都市環境に生きる子どもたち

数億人の子どもと若者たちが、政治的、文化的、商業的なエリートが快適に暮らしているのと同じ都市で、日々の暮らしと闘っている。きわめて多くの子どもたちが、学校に行くのでなく働きながら、強制退去におびえながら、あるいは暴力や搾取の危険にさらされた路上で生活しながら、子ども時代を過ごしている。都市環境は子どもたちを念頭に置いて作られていないだけでなく、子どもや若者がそうした環境の形成に参加することも許されていないのが通例である。

子どもたち全体の約半分がすでに都市環境の中で暮らしている。その数が増えるにつれ、彼らの成長を促し、権利を守るために以下の緊急行動が必要である。

■ 子どもたちに影響を与えている都市の貧困と排除の大きさとその性質への理解を深める

データ収集のツールは、子どもたちの状況の格差をより正確に反映し、どういった子どもと家族が最も社会から取り残されているかを判断しやすくなるように精度を上げなければならない。都市データを分割して詳細化する場合は、都市部の子どもの生存、健康、発達、衛生、教育、および保護という権利を向上することを目的とした確かな調査と支援の評価が伴わなければならない。

それを有効なものにするためには、情報は広く普及させ、因果関係の公表と不平等や排除への効果的な対処のために分析されなければならない。また、貧困と排除が都市環境でどのように展開し、どのように子どもたちに影響するのか、そしてこうした困窮がなぜ世代から世代へと残されていくのかを理解するには、さらに多くのことがなされる必要がある。

■ インクルージョンの壁を特定し、取り除く

排除に関する理解を深めることによって、社会的に周辺に追いやられた子どもとその家族がサービスの利用や、法的保護、住居に住み続けられる保証といった中核的な市民権を妨げている、インクルージョンの壁を特定し、取り除く。

差別、少ない所得、直接・間接コスト、限られた交通手段、公的な文書の欠如が、利用可能な都市のサービスを遠ざける原因である。使用料金の廃止、コミュニティ・パートナーシップの確立、サービスについての働きかけや利用の強化といったより公平性の高い政策によって、サービス対象範囲を拡大することができる。ラテンアメリカおよびアフリカの国々では、条件付き現金給付を含む革新的な取り組みによって成功を収めている。それぞれの都市環境でのボトルネックを特定することは、対象を絞った支援を実施し公平性を促進することに役立つ。

■ 子どもたちの特定のニーズと優先事項にはっきりと焦点を当て続ける

貧困と格差を軽減するため、都市計画、インフラ開発、サービスの提供および広範な取り組みの中で、子どもたちの特定のニーズと優先事項にはっきりと焦点を当て続ける。年齢、能力、ジェンダーを考慮しなければならない。


国際的な「子どもにやさしい“まち”(Child-Friendly Cities)」イニシアティブは、都市のガバナンスに子どもたちの権利がどのように統合されているかについての例を示す。説明責任の強化がこうした取り組みの基礎にならなければならない。居住者のニーズに対応していない、膨大で無計画なインフォーマルな居住地をかかえる現状を、そのまま受け入れてしまっている自治体がきわめて多い。

こうした課題は、保護の問題も網羅していなければならない。たとえば、暴力、薬物乱用、および車両の往来などからである。著名な国際的イニシアティブには、国連人間居住計画、国連女性機関およびユニセフの共同の取り組みで、女性、子ども、警察、都市設計者、政策立案者がジェンダーに基づく、暴力を軽減する方法の模索を目指す「すべての人に安全で優しい都市(Safe and Friendly Cities for All)」がある。コロンビア、スウェーデン、およびオランダの国家的イニシアティブは、自動車乗り入れ禁止区域、自転車および歩行者専用通路、および公共交通機関の組み合わせによって交通事故による死傷者を削減している。

■ 都市の貧困層と政府のあらゆるレベルでのパートナーシップを促進する。

このような参加をはぐくむ都市のイニシアティブ、特に子どもと若者を巻き込んだイニシアティブは、子どもたちだけでなく、そのコミュニティに対しても良い結果を残していると報告されている。良好な結果の例には、ブラジルのリオデジャネイロ、およびサンパウロにおける公共インフラの改善、エクアドルのコタカチにおける識字率の向上、ベネズエラのシウダードグアヤナにおける出生登録の拡大がある。

地方当局およびコミュニティは、限られた財源が最も効果的に使用されるように、貧困層が苦労して手に入れた資産が損なわれないように、また人口の過半数を占めることも多い貧困に苦しむ人々が都市の開発と統治に意味のある関わりが持てるように、それぞれの取り組みをさらに密接に調整させる必要がある。

■ 子どもの権利における持続可能な改善を実現に向けて共に働く

特にこのように困窮した時代には、地域から世界まで、市民社会から公共部門、民間部門まで、あらゆるレベルの関係者たちが子どもの権利に貢献する都市環境を作り出す資金とエネルギーを出し合う必要がある。市民社会組織の中での国際協力は、今後の子どもたちの利益に向けて、市民社会を構成する組織の力を引き出しながら、世界中のコミュニティをつなぐことができる。

その一例が34カ国の都市の貧困層による草の根連合をまとめたスラム住民国際ネットワーク(Shack/Slum Dwellers International)であり、住み続けられる保証や、住宅の質、基本的インフラなどの問題の解決策
についての意見交換が彼らによって実現した。こうしたネットワークは、最も社会から取り残された人々の利益になる都市開発を促進するため、コミュニティ、地方や国の当局、および国際機関をまとめる力を持っている。
非政府組織および国際機関は、自治体やコミュニティの意思決定において子どもたちの関与を促進させる重要な役割を果たすことができる。

■ より公正な都市へ

世界人口の半分以上がすでに町や市で暮らしており、さらに多くの子どもたちが都市というものを背景に成長している。彼らが都市で過ごす子ども時代は、貧しさと豊かさ、そして生き延びる困難さと恵まれた機会といった、都市に存在する広範な格差を反映するものである。

都市部に暮らす子どもたちの権利を守るため、公平性はあらゆる取り組みにおける指針でならなければならない。最も困難な貧困と不利益の状況の中で生まれ育つスラムの子どもたちには、特別な配慮が必要である。しかし、そのことが都市以外にすむ子どもたちの犠牲で成り立ってはならない。より大きな目標に焦点を当てていくべきである。それはすべての人にとって、より公正で温かくはぐくむ力のある都市や社会をつくることである。そして、まず子どものことから始めていくことである。

出典:世界子供白書 2012

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