続可能な森林経営の推進に貢献するため、民間企業等によるREDD+活動を推進するとともに、日本の治山技術を活用して、途上国における森林の防災・減災機能の強化や山地流域の強靱化方策の普及を支援している。

(生物多様性)

自然共生社会の実現を目指す「SATOYAMAイニシアティブ」の活動促進を目的に、生物多様性条約COP10(2010年、愛知県名古屋市)において、国際パートナーシップ(事務局:国連大学)を設立し、73か国・地域の271団体(2021年3月現在)が参加している。関係国際機関等との連携により、たとえばウガンダにおける地域特有の植物を活用したジャムやワインの商品開発などのプロジェクト等、約40か国・地域で約450のプロジェクトを実施している。

また、生物多様性条約COP15(2021年予定、中国・昆明市)を機に、日本の取組事例の国際展開を含め、「SATOYAMAイニシアティブ」 を一層推進し、2021年以降の新たな世界目標(ポスト2020生物多様性枠組)の実施に向けた取組を強化していく。

SDG14(海洋資源)とSDG15(陸上資源)の生物多様性に関する目標群の一部は、目標年が2020 年までとなっており、2030年までの目標設定がない。これについて日本は、2020年7月に生物多様性条約により行われたポスト2020生物多様性枠組に関する意見照会の機会を捉え、ポスト2020生物多様性枠組がSDGsの生物多様性関連の目標を引き継ぐべきであり、その旨を生物多様性条約COP15における決定事項に含めるべきであるとの意見を提出した。

(G7サミットにおける2030年自然協約)

2021年6月に開催されたG7サミットに先立ち、日本は2021年5月、2030年までに生物多様性を回復させることを約束する「リーダーによる自然への誓約:Leaders’ Pledge for Nature」に賛同した。さらに、G7サミットにおける生物多様性に関する議論の結果、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させるという世界的な任務を支える「G7・2030年自然協約」をG7として採択した。この自然協約においてG7各国は、上記の目的のための行動として、国内の状況に応じて、2030年までにG7各国の陸地及び海洋の少なくとも30%を保全又は保護すること、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を基礎として、プラスチックによる海洋汚染の深刻化に対処するための行動の加速化等にコミットしている。

(北極・南極域)

日本は60年以上にわたり南極での観測研究を実施し、気候変動に関するデータを継続的に取得している。また、北極は地球上で最も温暖化が進行している地域であり、「第3期海洋基本計画」(2018年5月閣議決定)等に基づき、北極域の環境変化の実態把握とプロセス解明、気象気候予測の高度化・精緻化などの先進的な研究を推進している。加えて、北極域の国際研究プラットフォームとして、砕氷機能を有し、北極海海氷域の観測が可能な北極域研究船の建造に向けた検討や研究開発、基本設計を実施し、2021年度から建造に着手することを決定した。

【事例】山陽女子中学校・高等学校地歴部

瀬戸内海におけるプラスチックごみやマイクロプラスチックなどの海洋汚染にいち早く着目し、地元漁師と協働して海洋ごみの回収・分析を実践した。回収の際には、メディアや近隣府県の中高生を招き、情報発信や学びの場としている。海洋ごみ問題の解決に向けては、海洋ごみの回収と合わせて、海洋ごみの発生量を減少させることを重視し、海洋ごみの起源地である内陸部や沿岸地域において、海洋ごみ問題の啓発活動を行っている。行政や NPO、地元メディアが協働することにより、地域に根差した継続的な取組となっている。

優先課題7 平和と安全・安心社会の実現

平和と安全・安心な暮らしの確保は、あらゆる人々の生活の基盤を成すものである。しかし、国際社会のパワーバランスの変化は加速化・複雑化し、既存の秩序をめぐる不確実性は増大しており、こうした中、自らに有利な国際秩序の形成や影響力の拡大を目指した国家間の競争が顕在化している。更に、国際社会においては、安全保障上の課題が広範化・多様化し、一国のみでの対応が困難になっており、宇宙領域やサイバー領域などでは、国際的なルール作りが安全保障上の観点からも課題となっている。海洋においては、既存の国際秩序とは相いれない独自の主張に基づいて自国の権利を一方的に主張し、又は行動する事例が見られ、公海における自由が不当に侵害される状況が生じている。

このような中、日本は、平和国家としての歩みを引き続き堅持しつつ、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保に一層積極的に貢献していく必要がある。

また、日本国内においても、子供や女性が被害者となる犯罪は後を絶たず、高齢者を狙った特殊詐欺の被害は深刻な情勢が続くなど、犯罪に対して不安を抱く人が少なくない。人権が保障され、安全で安心して暮らせるまちを実現するため、それぞれの地域における取組も重要である。

国内の課題と取組

(子供の安全)

社会経済の構造が変化し、家庭や地域の子育て機能が低下するに伴って、児童虐待等が深刻な問題となっている。子供たちのいじめや教師による体罰も依然として大きな問題である。また、情報通信技術の急速な発展も相まって、インターネットを通じて子供が犯罪に巻き込まれるなどの事態が生じている。更に、親の社会経済的状況によっては子供が十分な教育の機会が得られなくなる等の問題がある。次世代を担う子供たち一人ひとりが心身に有害な影響を受けることなく健やかに成長することができる社会を創り上げていくことは、我々が等しく共有する課題であり、対策が必要である。

いじめは決して許されないことである。このため、いじめの未然防止、早期発見・早期対応等の実現に向けて、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置充実、SNS 等を活用した相談体制の整備推進等により、地方公共団体におけるいじめ問題等への対応を支援している。

また、体罰禁止の徹底を図るため、体罰の実態調査を実施するとともに、各都道府県教育委員会等の生徒指導担当者向けの会議等において、懲戒と体罰の区別、体罰防止に関する取組についての通知内容を周知している。

児童の性的搾取等は、児童の心身に有害な影響を及ぼし、かつ、その人権を著しく侵害する極めて悪質な行為であり、断じて許されるものではない。そのため、2017年4月、犯罪対策閣僚会議において策定した「子供の性被害防止プラン」(児童の性的搾取等に係る対策の基本計画)に基づき、企業及び民間団体とも連携しながら、子供の性被害防止に係る対策を推進している。

また、コミュニケーション手段の多様化を踏まえ、人権侵害の被害に遭った子供が相談しやすくするため、2019年度には、一部の法務局において、SNSを活用した相談窓口を設置し、2020年度以降も、SNSを活用した人権相談体制の整備を引き続き進めているほか、人権相談窓口の更なる周知広報を図るなど、いじめ・虐待を始めとする子供の人権問題対策の強化を図っている。そして、これらを通じて人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査し、学校や関係機関と連携しながら被害の救済に努めている。

また、日本では、窒息や溺水などの不慮の事故によって、14歳以下の子供が毎年約200人亡くなっている。こうした子供の不慮の事故を可能な限り防止するために、①注意喚起資料の公表、「子どもを事故から守るTwitter」等の発出、「子どもを事故から守る!事故防止ハンドブック」の配布等を通じた保護者等への周知啓発活動、②子供の不慮の事故の実態や認知度に関する調査分析など、関係府省庁が連携した取組を推進している。

(女性に対するあらゆる暴力の根絶)

性犯罪・性暴力や、配偶者等からの暴力、セクシュアルハラスメント等の女性に対する暴力は重大な人権侵害であり、決して許されるものではない。情報通信技術(ICT)の進化やSNS などの新たなコミュニケーションツールの広がりに伴い、女性に対する暴力の形も一層多様化している。2019年6月には、2001年に成立した「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」の一部改正を含む「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」が成立し、児童虐待と密接な関連があるとされる配偶者等からの暴力(DV)被害者の適切な保護が行われるよう、相互に連携・協力すべき関係機関として児童相談所が法文上明確化された。

また、DV等の被害者支援強化のため、DV 相談プラスの実施や被害者支援に重要な役割を果たしている民間シェルター等の先進的取組の支援をしている。

2020年6月には「性犯罪 ・性暴力対策強化のための関係府省会議」において「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」を決定し、2020年度から2022年度までの3年間を、性犯罪・性暴力対策の「集中強化期間」とし、関係府省が連携して取組を推進している。

(満期釈放者対策を始めとする再犯防止対策の推進)

犯罪をした者等の立ち直りを支援することは、「誰一人取り残さない」社会の実現に資するものであり、「再犯の防止等の推進に関する法律」(2016年12月)、「再犯防止推進計画」(2017年12月)、「再犯防止推進計画加速化プラン」(2019年12月)等に基づき、満期釈放者対策の充実強化、犯罪をした者等の特性に応じた指導、就労・住居の確保、保健医療・福祉サービスの利用の促進、学校等と連携した修学支援、地方公共団体との連携強化の推進、民間協力者の活動の促進等の再犯防止対策を推進している。

【事例】広島県の取組

原子爆弾による破壊を経験し、「核兵器のない平和な世界の実現」に向けた取組を進めている。「国際平和のための世界経済人会議」の開催により、マルチステークホルダーと連携を深め、協働して平和の取組を生み出すためのプラットフォームの整備を進め、県内企業等へSDGsに係る普及啓発を行っている。また、世界の人々、特に次世代を担う若者に対し、平和学習の機会を提供し、平和貢献人材の育成を図っている。

国際協力

(法の支配の促進)

「法の支配」とは、全ての権力に対する法の優越を認める考え方であり、国内において公正で公平な社会に不可欠な基礎であると同時に、友好的で平等な国家間関係から成る国際秩序の基盤となっている。更に、法の支配は国家間の紛争の平和的解決を図るとともに、各国内における「良い統治(グッド・ガバナンス)」を促進する上で重要な要素でもある。このような考え方の下、日本は、法の支配の強化を外交政策の柱の一つとしており、力による一方的な現状変更の試みに反対し、領土の保全、海洋権益や経済的利益の確保、国民の保護などに取り組んでいるほか、安全保障、経済・社会、刑事など、様々な分野において二国間・多国間でのルール作りとその適切な実施を推進している。

日本は、これまで国連アジア極東犯罪防止研修所を通じて、汚職、組織犯罪対策などSDGsに掲げられた国際社会の優先課題をテーマとする刑事司法及び犯罪者処遇に関する研修・セミナーを、139の国・地域の6,000名を超える刑事司法実務家を対象に実施し、開発途上国等の刑事司法の発展や刑事司法実務家の能力向上等に貢献している。また、日本は、各国における法の支配の確立と健全な経済発展の基盤作りに寄与するため、開発途上国の法令の起草・改正、法令を運用する制度の整備、司法アクセス改善のための制度の整備、 法務・司法分野の人材育成等を支援する法制度整備支援として、関係者を日本に招いての研修や現地でのセミナー等を実施するとともに、法曹などを長期専門家として支援対象国に派遣している。

2021年3月、犯罪防止・刑事司法分野における国連最大規模の会議である国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)が京都で開催された。京都コングレスでは、SDGs達成のための犯罪防止・刑事司法分野のアプローチについて議論がなされ、成果文書として「京都宣言」が採択された。「京都宣言」では、刑事司法分野における国際協力の一層の促進や、マルチステークホルダー・パートナーシップ、持続可能な開発の前提となる法の支配の促進などに対する各国のコミットメントが示された。日本は、今後、「京都宣言」の確実な実施に向け、リーダーシップを発揮し、刑事分野における協力促進のための地域プラットフォーム創設や、マルチステークホルダー・パートナーシップによる再犯防止のための国連準則作りなどを提案・推進し、SDGs達成に貢献していく。

(子供に対する暴力撲滅・児童労働撤廃)

日本は、2018年以降、「子どもに対する暴力撲滅グローバル・パートナーシップ」(GPeVAC)に参加し、子供に対する暴力の撲滅に向けて取り組む「パスファインディング国」として、GPeVACの活動に積極的に関与している。その一環として、市民社会、企業、有識者、関係府省庁等により構成される「子どもに対する暴力撲滅円卓会議」において、我が国の「子どもに対する暴力撲滅行動計画」の策定に向けた具体的な議論を進めている。その策定のプロセスにおいては、子供の意見を聴取することが重要との認識の下「子どもパブコメ」を実施した。現在、関係府省庁、市民社会等関係者の対話と連携の下、同行動計画の策定に取り組んでいる。

また、国際機関、NGO、民間企業等との連携の下での途上国における最悪な形態の児童労働の撤廃を目指して取り組んでおり、例えば、2020年1月にはガーナでカカオ産業における児童労働を含む開発課題の解決に向けた共創を目的とする「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」を設立し、2020年10月から児童労働フリーゾーン設立に向けたパイロット活動をJICAの事業を通じて行っている。さらに、「児童労働撤廃国際年」(2021年)の実施を主導しているILOの呼びかけに応じて、2021年12月までに達成可能な具体的な行動(2021アクション・プレッジ)として厚生労働省が日本を含むアジア地域の児童労働撤廃に向けた取組を行うことを表明した。

(PKO 法に基づく国際社会の平和と安定に資する取組)

持続可能な開発と平和の持続は表裏一体であり、政府は、人間の安全保障の理念に基づき、世界の「国づくり」と「人づくり」に貢献することを国際協力全般の基本的立場として打ち出している。国際平和協力についても、人間の安全保障に立脚して着実に進めると共に、切れ目のない支援を行う「人道と開発と平和の連携」への貢献を重視して取り組んできている。

1992年の国際平和協力法(PKO法)施行以来、日本は、28件の国際平和協力業務、約12,500名の人的協力を実施してきており、2021年4月現在は国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に対し4名、多国籍部隊・監視団(MFO)に対し2名、計6名の司令部要員を派遣している。日本が派遣してきた施設部隊は、南スーダンなどで現地コミュニティが裨益する道路建設・改修等を行ってきたが、道路整備は、人道救援のアクセス向上、開発の基礎を為す各種交流の促進をもたらすと共に、状況によっては共同体間の理解や融和を促進する効果が期待されるとも言われる。

また、物的協力については、PKO法に基づく物資協力を29件実施し、直近では2019年12月に南スーダン和平プロセスにおける治安部門改革(SSR)を支援する政府間開発機構(IGAD)に対し、日本から南スーダン政府・反主流派の要員を一時的に仮宿営させるためのテント等を無償譲渡した。

今後とも「積極的平和主義」の旗の下、これまでの活動の上に立ち、日本の強みを活かし、能力構築支援の強化、部隊及び個人派遣、物的協力など、国際平和協力分野において一層積極的に貢献し、人道、開発及び平和という分野の連携を意識した切れ目のない支援を実現することで、日本が掲げる積極的平和主義を実践し、もって国際社会の平和と安定に貢献していく。

(各国平和維持活動要員の訓練)

日本は、国連PKOに参加する各国の平和維持活動要員の能力向上を支援するため国連、支援国及び要員派遣国の三者が互いに協力し、国連PKOに派遣される要員に必要な訓練を行う枠組みである国連三角パートナーシップ・プロジェクト(UN Triangular Partnership Project)への協力を、2015年から継続して行っている。具体的には、自衛官など延べ172人を教官としてケニアやウガンダなどに派遣し、国連PKOへ施設部隊を派遣する意思を表明したアフリカ8か国の277人の要員に対して重機操作の訓練を実施している。本プロジェクトの対象地域は、2018年からアジア及び同周辺地域にも拡大され、ベトナムに自衛官など延べ68人を派遣し、アジア及び同周辺地域9か国の56人の要員に対して重機操作の訓練を行った。更に、2019年10月から、国連PKOにおいて深刻な問題となっている医療分野においても国連野外衛生救護補助員コース(UNFMAC)への教官派遣を開始した。

【事例】紛争影響国等における平和構築支援

国際社会の平和と安定のため、平和構築は重要であり、日本は「開発協力大綱」においても重点課題の一つとして位置付けている。人道危機への対応においても、人道支援と開発協力の連携に、平和構築・紛争予防を組み合わせることが効果的である。紛争発生後の対応のみならず、人道危機の要因である紛争の発生・再発予防にも重点を置き、平時からの国造り、社会安定化といった、紛争の根本原因に抜本的に対処することが重要であり、日本は、このような「人道と開発と平和の連携」の考え方を重視し、平和構築支援を進めている。

日本はこれまで、脆弱・紛争影響国において、住民に最も近い地方行政を中心に包摂的な行政サービスの提供や共存可能な社会の形成に向けた支援により、政府と住民及び住民間の信頼醸成に取り組んでいる。例えば、40年以上にわたり紛争の影響を受けてきたフィリピン・ミンダナオでは、20年以上にわたって平和と安定のための支援を継続的に行うことで、様々なレベルでの信頼醸成に取り組んできた。現在ではバンサモロ暫定自治政府の能力向上支援を通じて、暫定自治政府と住民の信頼が醸成されることを目指しており、もって当該紛争影響地域の平和の定着と開発に貢献している。また、難民・国内避難民の受入地域では「人道と開発と平和(HDP)のネクサス」の観点から、難民・避難民と受入地域の信頼醸成に特に配慮し、ホストコミュニティと共存できる社会の形成を支援している。例えば、紛争の影響を受けまた難民の受け入れ地域になってきた北部ウガンダにおいては、難民のニーズも開発計画に含める統合開発計画を策定する政策を決定しており、これまで同地域で行ってきた参加型開発など地方政府の住民に対するアカウンタビリティ及び透明性の改善も踏まえ、統合開発計画の策定の支援を行う予定である。

優先課題8 SDGs 実施推進の体制と手段

近年、経済のグローバル化の進展に伴い多くの開発途上国が新たな投資先・市場として注目され、かつ、ODAを上回る民間資金が開発途上国に流入する年もあるなど、開発援助をめぐる国際環境は大きく変化している。同時に、政府・開発機関のみならず、民間企業、NGOなどによる活動が重要性を増しており、地方自治体や中小企業なども新たな開発パートナーとして注目されている。様々なアクターが、それぞれの得意分野を活かした多様なアプローチで途上国の開発に取り組んでいる中、そうした一つ一つをODAがつなぎ、厚みのあるアプローチをとることで、相乗効果によってより大きな開発効果を上げることを目指して取り組んでいる。

国内の課題と取組

(企業における SDGs の取組支援)

2017年5月、ESG・非財務情報開示・投資家との対話の手引きとなる『価値協創ガイダンス』を策定し、企業の情報開示や投資家との対話の質の向上を促進している。また、2019年5月、SDGs経営イニシアティブ推進として、SDGs経営の良好事例の共通項や、投資家がそれを評価する視座等を整理した「SDGs 経営ガイド」を策定した。G20等の場を通じて、本ガイドを広く国内外に発信しており、企業経営へのSDGs の取り込みを後押ししている。

企業と投資家との間で、前提とする時間軸の差異や、SDGs/ESGの経営・投資判断への落とし込みに課題があるという現状認識を踏まえ、2020年8月、企業の稼ぐ力の持続的向上に向けた長期の時間軸を前提に、企業の稼ぐ力(企業のサステナビリティ)とSDGs/ESG(社会のサステナビリティ)を同期化させ、社会課題を企業経営に時間軸を踏まえて取り込んでいく経営及びそれに関する企業と投資家の対話の在り方を、『サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)』として提唱し、企業と投資家の対話の更なる実質化を後押ししている。

(地方における SDGs の主流化)

2017年12月、SDGs理解向上と活動の連携促進を目的とし、産官学民の多様なアクターで構成される関西SDGsプラットフォームが創設された(事務局:JICA関西、近畿経済産業局、関西広域連合)。同プラットフォームの会員数は1,000団体を超え(2020年12月現在)、分科会活動が盛んになっており、地域の活発な団体が会員を巻き込みつつ活動を牽引している(設立済の分科会:関西SDGs貢献ビジネスネットワーク、SDGs環境ビジネス分科会、共育分科会、食品ロス削減分科会、教育分科会、バリアフリーマップ分科会、大学分科会)。プラットフォームが後援等を行う会員によるSDGsイベント・アクションはこれまで約200件(2020年12月現在)実施している。

(ステークホルダーが連携して進める取組)

2020年6月、国連が提唱する「行動の10年」に沿った具体的な取組「ジャパンSDGsアクション」を官民一体となって推進するため、政府、自治体、経済界、市民団体、次世代等が参画する「ジャパンSDGsアクション推進協議会」を、事務局である神奈川県が中心となって立ち上げ、SDGsアクションを推進するための活動を行った。2021年3月には、ジャパンSDGsアクション推進協議会と国連SDGアクションキャンペーン/UNDP共催による「SDGグローバル・フェスティバル・オブ・アクションfrom JAPAN」をオンラインで開催し、日本の取組を世界に発信した。これと連動する形で、国内向けに、「気候変動」「いのち/貧困・格差」「次世代・ジェンダー」などをテーマとした「ジャパンSDGsアクションフェスティバル」を開催し、2日間で延べ160人を超えるキーパーソンが20のセッションに登壇し、先進事例の共有や具体的なアクションを提案した。

【事例】北海道下川町の取組

地域における経済・社会・環境の様々な地域課題を町内外の行政・企業・団体等との連携により政策提案・ビジネスプラン化し、技術や資金等のマッチングも含めた支援により、多様な主体による自立展開を促す“協創と展開の拠点”であるパートナーシップセンターを創設し取り組んでいる。また、2018年に策定した下川町の2030年ビジョン「2030年における下川町のありたい姿(下川版SDGs)」の達成度を測定するためのモノサシとなる下川町独自の指標を開発し、普及展開を図っている。(ステークホルダーズ・ミーティング)また、SDGS の環境的側面における各主体の取組を促進するため、環境省では 2016 年から「ステークホルダーズ・ミーティング」を開催している。これは、先行して SDGS に取り組む企業、自治体、市民団体、研究者や関係府省が一堂に会し、互いの事例の共有や意見交換、さらには広く国民への広報を行う公開の場である。先駆的な事例を認め合うことで、他の主体の行動を促していくことを目的としている。2020 年度は地方の取組を重視するため、SDGS 未来都市にも選定された神奈川県小田原市の協力を得て、2020 年 11 月に第 12 回ステークホルダーズ・ミーティング兼 SDGS 推進本部円卓会議環境分科会を、関東地方環境事務所と共に現地会合+オンラインのハイブリッド形式で開催した。

国際協力

(民間資金の動員)

年間2.5兆ドルとも言われるSDGs達成に向けた資金ギャップを埋めるには、民間資金の動員が不可欠である。日本は、ESG投資を活性化するとともに、国内の民間資金を成長市場である開発途上国のために動員するため、SDGs達成に向けたソーシャルボンドとして、年間約5.5億ドルのJICA債を発行している(発行実績2,900億円:2020年12月現在)。

(途上国の行政能力強化)

途上国におけるSDGs推進のためには、大きな資金ギャップがあり、徴税能力向上が重要である。そのため、日本では、国際機関等を通じた途上国の税制・税務執行に関する技術支援・能力構築支援を積極的に実施している。途上国の国内資金動員を支援するOECD・IMF・世界銀行・ADBの活動を資金面から支えドナー会議等を通して運営に参画しているだけでなく、租税専門家を派遣して人材面からも貢献している。これらの国際機関における国内資金動員の支援活動の協調を促進するPCT(Platform for Collaboration on Tax)の活動も支援している。

また、途上国の租税犯罪調査官等を対象とした「OECDアジア太平洋租税・金融犯罪調査アカデミー」をOECDと協力して設立し、資金拠出するとともに、同アカデミーの研修を定期的に開催している。

更に、JICAと連携し、途上国へ税務行政アドバイザーを派遣しているほか、JICAが日本に招へいした途上国の税務当局職員に対して研修等の支援を行っている。

ベトナム、インドネシア、モンゴル等国家財政基盤強化を通じた国内資金動員の向上に向けた支援として、アジアを中心に税務実務の改善や納税者管理改善等の税務行政改善を目的とする技術協力を実施している。特にモンゴルにおいては、既往の技術協力プロジェクトの提言も反映する形で四半世紀ぶりに本格的な税法改正が実現したことを受けて、更に改正税法の執行能力強化を目的とする技術協力プロジェクトを実施している。

また、インドネシアにおいても、同政府によるナショナルターゲット・指標の設定、中央及び対象州政府の行動計画の策定、モニタリング・評価体制の構築を支援し、指標解説書(メタデータ)、対象5州の地方行動計画(案)、モニタリングITシステム等が策定・開発中である。

(途上国でのビジネス展開)

2018年9月から、途上国の課題解決型ビジネス(SDGsビジネス)調査、中小企業海外展開支援事業等を統合・整理した「中小企業・SDGsビジネス支援事業」を開始し、途上国のSDGs推進にビジネスで貢献することを目指す企業の現地調査、事業化に向けた普及・実証活動を支援している。2010年度に開始した前身の制度から累計で1,333件(2020年度末現在)の提案を採択しており、終了案件の約7割が途上国でのビジネス展開を継続・準備している。

(SDGs を通じた連携)

国際的なSDGsを通じた連携の具体例としては、2019年11月の第11回日メコン首脳会議で採択された東南アジア・メコン地域諸国との「2030年に向けた日メコンSDGsイニシアティブ」があり、今後、官民合同での「日メコンSDGsフォーラム」を開催し、各国のSDGs達成に向けた取組を共有しながら課題解決を目指していく。

また、大阪・関西万博が開催される 2025 年は、SDGs達成の目標年である2030年を5年後に控え、SDGs達成状況を検証し、その先に向けた取組を加速させる上で重要な年となる。大阪・関西万博をSDGs達成、更にはSDGs+beyondに貢献する国際博覧会とするため、政府は2020年12月21日に閣議決定された万博開催の基本方針において、開催期間前から住民や企業を含む多様なプレイヤーを巻き込み、開催期間後もその取組が自律的に発展していくものとしていく旨を定めている。更に、途上国に対しては必要な支援を実施し、150か国・25国際機関の出展を目指している。

【事例】持続可能性をレガシーとする東京オリンピック・パラリンピック競技大会

東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京大会)では、大会を社会全体に対して持続可能性の重要さの認識を高め持続可能な社会構築への行動を後押しする機会として捉え、「持続可能性に配慮した運営計画」や「持続可能性に配慮した調達コード」を策定するなどして大会を通じてSDGsの実現に貢献する様々な取組を実施している。

脱炭素化の分野においては、大会史上初めて、再生可能エネルギー由来の水素が聖火台や聖火リレー等に使用されるとともに、大会時の運営電力の全量を再生可能エネルギーにより供給し、更には、開催都市等の200以上の事業者の協力の下にカーボンオフセットを行うなどして、大会で排出されるCO2をゼロ以下にする「カーボンマイナス大会」を実現していく。

また、循環型社会の分野においては、市民参加型の取組として「みんなのメダルプロジェクト」を実施している。金銀銅のメダルは、全国の9割の自治体が参加して、大会史上初めてその全てが使用済み携帯電話等の小型家電等から抽出されたリサイクル金属で製造される。また、43の会場で使用される表彰台も全国の小売店舗等から集められた使用済みプラスチックや海洋プラスチックで製造される。

更に、選手村ビレッジプラザ(休憩施設)は、全国の63の自治体から無償で借り受けた国産木材で建築され、大会後は各自治体で活用される木材活用リレープロジェクトが行われる。大会では、こうした市民参加型の取組を含め、大会により排出される廃棄物も過去大会と比較して最も高いリユース・リサイクル率を掲げ、物資の調達段階から大会後の資源循環を見据えた取組を講じている。更に、東京大会では、大会史上初めて、「ビジネスと人権に関する指導原則」に則った大会運営を目指す。障害者接遇研修の実施や、車いす対応車両の導入、段差解消などのアクセシビリティの確保、国際労働機関(ILO)との連携によるディーセント・ワークの推進など様々な取組を実施する。大会に出場する女子選手の割合も、オリンピック大会上最も高い約49%となることを始め、大会組織委員会においても、女性会長の下、理事会の女性比率を42%に引き上げるなど「あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等」を推進している。

このように、東京大会では、日本・世界にレガシーとして継承され、多様に発展していくことを目指し、SDGsを推進している。

出典:外務省

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