令和4年版 環境・循環型社会・生物多様性白書  水環境、土壌環境、地盤環境、海洋環境、大気環境の保全に関する取組

第4章 水環境、土壌環境、地盤環境、海洋環境、大気環境の保全に関する取組

第1節 健全な水循環の維持・回復

1 流域における取組

(1)流域マネジメントの推進等
「水循環基本計画」(2020年6月閣議決定)に基づき「流域マネジメント」の更なる展開を図るため、2021年度は、流域マネジメントの取組の鍵となる「普及啓発・広報」及び「地下水」をテーマに取組事例を紹介した「流域マネジメントの事例集」を取りまとめて公表し、全国に展開しました。また、流域マネジメントに取り組む、又は取り組む予定の地方公共団体等を対象に、知識や経験を有するアドバイザーの現地派遣やオンライン会議を通じて、勉強会の開催や流域水循環計画の策定・実施に必要となる技術的な助言・提言を行う「水循環アドバイザー制度」を活用して、支援を実施しました。さらに、流域マネジメントを国民的な活動とするため、「水循環×気候変動」をテーマに、水循環シンポジウムを開催しました。

(2)環境保全上健全な水循環の確保
水循環基本法(平成26年法律第16号)の施行を受け、広く国民に向けた情報発信等を目的とした官民連携プロジェクト「ウォータープロジェクト」の取組として、水循環の維持又は回復に関する取組と情報発信を促進しました。

流域別下水道整備総合計画等の水質保全に資する計画の策定の推進に加え、下水道法施行令(昭和34年政令第147号)等の規定や、下水処理水の再利用の際の水質基準等マニュアルに基づき、適切な下水処理水等の有効利用を進めるとともに、雨水の貯留浸透や再利用を推進しました。また、汚濁の著しい河川等における水質浄化等を推進しました。

2 森林、農村等における取組

第2章第3節を参照。

3 水環境に親しむ基盤づくり

河口から水源地まで様々な姿を見せる河川とそれにつながるまちを活性化するため、地域の景観、歴史、文化及び観光基盤等の資源や地域の創意に富んだ知恵を活かし、市町村、民間事業者及び地元住民と河川管理者の連携の下、河川空間とまち空間が融合した良好な空間形成を目指す「かわまちづくり」を推進しました。

約650の市民団体等により全国の約5,500地点で実施された「第18回身近な水環境の全国一斉調査」の支援等、住民との協働による河川水質調査を新型コロナウイルス感染症感染予防対策を行った上で実施しました。

第2節 水環境の保全

1 環境基準の設定、排水管理の実施等

(1)環境基準の設定等
水質汚濁に係る環境基準のうち、健康項目については、カドミウム、鉛等の重金属類、トリクロロエチレン等の有機塩素系化合物、シマジン等の農薬等、公共用水域において27項目、地下水において28項目が設定されています。このうち六価クロムについては、食品安全委員会において六価クロムの耐容一日摂取量が評価されたこと等を踏まえ、環境基準値を0.05mg/Lから0.02mg/Lに強化することとしました(2022年4月施行)。また、要監視項目(公共用水域27項目、地下水25項目)など、環境基準以外の項目については、水質測定や知見の集積を行いました。

生活環境項目については、生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、全窒素、全りん、全亜鉛等の基準が定められており、利水目的等から水域ごとに環境基準の類型指定を行っています。このうち大腸菌群数については、より的確にふん便汚染を捉えるため、大腸菌数に見直すこととしました(2022年4月施行)。また、2016年3月に生活環境項目に追加された底層溶存酸素量については、国が類型指定を行うこととされている水域のうち、東京湾及び琵琶湖について水域類型の指定を行いました(2021年12月施行)。

(2)水環境の効率的・効果的な監視等の推進
水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)に基づき、国及び地方公共団体は環境基準に設定されている項目について、公共用水域及び地下水の水質の常時監視を行っています。また、要監視項目についても、都道府県等の地域の実情に応じ、公共用水域等において水質測定が行われています。

水質汚濁防止法が2013年に改正されたことを受けて、我が国は2014年度から全国の公共用水域及び地下水、それぞれ110地点において、放射性物質の常時監視を実施しています。モニタリング結果は、専門家による評価を経て公表しました。

2020年度の全国47都道府県の公共用水域、地下水の各110地点における放射性物質のモニタリングの結果では、水質及び底質における全β放射能及び検出されたγ線放出核種は、過去の測定値の傾向の範囲内でした。

また、2011年から福島県及び周辺地域の水環境における放射性物質のモニタリングを継続的に実施しています。公共用水域のうち河川、沿岸域の水質からは近年放射性セシウムは検出されておらず、湖沼の水質については2020年度は163地点のうち2地点のみの検出となっています。地下水中の放射性セシウムについては、2011年度に福島県において検出されたのみで、2012年度以降検出されていません。

ALPS(アルプス)処理水に係る海域モニタリングについては第1部第4章第4節を参照。

(3)公共用水域の水質汚濁
ア 健康項目
水質汚濁に係る環境基準のうち、人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)については、2020年度の公共用水域における環境基準達成率が99.1%(2019年度は99.2%)となりました。

イ 生活環境項目
生活環境の保全に関する環境基準(生活環境項目)のうち、有機汚濁の代表的な水質指標であるBOD又はCODの環境基準の達成率は、2020年度は88.8%(2019年度89.2%)となっています。水域別では、河川93.5%(同94.1%)、湖沼49.7%(同50.0%)、海域80.7%(同80.5%)となり、湖沼では依然として達成率が低くなっています(図4-2-1)。

閉鎖性海域の海域別のCODの環境基準達成率は、2020年度は、東京湾は63.2%、伊勢湾は62.5%、大阪湾は66.7%、大阪湾を除く瀬戸内海は77.0%となっています(図4-2-2)。

全窒素及び全りんの環境基準の達成率は、2020年度は湖沼52.8%(同49.2%)、海域88.1%(同91.4%)となり、湖沼では依然として低い水準で推移しています。閉鎖性海域の海域別の全窒素及び全りんの環境基準達成率は、2020年度は東京湾は100%(6水域中6水域)、伊勢湾は85.7%(7水域中6水域)、大阪湾は100%(3水域中3水域)、大阪湾を除く瀬戸内海は91.4%(58水域中53水域)となっています。

2020年の赤潮の発生状況は、東京湾27件、伊勢湾23件、瀬戸内海58件、有明海41件となっています。また、これらの海域では貧酸素水塊や青潮の発生も見られました。

(4)地下水質の汚濁
2020年度の地下水質の概況調査の結果では、調査対象井戸(3,103本)の5.9%(184本)において環境基準を超過する項目が見られました。調査項目別に見ると、過剰施肥、不適正な家畜排せつ物管理及び生活排水処理等が原因と見られる硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の環境基準超過率が3.3%と最も高くなっています。さらに、汚染源が主に事業場であるトリクロロエチレン等の揮発性有機化合物(VOC)についても、依然として新たな汚染が発見されています。また、汚染井戸の監視等を行う継続監視調査の結果では、4,143本の調査井戸のうち1,782本において環境基準を超過していました(図4-2-3、図4-2-4、図4-2-5)。

(5)排水規制の実施
公共用水域の水質保全を図るため、水質汚濁防止法により特定事業場から公共用水域に排出される水については、全国一律の排水基準が設定されていますが、環境基準の達成のため、都道府県条例においてより厳しい上乗せ基準の設定が可能であり、全ての都道府県において上乗せ排水基準が設定されています。

一般排水基準を直ちに達成することが困難であるとの理由により、暫定排水基準が適用されている項目・業種について見直しの検討を行い、カドミウムについては2021年12月1日以降、亜鉛については一部業種を除き2021年12月11日以降に、一般排水基準に移行することを決定しました。

2 湖沼

湖沼については、富栄養化対策として、水質汚濁防止法に基づき、窒素及びりんに係る排水規制を実施しており、水質汚濁防止法の規制のみでは水質保全が十分でない湖沼については、湖沼水質保全特別措置法(昭和59年法律第61号)に基づき、環境基準の確保の緊要な湖沼を指定するとともに、「湖沼水質保全計画」を策定し、下水道整備、河川浄化等の水質の保全に資する事業、各種汚濁源に対する規制等の措置等を推進しています。また、湖辺域の植生や水生生物の保全など湖沼の水環境の適正化に向けた取組を行いました。


琵琶湖を健全で恵み豊かな湖として保全及び再生を図ることなどを目的とする琵琶湖の保全及び再生に関する法律(平成27年法律第75号)に基づき主務大臣が定めた琵琶湖の保全及び再生に関する基本方針及び滋賀県が策定した「琵琶湖保全再生施策に関する計画」等を踏まえ、関係機関と連携して琵琶湖保全再生施策の推進に関する各種取組が行われています。

3 閉鎖性海域

(1)栄養塩類の適正管理
閉鎖性が高く富栄養化のおそれのある海域として、全国で88の閉鎖性海域を対象に、水質汚濁防止法に基づき、窒素及びりんに係る排水規制を実施しています。

下水道終末処理場からの放流水に含まれる窒素・りんの削減目標量及び削減方法を定めた流域別下水道整備総合計画に基づき下水道の整備を推進するとともに、必要に応じて、窒素やりんの能動的管理に関する取組を進めました。

(2)水質総量削減
人口、産業等が集中した広域的な閉鎖性海域である東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海を対象に、COD、窒素含有量及びりん含有量を対象項目として、当該海域に流入する総量の削減を図る水質総量削減を実施しています。具体的には、一定規模以上の工場・事業場から排出される汚濁負荷量について、都府県知事が定める総量規制基準の遵守指導による産業排水対策を行うとともに、地域の実情に応じ、下水道、浄化槽、農業集落排水施設、コミュニティ・プラント等の整備等による生活排水対策、合流式下水道の改善、その他の対策を引き続き推進しました。

これまでの取組の結果、陸域からの汚濁負荷量は着実に減少し、これらの閉鎖性海域の水質は改善傾向にありますが、COD、全窒素・全りんの環境基準達成率は海域ごとに異なり(図4-2-7)、赤潮や貧酸素水塊といった問題が依然として発生しています。また、「きれいで豊かな海」を目指す観点から、干潟・藻場の保全・再生等を通じた生物の多様性及び生産性の確保等の総合的な水環境改善対策の必要性が指摘されています。

このような状況及び課題等を踏まえ、2022年1月に第9次総量削減基本方針を策定しました。本基本方針に基づき、関係都府県において総量削減計画の策定及び総量規制基準の設定が進められています。

(3)瀬戸内海の環境保全
瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和48年法律第110号)に基づき、瀬戸内海の有する多面的な価値及び機能が最大限に発揮された「豊かな海」を目指し、湾・灘ごとの水環境の変化状況等の分析、藻場・干潟分布状況調査、気候変動による影響把握及び適応策の検討、水環境等と水産資源等の関係に係る調査・検討を進めています。

同法に基づき、瀬戸内海における埋立て等については、海域環境、自然環境及び水産資源保全上の見地等から特別な配慮を求めています。同法施行以降、2021年11月1日までの間に埋立ての免許又は承認がなされた公有水面は、4,999件、13,692.9ha(うち2020年11月2日以降の1年間に8件、3.6ha)になります。

2017年の瀬戸内海環境保全特別措置法の一部を改正する法律(平成27年法律第78号)の附則第2条による栄養塩類の管理の在り方についての検討及び第3条による特定施設の設置の規制の在り方等については、改正法施行後5年を目途に検討し、結果を踏まえて所要の措置を講ずることとなりました。

これを受け、2017年度から中央環境審議会において、関係省庁、関係府県等の各種調査研究の成果の収集・整理が行われ、2020年3月に、中央環境審議会答申が取りまとめられました。

この答申に記載された方策の実施に向けて、法令の改正に係る事項について、見直しの方向性を示すことを目的として、2021年1月に中央環境審議会意見具申が取りまとめられ、それを踏まえて同法改正にかかる検討を進め、同年2月に瀬戸内海環境保全措置法の一部を改正する法律案を国会に提出し、2021年6月に瀬戸内海環境保全特別措置法の一部を改正する法律(令和3年法律第59号)が成立・公布され、2022年4月に施行されました。この改正により、基本理念への気候変動影響を踏まえることの追加の他、栄養塩類管理制度の創設、自然海浜保全地区の指定対象拡充、漂流ごみ等の発生抑制等に関する責務規定が新たに盛り込まれました。

また、この改正を受け、同法に基づく「瀬戸内海環境保全基本計画」を2022年2月に閣議決定し、変更しました。

(4)有明海及び八代海等の環境の保全及び改善
有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律(平成14年法律第120号)に基づき設置された有明海・八代海等総合調査評価委員会が2017年3月に取りまとめた報告を踏まえ、赤潮・貧酸素水塊の発生や底質環境、魚類等の生態系回復に関する調査等を実施しました。また、関係省庁等が実施した再生方策の実施状況等を整理し、次期委員会報告に向けて必要な課題等を取りまとめた「中間取りまとめ」が、2022年3月に有明海・八代海等総合調査評価委員会により行われました。

(5)里海づくりの推進
里海づくりの手引書や全国の里海づくり活動の取組状況等について、ウェブサイト「里海ネット」で情報発信を行っています。

4 汚水処理施設の整備

汚水処理施設整備については、現在、2014年1月に国土交通省、農林水産省、環境省の3省で取りまとめた「持続的な汚水処理システム構築に向けた都道府県構想策定マニュアル」を参考に、都道府県において、早期に汚水処理施設の整備を概成することを目指し、また中長期的には汚水処理施設の改築・更新等の運営管理の観点で、汚水処理に係る総合的な整備計画である「都道府県構想」の見直しが進められています。2020年度末で汚水処理人口普及率は92.1%となりましたが、残り約990万人の未普及人口の解消に向け(図4-2-8)、「都道府県構想」に基づき、浄化槽、下水道、農業等集落排水施設、コミュニティ・プラント等の各種汚水処理施設の整備を推進しています。

浄化槽については、「循環型社会形成推進地域計画」等に基づく市町村の浄化槽整備事業に対する国庫助成により、整備を推進しました。特に、2019年度より単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換に伴う宅内配管工事部分についても浄化槽整備と併せて助成対象範囲とするとともに、省エネ型浄化槽の導入と単独処理浄化槽の転換等を併せて促進する市町村の浄化槽整備事業に対しては、助成率を引き上げるなど、浄化槽整備事業に対する一層の支援を行っています。2020年度においては、全国約1,700の市町村のうち約1,200の市町村で浄化槽の整備が進められました。

また今般、単独処理浄化槽の合併処理浄化槽への転換と浄化槽の管理の向上について、議員立法により浄化槽法の一部を改正する法律(令和元年法律第40号。以下「改正浄化槽法」という。)が、2019年6月に成立・公布され、2020年4月に施行されました。

改正浄化槽法において、緊急性の高い単独処理浄化槽の合併処理浄化槽への転換に関する措置、浄化槽処理促進区域の指定、公共浄化槽の設置に関する手続、浄化槽の使用の休止手続、浄化槽台帳の整備の義務付け、協議会の設置、浄化槽管理士に対する研修の機会の確保、環境大臣の責務に関する仕組みが新たに創設されました。

下水道整備については、「社会資本整備重点計画」に基づき、人口が集中している地区等の整備効果の高い区域において重点的下水道整備を行うとともに、閉鎖性水域における水質保全のため、既存施設の一部改造や運転管理の工夫による段階的な高度処理も含め、下水道における高度処理を推進しました。

合流式下水道については、合流式下水道緊急改善事業等を活用し、緊急的・総合的に合流式下水道の改善を推進しました。

下水道の未普及対策や改築対策として、「下水道クイックプロジェクト」を実施し、従来の技術基準に捉われず地域の実状に応じた低コスト、早期かつ機動的な整備及び改築が可能な新たな手法の積極的導入を推進しており、施工が完了した地域では大幅なコスト縮減や工期短縮等の効果を実現しました。

農業集落排水事業については、農業集落におけるし尿、生活雑排水等を処理する農業集落排水施設の整備又は改築を実施するとともに、既存施設について、長寿命化や老朽化対策及び維持管理の効率化を適時・適切に進めるため、地方公共団体による機能診断及び計画策定の取組を支援しました。

水質汚濁防止法では生活排水対策の計画的推進等が規定されており、同法に基づき都道府県知事が重点地域の指定を行っています。2021年3月末時点で、41都府県、209地域、333市町村が指定されており、生活排水対策推進計画による生活排水対策が推進されました。

5 地下水

水質汚濁防止法に基づいて、地下水の水質の常時監視、有害物質の地下浸透制限、事故時の措置、汚染された地下水の浄化等の措置が取られています(図4-2-9)。また、2011年6月に水質汚濁防止法が改正され、地下水汚染の未然防止を図るための制度が創設されました。改正後の水質汚濁防止法においては、届出義務の対象となる施設の拡大、施設の構造等に関する基準の遵守義務、定期点検の義務等に関する規定が新たに設けられました。制度の円滑な施行のため、構造等に関する基準及び定期点検についてのマニュアルや、対象施設からの有害物質を含む水の地下浸透の有無を確認できる検知技術についての事例集等を作成・周知し、地下水汚染の未然防止施策を推進しました。


環境基準超過率が最も高い硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による地下水汚染対策については、過剰施肥、不適正な家畜排せつ物管理及び生活排水処理等が主な汚染原因であると見られることから、地下水保全のための硝酸性窒素等地域総合対策の推進のため、「硝酸性窒素等地域総合対策ガイドライン」の周知を図るとともに、地域における窒素負荷低減の取組の技術的な支援等を行いました。

第3節 アジアにおける水環境保全の推進

1 アジア水環境パートナーシップ(WEPA)

WEPA参加国の要請に基づく水環境改善プログラムとして、カンボジアにおける汚濁負荷量把握能力の向上やラオスにおける生活排水対策の促進等についての支援を行いました。

2 アジア水環境改善モデル事業

我が国企業による海外での事業展開を通じ、アジア等の水環境の改善を図ることを目的に、2011年度からアジア水環境改善モデル事業を実施しています。2021年度は、過年度に実施可能性調査を実施した4件(インドネシア1件、マレーシア1件、フィジー1件、ラオス1件)の現地実証試験やビジネスモデルの検討を実施したほか、新たに公募により選定された民間事業者が、ベトナムにおける「繊維染色産業における工場の排水リサイクル利用事業」の実施可能性調査を実施しました。

第4節 土壌環境の保全

1 土壌環境の現状

土壌汚染については、土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)に基づき、有害物質使用特定施設の使用の廃止時、一定規模以上の土地の形質変更の届出の際に、土壌汚染のおそれがあると都道府県知事等が認めるときに土壌汚染状況調査が行われています。また、土壌汚染対策法には基づかないものの、売却の際や環境管理等の一環として自主的な土壌汚染の調査が行われることもあり、土壌汚染対策法ではその結果を申請できる制度も存在します。

都道府県等が把握している調査結果では、2020年度に土壌の汚染に係る環境基準(以下「土壌環境基準」という。)又は土壌汚染対策法の土壌溶出量基準又は土壌含有量基準を超える汚染が判明した事例は913件となっており、同法や都道府県等の条例に基づき必要な対策が講じられています(図4-4-1)。なお、事例を有害物質の項目別で見ると、ふっ素、鉛、砒(ひ)素等による汚染が多く見られます。

農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(昭和45年法律第139号)に定める特定有害物質(カドミウム、銅及び砒(ひ)素)による農用地の土壌汚染の実態を把握するため、汚染のおそれのある地域を対象に細密調査が実施されており、2020年度は5地域100.1haにおいて調査が実施されました。これまでに基準値以上の特定有害物質が検出された、又は検出されるおそれが著しい地域(以下「基準値以上検出等地域」という。)は、2020年度末時点で累計134地域7,592haとなっており、同法に基づく対策等が講じられています。

ダイオキシン類については第5章第1節4を参照。

2 環境基準等の見直し

土壌環境基準については、土壌環境機能のうち、地下水等の摂取に係る健康影響を防止する観点と、食料を生産する機能を保全する観点から設定されており、既往の知見や関連する諸基準等に即し、現在29項目について設定されています。

2019年度には、中央環境審議会においてカドミウム及びトリクロロエチレンの環境基準及び土壌溶出量基準等について審議が行われ、2020年1月に、「土壌の汚染に係る環境基準及び土壌汚染対策法に基づく特定有害物質の見直し等について(第4次答申)」が答申されました。この答申を踏まえたカドミウム及びトリクロロエチレンの環境基準及び土壌溶出量基準等の改正に係る省令等について、2021年4月に施行されました。

3 市街地等の土壌汚染対策

土壌汚染対策法に基づき、2020年度には、有害物質使用特定施設が廃止された土地の調査497件、一定規模以上の土地の形質変更の届出の際に、土壌汚染のおそれがあると都道府県知事等が認め実施された調査627件、土壌汚染による健康被害が生ずるおそれがある土地の調査0件、自主調査217件、汚染土壌処理施設の廃止又は許可が取り消された際の調査1件の合計1,342件行われ、同法施行以降の調査件数は、2020年度までに10,969件となりました。調査の結果、土壌溶出量基準又は土壌含有量基準を超過しており、かつ土壌汚染の摂取経路があり、健康被害が生ずるおそれがあるため汚染の除去等の措置が必要な地域(以下「要措置区域」という。)として、2020年度末までに772件指定されています(772件のうち534件は解除)。また、土壌溶出量基準又は土壌含有量基準を超過したものの、土壌汚染の摂取経路がなく、汚染の除去等の措置が不要な地域(以下「形質変更時要届出区域」という。)として、2020年度末までに4,458件指定されています(4,458件のうち1,648件は解除)(図4-4-2)。


要措置区域においては、都道府県知事が汚染除去等計画の作成及び提出を指示することとされており、形質変更時要届出区域においては、土地の形質の変更を行う場合には、都道府県知事への届出が行われることとされています。また、汚染土壌を搬出する場合には、都道府県等へ届出が行われた上で、汚染土壌処理施設への搬出を管理票を用いて行うこととされており、これらにより、汚染された土地や土壌の適切な管理がなされるよう推進しました。

土壌汚染対策法に基づく土壌汚染の調査を適確に実施するため、調査を実施する機関は環境大臣又は都道府県知事の指定を受ける必要がありますが、2022年3月末時点で696件がこの指定を受けています。また、指定調査機関には、技術管理者の設置が義務付けられており、その資格取得のための土壌汚染調査技術管理者試験を2021年11月に実施しました。そのほか、低コスト・低負荷型の調査・対策技術の普及を促進するための実証試験等を行いました。

土壌汚染対策法は、土壌汚染に関する適切なリスク管理を推進するため、土壌汚染対策法の一部を改正する法律(平成29年法律第33号)により改正され、改正土壌汚染対策法が2019年4月に全面施行されました。改正土壌汚染対策法の着実な施行のため、2021年度は都道府県等に法制度等に関する解説資料を提供するなど、普及・啓発を行いました。

4 農用地の土壌汚染対策

農用地の土壌汚染対策は、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律に基づいて実施されています。基準値以上検出等地域の累計面積のうち、対策地域の指定がなされた地域の累計面積は2020年度末時点で6,609ha、対策事業等(県単独事業、転用を含む)が完了している地域の面積は7,144haであり、基準値以上検出等地域の面積の94.1%になります。

第5節 地盤環境の保全

地盤沈下は、地下水の過剰な採取により地下水位が低下し、粘性土層が収縮するために生じます。2020年度に地盤沈下観測のための水準測量が実施された22都道府県28地域の沈下の状況は、図4-5-1のとおりでした。

2020年度の地盤沈下の経年変化は図4-5-2に示すとおりであり、2020年度までに地盤沈下が認められている地域は39都道府県64地域となっています。かつて著しい地盤沈下を示した東京都区部、大阪市、名古屋市等では、地下水採取規制等の結果、長期的には地盤沈下は沈静化の傾向をたどっています。しかし、消融雪地下水採取地、水溶性天然ガス溶存地下水採取地など、一部地域では依然として地盤沈下が発生しています。

長年継続した地盤沈下により、建造物、治水施設、港湾施設、農地等に被害が生じた地域も多く、海抜ゼロメートル地域等では洪水、高潮、津波等による甚大な災害の危険性のある地域も少なくありません。

地盤沈下の防止のため、工業用水法(昭和31年法律第146号)及び建築物用地下水の採取の規制に関する法律(昭和37年法律第100号)に基づく地下水採取規制の適切な運用を図りました。

雨水浸透ますの設置など、地下水涵(かん)養の促進等による健全な水循環の確保に資する事業に対して補助を実施しました。

濃尾平野、筑後・佐賀平野及び関東平野北部の3地域については、地盤沈下防止の施策の円滑な実施を図るため、協議会において情報交換を行いました。

持続可能な地下水の保全と利用の方策として、「地下水保全」ガイドライン・事例集の周知を図りました。また、全国から地盤沈下に関する測量情報を取りまとめた「全国の地盤沈下地域の概況」及び、地下水位の状況や地下水採取規制に関する条例等の各種情報を整理した「全国地盤環境情報ディレクトリ」を公表しています。

地下水・地盤環境の保全に留意しつつ地中熱利用の普及を促進するため、「地中熱利用にあたってのガイドライン」の改訂に向け新たな情報収集等を行いました。また、地中熱を分かりやすく説明した一般・子供向けのパンフレットや動画コンテンツを新たに制作し、ホームページで公表しています。

第6節 海洋環境の保全

1 海洋ごみ対策

海洋ごみ(漂流・漂着・海底ごみ)は、生態系を含めた海洋環境の悪化や海岸機能の低下、景観への悪影響、船舶航行の障害、漁業や観光への影響等、様々な問題を引き起こしています。また、近年、マイクロプラスチック(5mm以下の微細なプラスチックごみ)による海洋生態系への影響が懸念されており、世界的な課題となっています。これらの問題に対し、美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境並びに海洋環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律(平成21年法律第82号)及び同法に基づく基本方針、海洋プラスチックごみ対策アクションプラン、その他関係法令等に基づき、以下の海洋ごみ対策を実施しています。

海洋ごみの回収・処理や発生抑制対策の推進のため、海岸漂着物等地域対策推進事業により地方公共団体への財政支援を行いました。また、通常回収が難しい漂流・海底ごみ対策としては、2020年度に漁業者等がボランティアで回収した海洋ごみを地方公共団体が処理する場合の費用を、都道府県あたり最大1,000万円まで定額補助する制度を新設し、漁業者による取組も進めています。また、2021年8月に発生した海底火山「福徳岡ノ場」の噴火に伴って大量に漂着した軽石の回収・処理についても本事業による支援を行っています。さらに、洪水、台風等により異常に堆積した海岸漂着ごみや流木等が海岸保全施設の機能を阻害することとなる場合には、その処理をするため、災害関連緊急大規模漂着流木等処理対策事業による支援も行っています。

漂流ごみについては、船舶航行の安全を確保し、海域環境の保全を図るため、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海及び有明海・八代海等の閉鎖性海域において、海域に漂流する流木等のごみの回収等を行いました。また、2021年8月の大雨に伴い、有明海・八代海等で大量に漂流木等が発生し、船舶航行等に支障が及ぶおそれがあったため、海洋環境整備船が漁業者と連携して回収作業を実施しました。さらに海底火山の噴火に伴って発生した軽石の除去作業を行いました。

また、海洋プラスチックごみの削減に向け、プラスチックとの賢い付き合い方を全国的に推進する「プラスチック・スマート」において、企業、地方公共団体、NGO等の幅広い主体から、不必要なワンウェイのプラスチックの排出抑制や代替品の開発・利用、分別回収の徹底など、海洋プラスチックごみの発生抑制に向けた取組を募集、特設サイトや様々な機会において積極的に発信しました。

海洋ごみの量や種類などの実態把握調査については、2019年度までの調査結果を踏まえて、2020年度に調査方針を見直し、同年度に地方公共団体向けの漂着ごみ組成調査ガイドラインを作成しました。地方公共団体の協力の下、同ガイドラインに基づき漂着ごみの組成や存在量、これらの経年変化の把握を進めています。

海洋中のプラスチックごみやこれらに添加・吸着する化学物質が生物・生態系に及ぼす評価等については、まだ十分な科学的な知見が蓄積されていないことから、2020年6月「海洋プラスチックごみに関する既往研究と今後の重点課題(生物・生態系影響と実態)報告書」を公表し、「生物・生態系影響」や「実態」に関する調査研究等を進めています。科学的知見の蓄積と並行して発生・流出抑制対策を推進することも重要であり、2021年度には「マイクロプラスチック削減に向けたグッド・プラクティス集」を公表し、日本企業が有する発生抑制・流出抑制・回収に資する先進的な技術・取組を、国内外に発信しています。

マイクロプラスチックのモニタリング手法の国際的な調和に向けては、実証事業や国内外の専門家を招いた会合を開催して議論を行い、2019年度に「漂流マイクロプラスチックのモニタリング手法調和ガイドライン」を公表しました。2020年度には途上国等も利用しやすいよう改訂しています。さらに海洋ごみに関する世界的モニタリングデータ共有システムの整備を国際的に提案し、国内外の専門家の助言を得ながら、データ共有システム及び世界的なデータ集約のあり方について検討を行っています。

船舶起源の海洋プラスチックごみの削減に向けて、海事関係者を対象とする講習会等を通じ、プラスチックごみを含む船上廃棄物に関する規制等について指導を実施しました。

2 海洋汚染の防止等

海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号。以下「海洋汚染等防止法」という。)では、ロンドン条約1996年議定書を国内担保するため、海洋投入処分及びCO2の海底下廃棄に係る許可制度を導入し、その適切な運用を図っています。

船舶から排出されるバラスト水を適切に管理し、バラスト水を介した有害水生生物及び病原体の移動を防止することを目的として、2004年2月に国際海事機関(IMO)において採択された船舶バラスト水規制管理条約が2017年9月に発効し、同条約を国内担保する改正海洋汚染等防止法が同年同月に施行されました。同法に基づき、有害水バラスト処理設備の確認等を着実に実施しました。

中国、韓国、ロシアと我が国の4か国による北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)に基づき、当該海域の状況を把握するため、人工衛星を利用したリモートセンシング技術による海洋環境モニタリング手法に係る研究等の取組等を実施しています。

船舶によりばら積み輸送される有害液体物質等に関し、船舶汚染防止国際条約(MARPOL条約)附属書IIに基づき、環境大臣は有害性の査定がなされていない液体物質(未査定液体物質)について、海洋環境保全の見地から査定を行っています。

1990年の油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約及び2000年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び協力に関する議定書に基づき、「油等汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」を策定しており、環境保全の観点から油等汚染事件に的確に対応するため、緊急措置の手引書の備付けの義務付け並びに沿岸海域環境保全情報の整備、脆(ぜい)弱沿岸海域図の公表、関係地方公共団体等に対する傷病鳥獣の救護及び事件発生時対応の在り方に対する研修・訓練を実施しました。

加えて、海洋汚染等防止法等にのっとり、船舶の事故等により発生した浮流油について、原因者のみでは十分な対応がとられていない又は時間的猶予がない場合等に、被害の局限化を図るため、油回収装置及び航走拡散等により油の防除を行っています。また、油及び有害液体物質の流出への対処能力強化を推進するため、資機材の整備、現場職員の訓練及び研修を実施したほか、関係機関との合同訓練を実施するなど、連携強化を図り、迅速かつ的確な対処に努めています。2021年8月青森県八戸港沖で発生した貨物船座礁に伴う油流出事故の際には、北陸地方整備局所属の大型浚渫(しゅんせつ)兼油回収船「白山」が出動し、漂流油の回収や航走及び放水拡散を行いました。

3 生物多様性の確保等

第2章第4節を参照。

4 沿岸域の総合的管理

第2章第4節を参照。閉鎖性海域に係る取組は第4章第2節3を参照。

5 気候変動・海洋酸性化への対応

海水温上昇や海洋酸性化等の海洋環境や海洋生態系に対する影響を的確に把握するため、海洋における観測・監視を継続的に実施しました。

6 海洋の開発・利用と環境の保全との調和

CO2の海底下廃棄に関しては、2021年3月に、苫小牧沖海底下CCS実証試験事業(経済産業省事業)について、2回目となる環境大臣の許可発給を行いました。同事業の適正な実施のため、2011年度から、実証試験海域における海洋生態系及び海水の化学的性状について調査、利用可能な最新・最善の技術(BAT)の充実又は国際的な動向等を踏まえ、海洋環境保全の観点から検討し、その結果を当該許可に当たっての審査に活用しました。

7 海洋環境に関するモニタリング・調査研究の推進

日本周辺の海洋環境の経年的変化を捉え、総合的な評価を行うため、水質、底質等の海洋環境モニタリング調査を実施しています。2020年度は、陸域起源の汚染を対象とした調査を富山湾から沖合の海域で実施した結果、一部の項目で過年度調査結果より高い値が検出されましたが、全体としては、過年度調査結果とおおむね同程度又は低い値でした。今後も引き続き定期的な監視を行い、汚染の状況に大きな変化がないか把握していくこととします。

最近5か年(2017年~2021年)の日本周辺海域における海洋汚染(油、廃棄物等)の発生確認件数の推移は図4-6-1のとおりです。2021年は493件と2020年に比べ40件増加しました。これを汚染物質別に見ると、油による汚染が332件で前年に比べ46件増加、廃棄物による汚染が139件で前年に比べ19件減少、有害液体物質による汚染が14件で前年に比べ13件増加、その他(工場排水等)による汚染が8件で前年と同数でした。

東京湾・伊勢湾・大阪湾における海域環境の観測システムを強化するため、各湾でモニタリングポスト(自動連続観測装置)により、水質の連続観測を行いました。

8 監視取締りの現状

海上環境事犯の一掃を図るため、沿岸調査や情報収集の強化、巡視船艇・航空機の効果的な運用等により、日本周辺海域及び沿岸の監視取締りを行っています。また、潜在化している廃棄物・廃船の不法投棄事犯や船舶からの油不法排出事犯など、悪質な海上環境事犯の徹底的な取締りを実施しました。最近5か年の海上環境関係法令違反送致件数は図4-6-2のとおりで、2021年は661件を送致しています。

第7節 大気環境の保全

1 大気環境の現状

(1)微小粒子状物質
ア 環境基準の達成状況
2020年度の微小粒子状物質(PM2.5)の有効測定局数は、一般環境大気測定局(以下「一般局」という。)が844局、自動車排出ガス測定局(以下「自排局」という。)が237局であり、環境基準達成率は、一般局98.3%、自排局98.3%でした(表4-7-1)。また、年平均値は、一般局9.5μg/m3、自排局10.0μg/m3でした。地域別の環境基準達成率の傾向を見ると、中国・四国地方の瀬戸内海に面する地域、九州地方の有明海に面する地域では依然として環境基準達成率の低い地域があります(図4-7-1)。


イ PM2.5注意喚起の実施状況
2013年2月に環境基準とは別に策定された「注意喚起のための暫定的な指針」に基づき、日平均値が70μg/m3を超えると予想される場合に都道府県等が注意喚起を実施しています。2020年度の注意喚起実施件数は4件でした。

(2)光化学オキシダント
ア 環境基準の達成状況
2020年度の光化学オキシダントの測定局数は、一般局が1,155局、自排局が31局でした。環境基準達成率は、一般局0.2%、自排局0%であり、依然として極めて低い水準となっています(図4-7-2)。一方、昼間の測定時間を濃度レベル別の割合で見ると、1時間値が0.06ppm以下の割合は95%(一般局)でした(図4-7-3)。

光化学オキシダント濃度の長期的な改善傾向を評価するために、中央環境審議会大気・騒音振動部会微小粒子状物質等専門委員会が提言した新たな指標(8時間値の日最高値の年間99パーセンタイル値の3年平均値)によれば、2006~2008年度頃から域内最高値は減少傾向でしたが、近年ではほぼ横ばい傾向となっています(図4-7-4)。

イ 光化学オキシダント注意報等の発令状況等
2021年の光化学オキシダント注意報等の発令延日数(都道府県を一つの単位として注意報等の発令日数を集計したもの)は29日(12都道府県)であり、月別に見ると、8月が最も多く17日、次いで6月が8日でした。また、光化学大気汚染によると思われる被害届出人数(自覚症状による自主的な届出による)は1県で合計4人でした(図4-7-5)。

ウ 非メタン炭化水素の測定結果
2020年度の非メタン炭化水素の午前6時~午前9時の3時間平均値の年平均値は、一般局0.11ppmC、自排局0.13ppmCであり、近年、一般局、自排局共に緩やかな低下傾向にあります。

(3)その他の大気汚染物質
2020年度の二酸化窒素(NO2)の環境基準達成率は、一般局100%、自排局100%、浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準達成率は、一般局99.9%、自排局100%、二酸化硫黄(SO2)の環境基準達成率は、一般局99.7%、自排局は100%、一酸化炭素(CO)の環境基準達成率は、一般局、自排局共に100%でした。

(4)有害大気汚染物質
環境基準が設定されている4物質に係る測定結果(2020年度)は表4-7-2のとおりで、4物質は全ての地点で環境基準を達成しています(ダイオキシン類に係る測定結果については、第5章第1節4(1)表5-1-1を参照)。

指針値(環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るための指針となる数値)が設定されている物質のうち、ヒ素及びその化合物は6地点、1,2-ジクロロエタンは1地点で指針値を超過しており、アクリロニトリル、アセトアルデヒド、塩化ビニルモノマー、塩化メチル、クロロホルム、水銀及びその化合物、ニッケル化合物、1,3-ブタジエン、マンガン及びその化合物は全ての地点で指針値を達成しています。

(5)放射性物質
2020年度の大気における放射性物質の常時監視結果として、全国10地点における空間放射線量率の測定結果は、過去の調査結果と比べて特段の変化は見られませんでした。

(6)アスベスト(石綿)
石綿による大気汚染の現状を把握し、今後の対策の検討に当たっての基礎資料とするとともに、国民に対し情報提供していくため、建築物の解体工事等の作業現場周辺等で、大気中の石綿濃度の測定を実施しました(2020年度の対象地点は全国45地点)。2020年度の調査結果では、多くの地点において、石綿以外の繊維を含む総繊維について特に高い濃度は見られませんでした。一方、旧石綿製品製造事業場等及び一部の解体現場等において石綿繊維について比較的高い濃度が見られたため、事業者への指導等を行うとともに、2021年度も引き続き調査を行いました。

(7)酸性雨・黄砂
ア 酸性雨
2021年度に取りまとめた2020年のモニタリング結果によると、我が国の降水は引き続き酸性化した状態(全平均値pH4.96)にあり、欧米等と比べて低いpHを示すが、中国の大気汚染物質排出量の減少とともにpHの上昇(酸の低下)の兆候が見られました。また、生態系への影響については、大気汚染等が原因と見られる森林の衰退は確認されず、モニタリングを実施しているほとんどの湖沼で、酸性化からの回復の兆候が見られました。

最近5か年度における降水中のpHの推移は図4-7-6のとおりです。

イ 黄砂
我が国における黄砂の2021年の観測日数は、気象庁の公表によると16日でした。黄砂は過放牧や耕地の拡大等の人為的な要因も影響していると指摘されています。年により変動が大きく、長期的な傾向は明瞭ではありません。

2 窒素酸化物・光化学オキシダント・PM2.5等に係る対策

大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)に基づく固定発生源対策及び移動発生源対策を適切に実施するとともに、光化学オキシダント及びPM2.5の生成の原因となり得る窒素酸化物(NOX)、揮発性有機化合物(VOC)等の排出対策を進めています。また、大気保全施策の推進等に必要な基礎資料となる常時監視体制を整備しています。

PM2.5対策については、光化学オキシダント対策と共通する課題が多いことにも留意しつつ、国内対策と越境汚染対策の両方を総合的に進めていく必要があります。

国内対策としては、中央環境審議会大気・騒音振動部会微小粒子状物質等専門委員会の中間取りまとめ(2015年3月)を踏まえ、PM2.5濃度の予測や対策効果の把握のためのシミュレーションモデルの高度化等による科学的知見の充実を図りつつ、総合的な対策を検討・実施しています。2019年の同専門委員会で整理されたPM2.5、光化学オキシダントの今後の対策に向けた2020年度までの3年間の検討・実施スケジュールに基づいて対策を検討しました。

越境汚染対策としては、日中両国の都市間での連携協力、日中韓三か国の政策対話、アジア太平洋クリーン・エア・パートナーシップ(APCAP)等の枠組みにおいて、政策・技術に関する情報共有、モデル的な技術の導入、共同研究等を進めました。

(1)ばい煙に係る固定発生源対策
大気汚染防止法に基づき、ばい煙(NOX、硫黄酸化物(SOX)、ばいじん等)を排出する施設(ばい煙発生施設)について排出基準を定めて規制等を行うとともに、施設単位の排出基準では良好な大気環境の確保が困難な地域においては、工場又は事業場の単位でNOX及びSOXの総量規制を行っています。

また、再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォースによる規制の点検を受けて、ばい煙発生施設のうちボイラーの規模要件について、環境への影響も含め評価・検討し、伝熱面積にかかる要件を削除する大気汚染防止法施行令(昭和43年政令第329号)の改正を行いました。

(2)移動発生源対策
運輸・交通分野における環境保全対策については、自動車一台ごとの排出ガス規制の強化を着実に実施しました。また、自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(平成4年法律第70号。以下「自動車NOX・PM法」という。)に基づき、自動車からのNOX及び粒子状物質(PM)の排出量の削減に向けた施策を実施しました。

ア 自動車単体対策と燃料対策
自動車の排出ガス及び燃料については、大気汚染防止法に基づき逐次規制を強化してきています(図4-7-7、図4-7-8、図4-7-9)。「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第十四次答申)」(2020年8月中央環境審議会)を踏まえPN規制を導入するため、自動車排出ガスの量の許容限度の一部を改正する告示(令和3年環境省告示第52号)を2021年8月に公布しました。また、同答申を踏まえ、ブレーキ粉塵等の非排気粒子の排出に対する対策等について審議を行っています。

公道を走行しない特殊自動車(以下「オフロード特殊自動車」という。)については、特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律(平成17年法律第51号。以下「オフロード法」という。)に基づき、2006年10月から使用規制を開始し、逐次規制を強化しています。また、排出ガス基準に適合するオフロード特殊自動車等への買換えが円滑に進むよう、政府系金融機関による低利融資を講じました。

イ 大都市地域における自動車排出ガス対策
自動車交通が集中する大都市地域の大気汚染状況に対応するため、自動車NOX・PM法に基づき大都市地域(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、三重県、大阪府及び兵庫県)において各都府県が「総量削減計画」を策定し、自動車からのNOX及びPMの排出量の削減に向けた施策を計画的に進めています。また、事業者による排出抑制のための措置の推進等に取り組みました。

ウ 電動車の普及促進
2050年までに、新車販売に占める電動車の割合を100%にするとの目標に基づき、電動車の普及のための各種施策に取り組みました(2020年における新車販売に占める電動車の割合は、約35.6%)。

電動車の普及を促す施策として、車両導入に対する各種補助、自動車税・軽自動車税の軽減措置及び自動車重量税の免除・軽減措置等の税制上の特例措置並びに政府系金融機関による低利融資を講じました。

エ 交通流対策
(ア)交通流の分散・円滑化施策

道路交通情報通信システム(VICS)の情報提供エリアの更なる拡大を図るとともに、ETC2.0や高度化光ビーコン等を活用し、道路交通情報の内容・精度の改善・充実に努めたほか、信号機の改良、公共車両優先システム(PTPS)の整備、観光地周辺の渋滞対策、総合的な駐車対策等により、環境改善を図りました。また、環境ロードプライシング施策を試行し、住宅地域の沿道環境の改善を図りました。

(イ)交通量の抑制・低減施策

交通に関わる多様な主体で構成される協議会による「都市・地域総合交通戦略」の策定及びそれに基づく公共交通機関の利用促進等への取組を支援しました。また、交通需要マネジメント施策の推進により、地域における自動車交通需要の調整を図りました。

オ 船舶・航空機・建設機械の排出ガス対策
船舶からの排出ガスについては、IMOの基準を踏まえ、海洋汚染等防止法により、NOX、燃料油中硫黄分濃度(SOX、PM)について規制されています。

航空機からの排出ガスについては、国際民間航空機関(ICAO)の排出物基準を踏まえ、航空法(昭和27年法律第231号)により、炭化水素(HC)、CO、NOX、不揮発性粒子状物質(nvPM)等について規制されています。

建設機械からの排出ガスについては、オフロード法に基づき2006年10月から順次使用規制を開始し、2011年及び2014年に規制を順次強化するとともに、「建設業に係る特定特殊自動車排出ガスの排出の抑制を図るための指針」に基づきNOX、PMなど大気汚染物質の排出抑制に取り組みました。

オフロード法の対象外機種(可搬型発動発電機や小型の建設機械等)についても、「排出ガス対策型建設機械の普及促進に関する規程」等により、排出ガス対策型建設機械の普及を図りました。さらに、融資制度により、これらの建設機械を取得しようとする中小企業等を支援しました。

カ 普及啓発施策等
2021年6月、オンラインで開催された「エコライフフェア」において、国民一人一人の多様な移動手段をよりCO2排出量の少ない移動に取り組む「smart move(スマートムーブ)」を紹介し、エコだけでなく、便利で快適なライフスタイルを呼び掛けました。また、警察庁、経済産業省、国土交通省及び環境省で構成するエコドライブ普及連絡会の枠組みを活用し、CO2削減につながる環境負荷の軽減に配慮した自動車利用の取組「エコドライブ」を推進し、環境にやさしく、安全運転にもつながることを呼び掛けました。

(3)VOC対策
VOCは光化学オキシダント及びPM2.5の生成の原因物質の一つであるため、その排出削減により、大気汚染の改善が期待されます。

VOCの排出抑制対策は、法規制と自主的取組のベストミックスにより実施しており、2020年度の総排出量は2000年度に対し5割以上削減されました。

VOCの一種である燃料蒸発ガスを回収する機能を有する給油機(Stage2)の普及促進のため、当該給油機を導入している給油所を大気環境配慮型SS(e→AS(イーアス))として認定する制度を2018年2月に創設し、2022年3月末までに439件の給油所を認定しました。

(4)監視・観測、調査研究
ア 大気汚染物質の監視体制
大気汚染の状況を全国的な視野で把握するとともに、大気保全施策の推進等に必要な基礎資料を得るため、国設大気環境測定所(9か所)、国設自動車交通環境測定所(9か所)、大気汚染防止法に基づき都道府県等が設置する一般局及び自排局において、大気の汚染状況の常時監視を実施しています。測定データ(速報値)、都道府県等が発令した光化学オキシダント注意報等やPM2.5注意喚起の情報について、環境省では「大気汚染物質広域監視システム(そらまめ君)」によりリアルタイムに収集し、インターネット及び携帯電話用サイトで情報提供しています。また、気象庁では光化学スモッグに関連する気象状態を都道府県等に通報し、光化学スモッグの発生しやすい気象状態が予想される場合にはスモッグ気象情報や全般スモッグ気象情報を発表して国民へ周知しています。

国及び都道府県等では季節ごとのPM2.5成分の測定を行っています。また、国において、全国10か所でPM2.5成分の連続測定、全国5か所でPM2.5の原因物質であるVOCの連続測定を行っています。これらの測定データをもとに、国内の発生源寄与割合や大陸からの越境汚染による影響など、PM2.5による汚染の原因解明や効果的な対策の実施に向けた検討を進めています。

イ 酸性雨・黄砂の監視体制
国内における越境大気汚染及び酸性雨による影響の早期把握、大気汚染原因物質の長距離輸送や長期トレンドの把握、将来影響の予測を目的として、「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング計画」に基づき、国内の湿性・乾性沈着モニタリング、湖沼等を対象とした陸水モニタリング、土壌・植生モニタリング等を離島など遠隔地域を中心に実施しています。

国立研究開発法人国立環境研究所と協力して、高度な黄砂観測装置(ライダー装置)によるモニタリングネットワークを整備し、「環境省黄砂飛来情報(ライダー黄砂観測データ提供ページ)」において観測データをリアルタイムで提供しています。黄砂の実態解明を目的として、2020年度に飛来してきた黄砂について報告書を取りまとめ公表しました。

ウ 放射性物質の監視体制
関係機関が実施している放射性物質モニタリングを含めて、全国308地点で空間放射線量率の測定を行うなど、放射性物質による大気の汚染の状況を監視しており、その結果を専門家による評価を経て公表しました。

福島第一原発事故により環境中に放出された放射性物質のモニタリングについては、政府が定めた「総合モニタリング計画」(2011年8月モニタリング調整会議決定、2022年3月改定)に基づき、関係府省、地方公共団体、原子力事業者等が連携して実施しています。また、放射線モニタリング情報のポータルサイトにおいて、モニタリングの結果を一元的に情報提供しています。

航空機モニタリングによる、2021年10月時点の東京電力福島第一原子力発電所から80km圏内の地表面から1mの高さの空間線量率の平均は、2011年11月時点と比べて約80%減少しています。

3 アジアにおける大気汚染対策
(1)二国間協力
第6章第4節1(2)イを参照。

(2)日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)の下の協力
第6章第4節1(2)ア(イ)を参照。

(3)多国間協力
ア アジアEST地域フォーラム
2021年10月に第14回アジアEST(環境的に持続可能な交通)地域フォーラムを愛知県(オンライン参加あり)で開催し、アジアの脱炭素化に向けた動きを加速化するために、SDGsやパリ協定などの国際潮流に沿った2030年までのESTの目標を掲げた「愛知宣言2030」を採択しました。

イ 東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)
東アジア地域において、酸性雨の現状やその影響を解明するとともに、酸性雨問題に関する地域の協力体制を確立することを目的として、我が国のイニシアティブにより、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)が稼働しており、現在、東アジア地域の13か国が参加しています。EANETでは、前年の政府間会合で酸性雨に限らずより広い大気環境問題を扱うことができるよう活動スコープを拡大したところですが、2021年11月にオンライン開催された第23回政府間会合においては、さらに具体的に対象物質と取り組める活動について定めました。また、プロジェクト毎に予算を執行する新たな仕組みの導入及びそのガイドラインについても合意され、より柔軟かつ迅速に課題に対応するプロジェクト活動の実施が可能になりました。

ウ アジア太平洋クリーン・エア・パートナーシップ(APCAP)
アジア太平洋地域の大気環境改善に向けた活動を促進するために必要なプラットフォームとして、2014年度からアジア太平洋クリーン・エア・パートナーシップ(APCAP)を立ち上げました。アジア太平洋地域の大気環境について、科学に基づく解決策をまとめた報告書を公表したほか、大気環境に関する国際フォーラムを開催しました。

エ アジア・コベネフィット・パートナーシップ
2010年の創設以来、アジアの途上国における環境改善と温室効果ガス排出削減に同時に資するコベネフィット・アプローチの普及啓発活動に参画してきました。アジア開発銀行等の国際機関との連携強化、コベネフィット白書の発行、ウェブサイトの充実等に取り組みました。

4 多様な有害物質による健康影響の防止

(1)アスベスト(石綿)対策
大気汚染防止法では、全ての建築物及びその他の工作物の解体等工事について、吹付け石綿や石綿を含有する断熱材、保温材、耐火被覆材、仕上塗材及び成形板等の使用の有無を事前調査で確認し、当該建材が使用されている場合には作業基準を遵守することなどを求めており、地方公共団体と連携して、石綿の大気環境への飛散防止対策に取り組んできました。

2020年6月に大気汚染防止法の一部を改正する法律(令和2年法律第39号)等が公布され、一部の規定を除き2021年4月から施行されました。これらにより、全ての石綿含有建材が規制対象となるなど、解体等工事に伴うアスベストの飛散防止対策が強化され、その円滑な運用がなされるように対応を徹底します。

(2)水銀大気排出対策
「水銀に関する水俣条約」の的確かつ円滑な施行を確保するため、改正大気汚染防止法が2018年4月に施行されました。水銀排出施設の届出情報及び水銀濃度の測定結果の把握や、要排出抑制施設における自主的取組のフォローアップ、水銀大気排出インベントリーの作成等を行うことにより、同法に基づく水銀大気排出対策の着実な実施を図っています。

(3)有害大気汚染物質対策等
有害大気汚染物質による大気汚染の状況を把握するため、大気汚染防止法に基づき、地方公共団体と連携して有害大気汚染物質モニタリング調査を実施し、当該調査結果等を踏まえ、事業者の自主的取組を促進しました。

有害大気汚染物質から選定された優先取組物質のうち、環境目標値が設定されていない物質については、迅速な値の設定を目指すこととされており、科学的知見の充実のため、有害性情報等の収集を行いました。

5 地域の生活環境保全に関する取組

(1)騒音・振動対策
騒音に係る環境基準は、地域の類型及び時間の区分ごとに設定されており、類型指定は、2020年度末時点で47都道府県の765市、415町、38村、23特別区において行われています。また、環境基準達成状況の評価は、「個別の住居等が影響を受ける騒音レベルによることを基本」とされ、一般地域(地点)と道路に面する地域(住居等)別に行うこととされています。

2020年度の一般地域における騒音の環境基準の達成状況は、全測定地点で89.5%、地域の騒音状況を代表する地点で89.5%、騒音に係る問題を生じやすい地点等で89.5%となっています。

騒音苦情の件数は2020年度には前年度より5,078件増加し、20,804件でした(図4-7-10)。発生源別に見ると、建設作業騒音に係る苦情の割合が37.7%を占め、次いで工場・事業場騒音に係る苦情の割合が26.7%を占めています。

振動の苦情件数は、2020年度は4,061件で、前年度に比べて882件増加しました。発生源別に見ると、建設作業振動に対する苦情件数が70.6%を占め、次いで工場・事業場振動に係るものが15.3%を占めています。

ア 自動車交通騒音・振動対策
自動車単体の構造の改善による騒音の低減等の発生源対策、道路構造対策、交通流対策、沿道対策等の諸施策を総合的に推進しました(表4-7-3)。また、「今後の自動車単体騒音低減対策のあり方について(第三次答申)」(2015年7月中央環境審議会)を踏まえ、四輪車及び二輪車走行騒音規制の見直し等について審議を行っています。


道路に面する地域における騒音の環境基準の達成状況については、2020年度において、全国約921万9,000戸の住居等を対象に行った評価では、昼間・夜間のいずれか又は両方で環境基準を超過したのは約51万8,800戸(5.6%)でした(図4-7-11)。このうち、幹線交通を担う道路に近接する空間にある約394万2,500戸のうち昼間・夜間のいずれか又は両方で環境基準を超過した住居等は約36万4,000戸(9.2%)でした。

要請限度制度の運用状況については、自動車騒音に関して、2020年度に地方公共団体が苦情を受け測定を実施した48地点のうち要請限度値を超過したのは3地点でした。また同様に、道路交通振動に関して、測定を実施した83地点のうち要請限度値を超過したのは1地点でした。なお、要請限度制度とは、自動車からの騒音や振動が環境省令で定める限度を超えていることにより道路の周辺の生活環境が著しく損なわれると認められる場合に、市町村長が都道府県公安委員会に対して道路交通法(昭和35年法律第105号)の規定による措置を要請することができる制度です。

イ 鉄道騒音・振動、航空機騒音対策
新幹線鉄道騒音に係る環境基準の達成状況は、2020年度において、505地点の測定地点のうち307地点(60.8%)で環境基準を達成しました(図4-7-12)。なお、新幹線鉄道の軌道中心から25m以内に住居がない地域数の割合は、2020年度において16.3%であり、近年ほとんど変わりがありません(図4-7-13)。また、整備新幹線開業時における障害防止対策及び新幹線鉄道振動にかかる指針値は、おおむね達成されています。

新幹線鉄道騒音対策としては、従来の音源対策である75デシベル対策に加え、新幹線鉄道沿線の地方公共団体に対し、新幹線鉄道騒音による著しい騒音が及ぶ地域については、沿線の土地利用計画の決定又は変更に際し、新たな市街化を極力抑制するとともに、具体的な土地利用において騒音により機能を害されるおそれの少ない公共施設等を配置するなど、騒音防止可能な措置を講じるよう指導しているところです。また、新幹線鉄道騒音の測定・評価に関する標準的な方法を示した「新幹線鉄道騒音測定・評価マニュアル」に基づく測定・評価等を行い、現状の把握に努めています。

航空機騒音については、測定・評価に関する標準的な方法を示した「航空機騒音測定・評価マニュアル」に基づく測定・評価等を行い、現状の把握に努めています。

公共用飛行場周辺における航空機騒音対策としては、耐空証明(旧騒音基準適合証明)制度による騒音基準に適合しない航空機の運航を禁止するとともに、緊急時等を除き、成田国際空港では夜間の航空機の発着を禁止し、大阪国際空港等では発着数の制限を行っています。

航空機騒音対策を実施してもなお航空機騒音の影響が及ぶ地域については、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和42年法律第110号)等に基づき空港周辺対策を行っています。同法に基づく対策を実施する特定飛行場は、東京国際空港、大阪国際空港、福岡空港など14空港であり、これらの空港周辺において、学校、病院、住宅等の防音工事及び共同利用施設整備の助成、移転補償、緩衝緑地帯の整備等を行っています(表4-7-4)。また、大阪国際空港及び福岡空港については、周辺地域が市街化されているため、同法により計画的周辺整備が必要である周辺整備空港に指定されており、大阪国際空港周辺の事業は関西国際空港及び大阪国際空港の一体的かつ効率的な設置及び管理に関する法律(平成23年法律第54号)等に基づき新関西国際空港株式会社より空港運営権者に選定された関西エアポート株式会社が、福岡空港周辺の事業は国及び関係地方公共団体の共同出資で設立された独立行政法人空港周辺整備機構が関係府県知事の策定した空港周辺整備計画に基づき、上記施策に加えて、再開発整備事業等を実施しています。

自衛隊等の使用する飛行場等に係る周辺対策としては、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和49年法律第101号)等に基づき、学校、病院、住宅等の防音工事の助成、移転補償、緑地帯等の整備、テレビ受信料の助成等の各種施策を行っています(表4-7-5)。

航空機騒音に係る環境基準の達成状況は、2020年度において、580地点の測定地点のうち、518地点(89.3%)で達成しました(図4-7-14)。

ウ 工場・事業場及び建設作業の騒音・振動対策
騒音規制法(昭和43年法律第98号)及び振動規制法(昭和51年法律第64号)では、騒音・振動を防止することにより生活環境を保全すべき地域内における法で定める工場・事業場及び建設作業の騒音・振動を規制しています。

また、2021年度においては、両法に基づく特定施設であるコンプレッサーについて、最近の低騒音化・低振動化に係る技術動向や生活環境における影響実態等を踏まえ、発生する騒音・振動の大きさが一定以下の機器を規制対象外とする政令改正を行いました。

エ 低周波音その他の対策
低周波音問題への対応に資するため、地方公共団体職員を対象として、低周波音問題に対応するための知識・技術の習得を目的とした低周波音の測定評価方法に係る講習を行っています。また、風力発電施設については、近年設置数が増加していること、騒音等による苦情が発生していることなどから、その実態の把握と知見の充実が求められており、風力発電施設からの騒音等の評価手法等についての検討及び新たな知見の集積を行い、2017年5月に公表した「風力発電施設から発生する騒音に関する指針」と「風力発電施設から発生する騒音等測定マニュアル」の周知徹底に努めています。また、省エネ型温水器等から発生する騒音等について、人への影響等に関する調査を実施し、2020年3月に公表した「地方公共団体担当者のための省エネ型温水器等から発生する騒音対応に関するガイドブック」の周知徹底に努めています。

2020年度には全国の地方公共団体で、人の耳には聞き取りにくい低周波の音がガラス窓や戸、障子等を振動させる、気分のイライラ、頭痛、めまいを引き起こすといった苦情が336件受け付けられました。

近年、営業騒音、拡声機騒音、生活騒音等のいわゆる近隣騒音は、騒音に係る苦情全体の約18.4%を占めています。近隣騒音対策は、各人のマナーやモラルに期待するところが大きいことから、近隣騒音に関するパンフレットを作成して普及啓発活動を行っています。また、各地方公共団体においても取組が進められており、2020年度末時点で、深夜営業騒音は41の都道府県及び117の市で、拡声機騒音は47の都道府県及び139の市で条例を制定しています。

(2)悪臭対策
悪臭苦情の件数は2003年度から減少傾向にありましたが、2018年度より再度増加に転じ、2020年度の悪臭苦情件数は15,438件と、前年度に比べ3,418件増加しました。

ア 悪臭防止法による措置
悪臭防止法(昭和46年法律第91号)に基づき、工場・事業場から排出される悪臭の規制等を実施しています。また、特に苦情の目立つ業種を中心に臭気対策として効果的であった事例や他の事案の参考になるような事例を収集・整理した事例集を作成しており、2021年度には、飲食店等のサービス業を対象に事例収集を行いました。また、臭気指数等の測定を行う臭気測定業務従事者についての国家資格を認定する臭気判定士試験を毎年1回実施しています。

イ 快適な感覚環境の創出
快適な感覚環境の創出に向けて、五感を活かした地域の取組等について文献、事例調査を行い、よいかおりや心地よい音などの快適な感覚環境の創出と健康増進効果に関する知見収集を行う等の取組を進めています。

(3)ヒートアイランド対策
ヒートアイランド現象が大都市を中心に生じており、30℃を超える時間数が増加しています(図4-7-15)。近年は、猛暑による熱中症救急搬送人員も増加傾向にあり、暑熱環境の改善について社会的な要請が高まっています。

人工排熱の低減、地表面被覆の改善、都市形態の改善、ライフスタイルの改善、人の健康への影響等を軽減する適応策の推進を柱とするヒートアイランド対策の推進を図りました。

ヒートアイランド現象に対する適応策についての調査・検討を実施するとともに、暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度)等の熱中症予防情報の提供を実施しました。

(4)光害(ひかりがい)対策等
不適切な屋外照明等の使用から生じる光は、人間の諸活動や動植物の生息・生育に悪影響を及ぼすとともに、過度な明るさはエネルギーの浪費であり、地球温暖化の原因にもなります。

このため、良好な光環境の形成に向けて、2020年度に近年のLED照明の普及など照明技術を取り巻く環境の変化も踏まえて改定した光害(ひかりがい)対策ガイドライン等を活用し、普及啓発を図りました。また、星空観察を通じて光害(ひかりがい)に気づき、環境保全の重要性を認識してもらうことを目的として、夏と冬の2回、肉眼観察とデジタルカメラによる夜空の明るさ調査を呼び掛けました。

出典:環境省

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